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出会って5カ月間は打ち解け難い?相手の好意を過小評価してしまう「好意ギャップ」


相手は本当に楽しんでいるのか、自分の発言を聞いて不快に感じていないか、自分のことを嫌いになっていないか。

このような会話中に感じる心配は杞憂なのかもしれません。

米コーネル大学のエリカ・ブーシュビー(Erica Boothby)氏らの研究チームは、初対面の人との会話において「相手がどれだけ楽しんでいるか」の予測が悲観的な方向に歪むことを報告しました。

研究チームはこの現象を「好意ギャップ」と呼んでいます。

また「好意ギャップ」は会話の長さを問わず見られ、初対面での会話から約5カ月持続することもわかっています。

研究チームは「会話などの社会的な相互関係において、人は慎重になり、自分が相手にどのような印象を抱かれているのかに関して確信が持てず、否定的な評価を下してしまう。自分の能力や容姿などの他の分野では楽観的であるのにも対し、会話に対しては悲観的になってしまうのは驚きだ」と述べています。

研究の詳細は学術誌「Psychological Sciece」にて2018年9月5日に発表されています。

目次

  • 相手が会話を楽しんでいるのか見極めるのは難しい
  • 「好意ギャップ」は長時間会話しても消えず、半年以上続く

相手が会話を楽しんでいるのか見極めるのは難しい

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この人は自分と話していて楽しいのかな?

会話中の相手の様子を見て、このように思ったことはありませんか。

他人と会話をすることは社会生活を送る上で欠かせないことです。

会話は新たな人間関係の構築、情報伝達と理解、感情の表現と共感のために必須のものですが、同時に相手との関係における不安を誘発するのも確かです。

会話相手が本当に楽しんでいるのか、自分の発言を聞いて不快に感じていないか、自分のことを嫌いになっていないか。

このような不安が湧いてくるのは実際に相手が自分を不快に感じてるからなのでしょうか? それとも勝手に自分の中で作り上げた相手の気持ちなのでしょうか?

もしこの不安が観察に基づいたものではなくただの妄想であるならば、本来お互いに好意を持って仲良くなれるはずなのに、自分から距離を取って新たな人間関係の形成を阻害していることになります。

そこで米コーネル大学のエリカ・ブーシュビー氏(Erica Boothby)らの研究チームは、人は会話相手が抱いている好意をどれほど正確に認識できるか調査することにしました。

実験に参加したのは大学生36名です。

参加者は2名1組でペアを組み、相手の出身地や趣味を尋ねる簡単な会話をしました。

そして会話終了後、参加者には相手への好感度と、相手が自分に抱いた好感度の予測を回答してもらいました。

実験の結果、参加者は実際よりも相手の好感度を過小評価する傾向があると確認されました。

 

実験の結果の改変。
実験の結果の改変。 / Credit: Boothby et al., (2018).

これは、多くの人が相手を不快にさせたり退屈させていないか? という不安を会話時に感じていることを示しています。

彼らは、会話相手の好感度を実際より低く見積もってしまうこの現象を「好意ギャップ」と呼んでいます。

ではなぜ「好意ギャップ」は生じるのでしょうか。

研究チームは、「好意ギャップ」が生じる原因について、2つの可能性を予測しました。

1つは会話相手への好意を見える形で表現する人が少ないこと。

もう1つは、会話中に相手が示す好意のサインを、主観だと見落としてしまうこと。

この疑問に答えを出すために、先ほどの実験の録画を第三者に見せ、参加者同士が会話中相手にどれくらい好感度を抱いていると思うか評価してもらいました。

すると、第三者視点では「好意ギャップ」は生じず、実際に話者が相手にどの程度の好感度を抱いているかうまく評価できたのです。

つまり、会話を客観的に観察できた第三者は話者の相手に対する興味・関心のサインを正しく読み取ることできたのです。対して、会話の当事者たちはそれらのサインを見逃していたと考えられます。

