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毒強化・トゲ増加・再生力強化!草刈りでバフを盛りまくる「スーパー雑草ラシャナス」


「草抜きする時は、根っこから抜きなさい」とよく言われたものです。

雑草は葉だけを刈り取ってもすぐに復活してしまうからです。

それでも、「根から抜くのは大変なので、草刈り機を使って定期的に刈ればよい」と考える人は少なくありません。

しかしそんな草むしりをしていると、飛んでもない事になる雑草が見つかりました。

アメリカのアーカンソー大学(University of Arkansas)に所属するルペシュ・カリヤット氏ら研究チームは、「ラシャナス(学名:Solanum elaeagnifolium)」と呼ばれる雑草が、継続的な草刈りによって生存能力を高め、「スーパー雑草」になると報告したのです。

研究の詳細は、2024年4月7日付の科学誌『Scientific Reports』に掲載されました。

目次

  • 有害な雑草「ラシャナス」は、定期的に草刈りされることで「スーパー雑草」になる

有害な雑草「ラシャナス」は、定期的に草刈りされることで「スーパー雑草」になる

ラシャナス
ラシャナス / Credit:Canva

ラシャナス(学名:Solanum elaeagnifolium」は、主にアメリカの中・南部からメキシコに分布するナス科ナス属の多年草です。

一見、紫色の花を咲かせる美しい植物に思えるかもしれません。

しかし実は、水分がほとんどない痩せた土壌でも育ち、種子だけでなく根茎(こんけい:地中を這う根に見える茎)でも広がる厄介な雑草です。

長さ1cm未満の根茎でも再生することがあり、草刈りで表面的に刈り取るだけでは、取り除くことは不可能です。

またラシャナスの花や果実は、主にアルカロイドを含む毒素を持っています。

しかもこのラシャナスはたくさんの細かいトゲに覆われており、人間や動物がトゲに刺さると皮膚炎を発症することがあります。

これらの特徴からラシャナスは、アメリカやオーストラリア、南アフリカなど様々な国で、「有害な雑草」と見なされています。

そして多くの農家は、生存力の高いラシャナスに対して、地上に出た葉の部分だけを定期的に草刈りすることでなんとか対処してきました。

有毒な雑草であるラシャナスは、多くの土地で継続的に草刈りされてきた
有毒な雑草であるラシャナスは、多くの土地で継続的に草刈りされてきた / Credit:Canva

しかし、10年以上ラシャナスの研究を続けるカリヤット氏は、ある時、定期的に草刈りされたラシャナスと、そうでないラシャナスには違いがあることに気づきました。

そこで2018年、カリヤット氏ら研究チームは、5年にわたって草刈りされたラシャナスのデータを集めることにしました。

その結果、彼らは、継続的に草刈りされたラシャナスが、有毒性と生存能力を向上させた「スーパー雑草」へと変化することを発見しました。

まず、定期的に刈り取られていたラシャナスは、放置されたラシャナスに比べて、主根がずっと深く伸びており、約1.5mの深さにまで到達していると分かりました。

ラシャナスは何度も草刈りされることで、そのような試練で死んでしまわないよう根を深く張り巡らし、しぶとく生き残ろうとしたのです。

また、刈られ続けたラシャナスは、復活した時に、より多くのトゲと、より強い毒性の花や果実を生み出すようになりました。

ラシャナスは草刈りされ続けることで、生存能力が高まる
ラシャナスは草刈りされ続けることで、生存能力が高まる / Credit:Wikipedia Commons_Solanum elaeagnifolium

研究チームは、これらトゲや毒素が、イモムシの捕食に抵抗するための手段になっていると考えています。

実際、「刈られ続けたラシャナス」を食べるイモムシは、「放置されてきたラシャナス」を食べるイモムシに比べて、多くの量を食べることができず、体重が軽くなっていました。

さらに草刈りされたラシャナスの方は、「すぐに発芽する種子」や「発芽に時間のかかる種子」など、発芽のタイミングにばらつきがある種子を作るようにもなりました。

そしてこのばらつきにより、植物としての生存率は向上していました。

仮に不利な環境条件や病害虫の被害が生じたとしても、発芽のタイミングが異なるので、全滅するリスクを低減できるのです。

これらの結果が示すのは、ただでさえ厄介な雑草であるラシャナスは、人間が継続的に草刈りすることで強化され、「スーパー雑草」へと変化するということです。

このことを考えると、人間が行う中途半端な雑草対策は逆効果だと分かります。

ここまで極端な雑草は珍しい存在ですが、やはり雑草と呼ばれる植物は生命力の強いものが多くいます。

子供の頃、草刈りで「雑草は根っこから抜きなさい」と言われてダルかった人は多いでしょうが、雑草は中途半端に扱うと大変なことになるかもしれません。

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参考文献

Mowing down this poisonous weed turbocharges it
https://newatlas.com/biology/super-weed-mowing-silverleaf/

Frequent Mowing Puts Poisonous Weed Into Survival Mode
https://news.uark.edu/articles/70557/frequent-mowing-puts-poisonous-weed-into-survival-mode

元論文

Continuous mowing differentially affects floral defenses in the noxious and invasive weed Solanum elaeagnifolium in its native range
https://doi.org/10.1038/s41598-024-58672-w

ライター

大倉康弘: 得意なジャンルはテクノロジー系。機械構造・生物構造・社会構造など構造を把握するのが好き。科学的で不思議なおもちゃにも目がない。趣味は読書で、読み始めたら朝になってるタイプ。

編集者

海沼 賢: ナゾロジーのディレクションを担当。大学では電気電子工学、大学院では知識科学を専攻。科学進歩と共に分断されがちな分野間交流の場、一般の人々が科学知識とふれあう場の創出を目指しています。

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