皆さんは兄弟姉妹の中で何番目に生まれた子でしょうか?
もし長子や末っ子でなく、真ん中に生まれたいわゆる「中間子(ちゅうかんし)」であるなら、協調性の高い人かもしれません。
カナダ・ブロック大学(Brock University)は最新研究で、兄弟姉妹の中で生まれた順番が何らかの人格形成に寄与するかを調査。
その結果、最初でも最後でもない中間子の人は、周囲の人たちへの公平・誠実さが高く、他者に協力的であることが明らかになりました。
中間子はこれまで「長子や末っ子ほど親に関心を持たれない」など不遇の立ち位置に置かれることが多かったのですが、長子や末っ子にはない中間子ならではの強みもあるようです。
研究の詳細は2024年11月18日付で学術誌『PNAS』に掲載されています。
目次
- 生まれた順番は「性格」に関係するの?
- 中間子が最も「協調性」に優れていた!
生まれた順番は「性格」に関係するの?
研究者たちは過去1世紀以上にわたって「生まれた順番が人格形成に影響するのか」との問題について議論してきました。
その中で、確かに出生順が個人の特性に何らかの作用を与えている可能性が見出されています。
初期の研究ですと、1874年にイギリスの人類学者であるフランシス・ゴルトンが、同国の科学者たちの出生順を調べたところ、その大部分が長子であったことを発見しました。
これは今日も続く「長子はIQスコアが高くなりやすい」との見方につながっています。
というのも長男長女は、最初に生まれた子供として親の関心を一身に受ける期間が長く、この間に教育や発達に関してより多くの投資を受けることがあります。
また長子はのちに生まれた弟や妹の面倒を見たり、勉強を教える立場にもなるので、IQスコアが高くなりやすいとの研究が示されています。
同じような理由で、長子は責任感が強く、リーダーシップに優れる傾向も統計的な研究で示唆されています。
これと反対に、最後に生まれた末っ子は、親の育児経験が豊かになったタイミングで生まれるため、長子よりもいい意味で力の抜けた教育をする傾向があります。
それゆえ、末っ子は伸び伸びと育つことがあり、マイペースで行動する自由奔放さと、この自由さから生じるクリエイティビティ(創造性)に優れるケースが多いです。
その反面、親や兄姉に助けられたり、頼ったりする機会も多いため、「可愛がられる存在」として甘えん坊になることも多いとされます。
しかしこうした長子や末っ子に比べて、不遇の立ち位置に置かれやすいのが真ん中に生まれた「中間子」です。
これは一般的に「中間子症候群(Middle Child Syndrome)」という呼び名でも知られています。
中間子症候群とは、長子や末っ子に比べて中間子は親から異なる扱いや見られ方をされるという考え方のこと。
特に中間子は長子や末っ子に比べて、親からあまり目をかけられないため、兄弟姉妹の中でも「頼る存在なのか、頼られる存在なのか」どっちつかずになりやすい傾向があります。
そのせいか過去の統計研究によると、中間子は家族よりも家族以外の友達や知人との付き合いに重きを置き、実家から自立するのも早いという結果が示されています。
ただこうした「出生順」と「人格形成」との関連性はあくまで統計的に示唆された傾向に過ぎず、確かな証拠はないとする研究者たちの意見も少なくありません。
そこでブロック大学らの研究チームは今回、この手の研究としては最大規模となる70万人以上のデータを使い、改めて「生まれた順番が人格形成に及ぼす影響」を調査することにしました。
中間子が最も「協調性」に優れていた!
本調査は英語圏に在住の70万人以上から収集した大規模データを利用し、兄弟姉妹の中での生まれた順番、家族の人数、および性格特性の評価アンケートの回答を比較分析しました。
さらにこのデータと別に、約7万5000人の他のボランティアにも同様のアンケート調査に回答してもらっています。
そして出生順と性格特性の関連性を調べた結果、過去の研究でも示されたきたように、長男長女は下の弟妹に比べてわずかにIQスコアが高い証拠が見つかりました。
しかし今回の調査で最も目を引いたのは、中間子であるほど、他者への公平・誠実さのスコアが高く、協調性に優れている結果が見つかったことでした。
協調性の高さは単純に、兄弟姉妹が多い家庭の子供ほど有意に上昇していたのですが、その中でも中間子として生まれた人は最も協調性が高い傾向があったのです。
この結果を受けて、研究者らは次のように解釈しています。
「中間子は家族内での自分の位置付けを確立するために、他者との協力や人間関係の調整を学ぶ必要に迫られます。
また中間子は長子や末っ子との間でバランスを取る役割を果たしており、これが他の兄弟姉妹に比べて、協調性が発達しやすいのでしょう」
つまり、中間子は一種の「中間管理職」のような存在として、人と人をつなぐピースメーカー(調和をもたらす人)になりやすいのだと考えられます。
もちろん、出生順が人格形成に与える影響は一つの傾向であり、一人っ子であろうと、長男や末っ子であろうと、協調性の高い人はたくさんいます。
それでも、兄弟姉妹の真ん中に生まれることは「協調性」を高める一つの要因となるのかもしれません。
参考文献
Middle children are more cooperative than their siblings, study suggests
https://www.theguardian.com/science/2024/dec/23/middle-children-are-more-cooperative-than-their-siblings-study-suggests
Middle children are more agreeable, humble and honest than siblings, new study suggests. The baby of the family would like a word.
https://www.livescience.com/human-behavior/middle-children-are-more-agreeable-humble-and-honest-than-siblings-new-study-suggests-the-baby-of-the-family-would-like-a-word
元論文
Personality differences between birth order categories and across sibship sizes
https://doi.org/10.1073/pnas.2416709121
ライター
大石航樹: 愛媛県生まれ。大学で福岡に移り、大学院ではフランス哲学を学びました。 他に、生物学や歴史学が好きで、本サイトでは主に、動植物や歴史・考古学系の記事を担当しています。 趣味は映画鑑賞で、月に30〜40本観ることも。
編集者
ナゾロジー 編集部