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親しい友人が近くにいるだけで心拍数が下がり「リラックス」できる


よく知らない人と仕事をすると、居心地が悪くて心臓もドギマギしてしまいますが、逆に親しい友人と一緒ならどこで何をするにも安心感があります。

ではこのとき私たちの身体には、実際調べてわかるレベルで変化が起きているのでしょうか?

早稲田大学の研究チームがこの問題について調べたところ、親しい友人が正面にいるときは、休息時やリラックス時にはたらく副交感神経が活性化して、心拍数が減少することが明らかになりました。

これは親しい友人の存在が私たちの生理的反応にポジティブな作用を与えることを示す貴重な発見です。

研究の詳細は2024年2月21日付で科学雑誌『Scientific Reports』に掲載されています。

目次

  • なぜ赤の他人が近くにいると落ち着かないの?
  • 親しい友人が正面にいると心拍数が下がる

なぜ赤の他人が近くにいると落ち着かないの?

私たちは誰かとコミュニケーションを取るとき、自分が快適だと感じる空間を無意識に保つことが知られています。

これが「パーソナルスペース」と呼ばれる空間です。

見ず知らずの他人がパーソナルスペースに侵入してくると、居心地の悪さや不快な感情が沸き起こり、その人から距離を取ろうとする反応が見られます。

電車やバス、映画館の座席で知らない人が隣に座ると落ち着かないのはこのためです。

パーソナルスペースに他人がいるとソワソワする
パーソナルスペースに他人がいるとソワソワする / Credit: canva

そして近年の研究では、他者が近くにいると、主観的な気持ちだけでなく、客観的な指標である心拍数や皮膚電気活動といった生理的反応も変化することが明らかになりつつあります。

例えば、赤の他人がパーソナルスペースに入ってくると、心拍数の上昇や皮膚電気活動の活性化など、交感神経が刺激されることが分かっているのです。

(※ 自律神経は「交感神経」と「副交感神経」の2つに分かれており、交感神経は活発に動く時や緊張している時に活性化し、副交感神経は休息時やリラックスしている時に活性化する)

その一方で、親しい友人が近くにいる場合に、同じような生理的反応の変化が起こるかどうかは調べられていませんでした。

そこで研究チームは、親しい間柄にある友人のペア16組を対象に、さまざまな位置関係で立っているときの心電図データを記録しました。

実験条件の図解。いろいろな立ち位置で友人を見る・見られる実験を行う
実験条件の図解。いろいろな立ち位置で友人を見る・見られる実験を行う / Credit: 早稲田大学 –眼前の友人の存在は心拍数の減少を引き起こす(2024)

親しい友人が正面にいると心拍数が下がる

データ分析の結果、親しい友人と正面で向かい合っている場合、他の位置関係に比べて、被験者の心拍数が有意に低下することが判明しました。

加えて、心電図データから自律神経の活動を調べたところ、休息時やリラックス時にはたらく副交感神経が活性化していたことが分かったのです。

これは親しい友人の存在が私たちの生理的反応にポジティブな作用を与え、心拍数の低下につながったことを示しています。

左:心拍数の低下が見られた立ち位置、右:副交感神経の活性化が見られたのは「正面」の条件のみ
左:心拍数の低下が見られた立ち位置、右:副交感神経の活性化が見られたのは「正面」の条件のみ / Credit: 早稲田大学 –眼前の友人の存在は心拍数の減少を引き起こす(2024)

さらに興味深いことに、心拍数が低下するかどうかは友人との立ち位置によって変わりました。

例えば、友人の右顔を見ている条件(R-see)と友人に自分の右顔を見られている条件(R -seen)では、副交感神経の変化はないものの、心拍数の低下が確認されています。

一方で、友人の左顔を見ている条件(L-see)や友人に自分の左顔を見られている条件(L-seen)、それから友人が背後にいる・友人の背後を見る条件では、心拍数の変化は観察されませんでした。

その理由はまだ定かでありませんが、研究者らは「利き手側と非利き手側によってパーソナルスペースの感じ方が変わってくるからではないか」と推測しました。

ただこの点については今後の研究課題となります。

本研究で分かったことのまとめ
本研究で分かったことのまとめ / Credit: 早稲田大学 –眼前の友人の存在は心拍数の減少を引き起こす(2024)

それでも今回、親しい友人が目の前にいるだけで副交感神経が活性化し、人々をリラックスさせる効果があると分かったのは貴重な知見です。

チームはこの結果が、教育や臨床現場における円滑な対人コミュニケーションを確立する上で大いに役立つと考えています。

例えば、対人不安など社会的な困難を抱える人がより生きやすくなるような社会づくりに貢献できるでしょう。

研究主任の向井香瑛(むかい・かえ)氏は次のようにコメントしています。

「目覚ましいデジタル技術の普及により、私たちは遠隔地にいる他者とも簡単に連絡やコミュケーションを取ることができる時代になりました。

本研究は、あえてそのような時代に“オフラインでのやりとりが私たちの身体にどのような変化を生み出すのか?”という問いをリサーチクエスチョンに据え、取り組んできた研究です。

今後も引き続き、人同士のオフラインのコミュニケーション場面に着目し、二者や集団内でのやりとりが私たち自身にどのような変化を生じさせているのかを調べていきたいと思います」

在宅ワークやオンライン授業が広まっている今こそ、対人コミュニケーションが持つ効果に目を向けることが大切かもしれません。

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参考文献

眼前の友人の存在は心拍数の減少を引き起こす
https://www.waseda.jp/inst/research/news/76753

元論文

Electrocardiographic activity depends on the relative position between intimate persons
https://doi.org/10.1038/s41598-024-54439-5

ライター

大石航樹: 愛媛県生まれ。大学で福岡に移り、大学院ではフランス哲学を学びました。 他に、生物学や歴史学が好きで、本サイトでは主に、動植物や歴史・考古学系の記事を担当しています。 趣味は映画鑑賞で、月に30〜40本観ることも。

編集者

海沼 賢: ナゾロジーのディレクションを担当。大学では電気電子工学、大学院では知識科学を専攻。科学進歩と共に分断されがちな分野間交流の場、一般の人々が科学知識とふれあう場の創出を目指しています。

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