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2400年前の「世界最古の星図」を発見!現在は存在しない星の姿も…


人類は遠い昔から夜空を見上げ、そこに並ぶ星々を見てきました。

そして星の配置を理解した人類は、そこから神話や天文学を生み出されていきます。

こうした星の観測には、星の位置をマップ化した「星図」の存在が欠かせません。では人類はいつ頃から正確な星図を持つようになったのでしょうか?

イタリア国立天体物理学研究所(INAF)は、イタリア北東部トリエステにある遺跡にて29個の星の位置を正確に記した約2400年前の石板を発見したと発表しました。

これは星図として史上最古の可能性があるとのことです。

研究の詳細は、2023年11月22日付で学術誌『Astronomische Nachrichten』に掲載されています。

目次

  • 石板に刻まれた29個の窪みが「星座」と合致!
  • 今は存在しない星が1つ刻まれていた

石板に刻まれた29個の窪みが「星座」と合致!

石板が見つかった遺跡は「カステリエーレ・ディ・ルピンピッコロ(Castelliere di Rupinpiccolo)」と呼ばれる古代の要塞です。

紀元前1800年頃から紀元前400年頃まで使用され、現在では高さ3メートルの壁が残っています(本来は7〜8メートルあったと推定されている)。

現在のカステリエーレ・ディ・ルピンピッコロ遺跡
現在のカステリエーレ・ディ・ルピンピッコロ遺跡 / Credit: Archeocarta del Friuli Venezia Giulia

この遺跡の調査中に、要塞の入り口付近で直径約50センチ・厚さ約30センチに達する円盤状の石板が2つ発見されました。

石板の1つは特に模様もなく太陽か何かを表したオブジェと見られていますが、もう1つには表面にいくつもの窪みが彫られていたのです。

研究主任の一人であるフェデリコ・ベルナルディーニ(Federico Bernardini)氏は、その窪みの位置を調べてみたところ、さそり座を表す星々の位置とピッタリ合致することを発見しました。

そこで研究チームは、石板に彫られた窪みが星図を表していると考え、本格的に調査を開始します。

遺跡で見つかった「星図」と見られる石板
遺跡で見つかった「星図」と見られる石板 / Credit: Paolo Molaro et al., Astronomische Nachrichten(2023)

そして調べれば調べるほど、石に刻まれた模様は偶然に配置されたものではないことが明らかになってきました。

まず石板に記された窪みは全部で29個見つかり、石板の表側に24個、裏側に5個が刻まれています。

さらに表側のうち、9つはさそり座、5つはオリオン座、9つはプレアデス星団を構成する星の位置とピッタリ重なり合ったのです。

こちらの図は石板の表側に見られる24個の窪みを、グループ1(さそり座:番号1〜9)・グループ2(オリオン座:番号11〜15)・グループ3(プレアデス星団:番号16〜24)に分類したものです。

表側に見られる24個の窪みをマップ化
表側に見られる24個の窪みをマップ化 / Credit: Paolo Molaro et al., Astronomische Nachrichten(2023)

また石板の裏側に記された5つの窪みは、Wの形で並ぶのが特徴のカシオペヤ座(番号25〜29)を表しているようでした。

チームは石板に刻まれた窪みの形状や角度に基づいて、おそらく同一人物が先端の尖った青銅製のノミをハンマーで打ち付けるようにして彫刻した可能性が高いと見ています。

しかし一方で、石板には現在の夜空には存在しない星が1つ刻まれていました。

これは一体何なのでしょうか?

今は存在しない星が1つ刻まれていた

石板の表側を見ると、グループ2のオリオン座(番号11〜15)の少し北側に1つの窪み(番号10として記す)が見られました。

これは現在の夜空を見ても存在しない星です。

しかし当時の人々はおそらく、ありもしない星を適当に石に刻んだわけではないかもしれません。

研究者らはこの謎の星について、大質量の恒星が一生を終えるときに起こす「超新星爆発」によって発生した光源を記した可能性があると指摘しました。

超新星爆発を起こす非常に重い星はその後、自分自身の重力を支え切れずに完全に潰れてしまうことで「ブラックホール」を形成します。

つまり、この製図の番号10で示された場所を観測してみるとブラックホールが見つかる可能性があり、もし確認されれば考古学のみならず天文学的にも興味深い発見となるでしょう。

星図の番号と星座を照らし合わせたもの。左;さそり座、右:オリオン座(番号10は今日存在しない)
星図の番号と星座を照らし合わせたもの。左;さそり座、右:オリオン座(番号10は今日存在しない) / Credit: Paolo Molaro et al., Astronomische Nachrichten(2023)

チームは以上の結果から、この石板が夜空の星々をマップ化した「星図」と見て間違いないと結論しました。

また遺跡の年代を踏まえると、この星図が作られたのは少なくとも2400年以上前まで遡ると話します。

現在知られている星の位置を記した最古の図表は、古代ギリシアの天文学者ヒッパルコス(BC190年〜BC120年頃)が残した星表と見られています。

今回見つかった石板はこのヒッパルコス星表よりはずっと簡素ではあるものの、人類が星をマップ化したものとしては世界最古の一つとなるようです。

全ての画像を見る

参考文献

A 2,500-year-old celestial map carved on the surface of a circular stone found in Italy
https://arkeonews.net/a-2500-year-old-celestial-map-carved-on-the-surface-of-a-circular-stone-found-in-italy/

An Ancient Stone Found in Italy is an Accurate Map of the Night Sky
https://www.universetoday.com/165037/an-ancient-stone-found-in-italy-is-an-accurate-map-of-the-night-sky/

Could This Ancient Carved Disk Be The Oldest Ever Map Of The Stars?
https://www.iflscience.com/could-this-ancient-carved-disk-be-the-oldest-ever-map-of-the-stars-72270

元論文

Possible stellar asterisms carved on a protohistoric stone
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/asna.20220108

ライター

大石航樹: 愛媛県生まれ。大学で福岡に移り、大学院ではフランス哲学を学びました。 他に、生物学や歴史学が好きで、本サイトでは主に、動植物や歴史・考古学系の記事を担当しています。 趣味は映画鑑賞で、月に30〜40本観ることも。

編集者

海沼 賢: 以前はKAIN名義で記事投稿をしていましたが、現在はナゾロジーのディレクションを担当。大学では電気電子工学、大学院では知識科学を専攻。科学進歩と共に分断されがちな分野間交流の場、一般の人々が科学知識とふれあう場の創出を目指しています。

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