「好意ギャップ」は長時間会話しても消えず、半年以上続く

では会話の時間を延ばし、相手の関心・興味の手がかりを得られる機会を増やせば「好意ギャップ」が生じなくなるかもしれません。

研究チームはこの疑問を検討するため、会話時間に違いを設け、実験を行っています。

参加者102名で、2名1組でペアを組み、最大45分以内で好きなだけ会話をし、最後に相手の好感度と会話をどれほど楽しんだかを評価し、また相手は自分をどれくらい好きと思っているか、そして会話を楽しんだかを予測しました。。

そして実験者は会話時間に基づいて、参加者を①短い会話、②中程度の会話、③長い会話の3つのグループに分け、実際の好意度、会話の楽しんだ程度と予測の差を比較しています。

実験の結果、会話時間に関わらず、実際よりも自分に対する相手から好感度と会話の楽しさを過小評価する傾向がありました。

実験の結果を改変。
実験の結果を改変。 / Credit: Boothby et al., (2018).

また研究チームは「好意ギャップ」はどれくらいの期間持続するのかについても検討を行っており、初めて会話したときから5カ月後まで「好意ギャップ」が消えないことが分かっています。

実験の結果を改変。
実験の結果を改変。 / Credit: Boothby et al., (2018).

研究チームは「会話などの社会的な相互関係において、人は慎重になり、自分が相手にどのような印象を抱かれているのかに関して確信が持てず、否定的な評価を下してしまう。自分の能力や容姿などの他の分野では楽観的であるのにも対し、会話に対しては悲観的になってしまうのは驚きだ」と述べています。

自己評価が「他の人が存在するかどうか」の影響を受けているのではないかと研究チームは仮説立てています。

つまり、自己評価は誰もいない場合よりも、会話相手が存在する際に慎重になり、自分に対し否定的になるというものです。

研究チームは「私たちは自己保護のために悲観的になる。相手が自分に対して好意を持っているという確実な事実が分かるまで、相手は自分のことを好きではないと考えるのだ」と述べています。

たしかに自分が思っているよりも相手が自分のことを嫌っている事実は耐え難いので、過度に悲観的になってしまうもうなづけます。

この結果を踏まえて考えると、会話中及び後に感じる「自分は嫌われているのではないか」「相手は楽しくなかったのではないか」という不安は杞憂である可能性が高いと言えるでしょう。

自分は好意的に思っているのに、なかなか相手との距離が縮まらないなと感じる場合、それは相手の抱く好意ギャップが関連している可能性もあります。

また自分自身も好意ギャップを抱えている可能性を考えると、ほとんどの人は出会ってから相手と打ち解けるまで5カ月近くかかると言うことも出来るでしょう。

今回の研究結果において重要な点は、ほとんどの場合、自分が思っているほどには、会話相手は、あなたを悪く思っていないということです。

初対面の相手が抱く自分の印象に不安を抱えるのはあたり前のことです。しかしそこで勇気を出して積極的になることが、相手と仲良くなる早道なのでしょう。

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参考文献

Why You Should Talk to Strangers
https://www.psychologytoday.com/intl/blog/platonic-love/202304/why-you-should-talk-to-strangers

People Like You More Than You Think, a New Study Suggests
https://time.com/5396598/good-first-impression/

People Like You More Than You Know
https://blogs.scientificamerican.com/illusion-chasers/people-like-you-more-than-you-know/

You probably made a better first impression than you think
https://medicalxpress.com/news/2018-09-you-probably-made-a-better.html#google_vignette

People Like You More Than You Think, Study Finds
https://www.forbes.com/sites/alicegwalton/2018/09/07/people-like-you-more-than-you-think-study-finds/?sh=49378f07317e

元論文

The Liking Gap in Conversations: Do People Like Us More Than We Think?
https://doi.org/10.1177/0956797618783714

ライター

AK: 大阪府生まれ。大学院では実験心理学を専攻し、錯視の研究をしています。海外の心理学・脳科学の論文を読むのが好きで、本サイトでは心理学の記事を投稿していきます。趣味はプログラムを書くことで,最近は身の回りの作業を自動化してます。

編集者

海沼 賢: 以前はKAIN名義で記事投稿をしていましたが、現在はナゾロジーのディレクションを担当。大学では電気電子工学、大学院では知識科学を専攻。科学進歩と共に分断されがちな分野間交流の場、一般の人々が科学知識とふれあう場の創出を目指しています。

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