starthome-logo 無料ゲーム
starthome-logo

ハダカデバネズミは大人になっても卵子を新たに生産できると判明!


命つづく限り、産めるようです。

米国のピッツバーグ大学(University of Pittsburgh)で行われた研究によって、ハダカデバネズミのメスには、大人になっても卵子を追加で作れることが示されました。

人間やマウスなど通常の哺乳類のメスの場合、卵子は胎児のうちに作られた物が全てであり新たに生産することができません。

そのため卵子の数は有限であり、年齢とともに劣化・死滅していき生殖力が低下します。

しかしハダカデバネズミは卵子の元となる一連の生殖細胞たちが誕生後も維持され、必要に応じていつでも追加の「新品卵子」を生産できるため、生涯にわたって妊娠が可能になっていたのです。

研究者たちはハダカデバネズミの仕組みを上手く人間で再現できるようになれば、女性の妊娠可能な上限を40代から寿命ギリギリまで延長することも可能になると述べています。

しかし、いったいなぜハダカデバネズミだけがこのような特殊な能力を獲得したのでしょうか?

その答えはどうやら、アリやハチと同じような「女王システム」にあるようです。

研究内容の詳細は2023年2月21日に『Nature Communications』にて公開されました。

目次

  • ハダカデバネズミは大人になっても卵子を新たに生産し続けると判明!
  • 卵子の追加生産能力は新女王になるためのものだった

ハダカデバネズミは大人になっても卵子を新たに生産し続けると判明!

ハダカデバネズミは大人になっても卵子を新たに生産し続けると判明!
Credit:Canva

動物界の異端者がクマムシならば、哺乳類界の異端児はハダカデバネズミです。

これまでの研究でハダカデバネズミは

がんに対する極めて高い耐性を持ち

低酸素・無酸素状態でも一定期間生存でき

基本的に痛みを感じることがなく

げっ歯類で最も長い30年以上の寿命を持ち

哺乳類でありながらアリやハチのような女王だけが妊娠できる真社会性を持つ

など、さまざまな奇妙な性質を持っていることが明らかになってきました。

しかしピッツバーグ大学のミゲル・ブリエニョ・エンリケス医学博士にとって最も興味をひいたのは、ハダカデバネズミの「生涯にわたる妊娠能力」でした。

人間やマウスなどほとんどの哺乳類のメスの場合、卵子は誕生時に作られたものが全てで、卵子の大元となる生殖細胞が胎児のうちに不活性化してしまうため、生まれた後に新たに生産することができません。

そのため卵子の質と数は、年齢とともに徐々に劣化して生殖能力を失っていきます。

実際、人間の場合も40代になると卵子数の枯渇と質の劣化が顕著になり、45~55歳になると全ての卵子が死滅して妊娠が不可能になってしまいます。

(※誕生直後には卵巣内に200万個の卵子がありますが、思春期に入る頃には20万個になり、30代では1~3万個まで減ってしまいます)

マウスの場合はさらに期間が短く、生後9か月の段階で生殖能力が低下しはじめます。

では、生涯を通じて妊娠できるハダカデバネズミの卵子どうなっているのでしょうか?

謎を解明すべくピッツバーグ大学の研究者たちは、ハダカデバネズミとマウスの卵巣を、さまざまな発育段階で比較しました。

すると両者は体の大きさはそれほど違いがないにもかかわらず、生後8日段階でのハダカデバネズミの卵子数は同じく生後8日のマウスの95倍も存在することが明らかになりました。

また卵子数の変化を追跡したところ、ハダカデバネズミは卵形性のプロセス全体が生後にも起こるようになっており、誕生後の90日後でも、卵子の大元となる生殖細胞(卵子前駆細胞)が活発に分裂を繰り返し、将来の卵子数の母数を増やし続けていました。

さらに、これらの卵子前駆細胞は10歳になった個体でも確認されており、ハダカデバネズミでは卵形性が生涯続く可能性が示されました。

つまりハダカデバネズミが生涯にわたり妊娠できるのは、必要に応じて常に新鮮な卵子を追加生産できるからと言えるでしょう。

しかしそうなると気になるのが、その理由です。

生涯にわたって新鮮な卵子を追加生産できるのは、種の繁栄にプラスになるのは明らかです。

しかし人間やマウスなど他の哺乳類は、そのような能力なしに、十分に子孫を作ることが可能です。

そのためハダカデバネズミが卵子の追加生産能力を獲得した背景には、単純な種の繁栄以外の、ハダカデバネズミにのみ存在する「特殊事情」が存在していたと考えられます。

そのような特殊事情の候補として最も有力なのは、女王を中心とした真社会性と言えるでしょう。

卵子の追加生産能力は新女王になるためのものだった

卵子の追加生産能力は新女王になるためのものだった
credit: Depositphots

ハダカデバネズミは通常、地下のトンネル内部に70~80匹からなる大規模なコロニーを作って生活しており、アリやハチのように、繁殖を行えるのは1匹の女王ネズミのみとなっています。

哺乳類でありながら虫のような「女王」の仕組みを採用しているのは奇妙に思えますが、地下生活を行っているハダカデバネズミたちは他の集団との接点が薄く、集団内部で近親交配が繰り返され、どの個体も同じような遺伝子を持っています。

そのため自分が産んだ子孫も他人が産んだ子孫も、遺伝的な違いが少ないく、出産に専念する女王を設置して、他の個体が巣の運営にあたったほうが、結果的に遺伝子の存続が上手くいく可能性が高くなると考えられます。

ただそれでも、女王となれば自分の遺伝子をより強く子孫に伝達できるといううま味があるのも事実です。

そのためコロニーの女王が死亡したり追放された場合、他のメスたちの生殖機能が一気に活性化し、次の女王の座をかけて競争が行われることになります。

ただアリやハチの場合には、どの子孫が次の女王になるかは、与えられるエサなどの差別を通じてあらかじめ決まっていますが、ハダカデバネズミの場合は「どのメスにも」新女王になる権利があります。

そこで研究者たちはハダカデバネズミの従属メス(働きアリのような存在)をコロニーから連れ出して、女王が存在しない環境に置き、女王化するプロセスを確かめてみました。

すると、女王がいなくなってしばらくすると従属メスの卵巣内部で卵子前駆細胞が分裂をはじめ、新たな卵子を追加生産しはじめたことが判明します。

ハダカデバネズミが大人になっても卵子の追加生産能力を獲得した背景には、産める期間を増やして仲間を多くするというより、失われた女王(繁殖役)の役割を迅速に引き継ぐという目的があったのです。

研究者たちは、このハダカデバネズミの卵子追加生産能力のメカニズムを解明して人間にも応用したいと述べています。

人間もハダカデバネズミも、卵子形成のプロセスそのものはほとんど同じであり、それを誕生後も維持できるかだけが違っています。

もし卵子形成プロセスの維持にかかわる遺伝的なスイッチをみつけ制御する薬を開発できれば、女性の妊娠可能期間のリミットを、現在の40代から寿命ギリギリまで大きく延長することも可能になるでしょう。

全ての画像を見る

参考文献

Study Unlocks Clues in Mystery of Naked Mole-Rats’ Exceptional Fertility https://www.upmc.com/media/news/022123-naked-mole-rat-fertility

元論文

Postnatal oogenesis leads to an exceptionally large ovarian reserve in naked mole-rats https://www.nature.com/articles/s41467-023-36284-8
    Loading...
    アクセスランキング
    game_banner
    Starthome

    StartHomeカテゴリー

    Copyright 2024
    ©KINGSOFT JAPAN INC. ALL RIGHTS RESERVED.