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「最後」を意識すると、人は新しい体験よりも慣れ親しんだものを選ぶ


ダイエットを始める前に、「最後」にラーメン屋に行くとしたら、あなたは行きつけのよく知っている店か、今まで足を運んだことのない、新しい店のどちらに行きますか?

おそらく行きつけのよく知っている店ではないでしょうか。

私たちは今までの体験したことのないものか、慣れ親しんだものかの、どちらかの選択をするとき、物事に終わりを感じるのかどうかが影響するようです。

シカゴ大学ブース・スクール・オブ・ビジネスのユウジ・ワイネット(Yuji Winet)氏らの研究チームは、「最後」を意識することによって新しい体験に対する興味が変化することを報告しています。

一見終わりが近づくと、私たちは今までに体験したことのない経験を求める傾向があるように思えますが、実際は慣れ親しんだものを選択するのです。

研究の詳細は、学術誌「Journal of Personality and Social Psychology: Attitudes and Social Cognition」にて2022年7月29日に掲載されました。

目次

  • 新しいもの vs 慣れ親しんだもの
  • 馴染み深い体験はリスクが少なく、安全で、個人的に意味がある
  • 最後の機会には定番のメニューを提供する

新しいもの vs 慣れ親しんだもの

アメリカのシカゴ大学ブース・スクール・オブ・ビジネスのユウジ・ワイネット(Yuji Winet)氏らの研究チームは、「最後」を意識することで新規性に関する選択が変化するのかを検討しています。

研究チームはオンラインで募集した一般人500人と大学構内から募集した学生663名を対象に、訪れるビーチや住む都市の選択などのいくつかのシナリオを読んでもらい、それに対して自分がどういう行動を選択するか答えてもらいました。

以下に実験で使用されたシナリオの一例を示します。

「2つのレストランのどちらに行くかを考えてください。1つ目は何度も通っているお気に入りの店。もう1つのレストランはまた行ったことがなく、食べてみたい料理があります。どちらも値段、交通費、時間はすべて同じとします。」

実験参加者の半分は、上記の文章の後に「選んだレストランに行った後しばらくは、外食することができません。つまり今回選んだレストランが当分の間、最後に行ったレストランということになります」との一文が追加されました。

さて「最後である感覚」を意識づけられることによって選択肢は変わったのでしょうか。

最後の選択では慣れ親しんだものを選択する

実験の結果、「最後」である感覚を意識づけられた場合には、そうでなかった場合と比較して、新しい体験を選択するより、過去に経験済みの体験を再度選択する傾向にありました。

最後を意識づけられると慣れ親しんだものをもう一度体験したいと思う
Credit: Winet &O’Brien, (2023). 

またこの「最後」を意識することによって慣れ親しんだ経験を再度選択する傾向は訪れるビーチや住む都市の選択などさまざまな状況で確認されました。

後続の調査では、オンラインで募集した386名を対象に12月、1月、3月の月末に親しみ深い選択肢と新規性の高い選択肢のどちらを選択をするのか尋ねる調査を行っています。

この調査の意図は、「今年最後」を意識させる12月の月末は、他の1月や3月の月末と異なり、質問に「最後」を意識づける文章がなくとも、「最後」を意識させた場合と同じ選択傾向が見られるか確認することです。

年末には慣れ親しんだものをもう一度体験したいと思う
Credit: Winet &O’Brien, (2023).

調査の結果、1月と3月はいつもと同じ選択ではなく、新しい体験を伴う選択をする傾向があったのに対し、12月にはいつもの慣れ親しんだ選択を選ぶ傾向が高くなりました

この結果は、「最後」を意識させる実験的な操作がない、自然な状況でさえも、「最後(ここでは1年の終わり)」を感じることで、慣れ親しんだ体験をもう一度経験したいと思うことを意味しています。

馴染み深い体験はリスクが少なく、安全で、個人的に意味がある

では、なぜ私たちは「最後」を意識すると馴染み深い方を選択するのでしょうか? 研究チームは①リスクと②個人的意味合いに焦点を当て、検討を行っています。

研究チームは、オンラインで募集した500名を対象に、「最後」である感覚を意識づけられた場合には、特に指示がなかった場合と比較して慣れ親しんだ体験をどのように認識しているのかを調べています。

最後を意識づけられると慣れ親しんだものをもう一度体験したと思う傾向は様々な領域で確認されている
Credit:Winet &O’Brien, (2023).

実験の結果、「最後」である感覚を意識づけられた場合には、特に指示がなかった場合と比較して、慣れ親しんだ選択肢をよりリスクが少なく、安全な選択肢をだと評価することが分かりました。

最後を意識づけられると、慣れ親しんだものを、目新しい選択肢よりリスクが少なく、安全であると評価する傾向がある
Credit: Winet &O’Brien, (2023).

また後続の実験室実験によって、「最後」である感覚を意識づけられた場合には、慣れ親しんだ体験をより個人的に意味があると解釈する傾向があることも確認されています。

つまり新しい体験よりも、慣れ親しんだ体験は、自分の満足度を低下させるリスクが少なく、過去の経験から想起される個人的な意味づけが強く、「最後」の機会に選ぶのに相応しいと考えられている可能性があります。

最後の機会には定番のメニューを提供する

最後に刺激的で新しい体験を求めるのではなく、慣れ親しんだ活動をもう一度体験したいと考える
Credit: Unsplush

今回の研究結果は、最後に刺激的で新しい体験を求めるのではなく、慣れ親しんだ活動をもう一度体験したいと考える傾向が存在することを示しました。

これまでの研究では、人は慣れ親しんだものよりも新しいものを好むという証拠が多く提出されてきました。しかしこれらの研究はシチュエーションが特に限定されておらず、「最後」を意識した場合に選択が変化するかという問題は考慮されていませんでした。

実際に新しいものを経験することは、好奇心を満たすことをはじめ、創造性を促進するなど、さまざまな利益を人々にもたらします。

しかし、ある期間や状況において最後となる選択では、①自分自身の満足を最大化できる確実性と②意味のある形で物事を終わらせたい欲求が影響し、選択が変化する可能性が考えられます。

オブライアン氏は「この研究の興味深い点は、多くの人は物事が終わりに近づくにつれ、今までに経験したことのない新しい体験を追求すると思われていたことに対して、実際には馴染み深い経験を求める傾向があったと示せたことです」と述べています。

人間は高齢になるほど、新しいものを嫌って、馴染み深いものを繰り返す「懐古主義」の傾向が強まる印象があります。

しかし、これは歳をとったから新しいものを受け入れられず、昔はよかったと思い返しているわけではないのかもしれません。

年齢を問わず私たちには、1年の終わりや当分経験できないなど一時的に設けられた「最後」を意識したとき、新しい体験を避けて馴染み深い体験を繰り返そうとする「懐古主義」が現れるようです。

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参考文献

When endings approach, people choose the familiar over the novel https://www.eurekalert.org/news-releases/966703

元論文

Ending on a familiar note: Perceived endings motivate repeat consumption https://psycnet.apa.org/record/2023-04885-001
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