自律型戦闘機は、パイロットの命を危険にさらすことなく、様々な状況に対応できます。
そのため、世界中の防衛機関で開発が進められてきました。
そして最近、F-16を特殊改造した完全自律型戦闘機「VISTA X-62A」が、合計17時間以上にわたって人間の介入なしに離陸、着陸、戦闘操作を行ったと報告されました。
戦争の完全自動化はすぐそこまで来ているのかもしれません。
テストの詳細は、2023年2月13日付でアメリカ国防高等研究計画局(DARPA)が報告しました。
目次
- 自律型戦闘機「VISTA X-62A」が17時間のフライトを成功させる
自律型戦闘機「VISTA X-62A」が17時間のフライトを成功させる
2019年、DARPAはAir Combat Evolution(ACE)プログラム開始しました。
これは人間と協力できる自律型戦闘機の開発を目標としたものです。
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2020年8月には、仮想のドッグファイト(目視できる距離で行われる戦闘機同士の空中戦)競技で、AIが経験豊富なF-16パイロットを打ち負かしました。
これは限定的なコンピュータ・シミュレーション上でのことでしたが、この時点でAIの優位性は示されていました。
そして2022年12月、ACEプログラムは次のステージへと駒を進めました。
実際の自律型戦闘機を用いた空中シミュレーションが実施されたのです。
テストに使用されたのはF-16を特殊改造した戦闘機であり、正式名称は「VISTA X-62A」です。
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見た目は赤と白で派手に塗装されたF-16ですが、内部にはAIソフトがアップロードされており、自律性を獲得しています。
DARPAの報告によると、カリフォルニア州エドワーズ空軍基地で、数日間に渡って複数のフライトが行われたようです。
そして世界で初めて自律型戦闘機が合計17時間飛行し、その中でAIが人間の手を借りず、離陸、着陸、戦闘操作を行うことに成功したのです。
ACEプログラムのマネージャーであるライアン・ヘフロン中佐によると、「複数の出撃を行い、様々な模擬敵、模擬武器でAIアルゴリズムをテストした」ようです。
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大きな問題はありませんでしたが、コンピュータ・シミュレーションの結果とは、いくつか異なる点もあったようです。
これらの検証や修正によって、VISTA X-62Aの性能は今後さらに向上していくことでしょう。
ちなみに今回のテストでは、緊急時に備えて人間のパイロットも搭乗していました。
ACEプログラムは、AIが人間に完全に取って代わるのではなく、パイロットがAIに操作を任せ、自身は戦闘管理タスクに集中することを想定してきました。
今後は「パイロットがAIをどこまで信頼して、操作と自分の命を任せられるか」といった課題をクリアしていく段階に入っていきます。
さらに今回の結果は、パイロット不在の完全自律型戦闘機が誕生する可能性をも示唆しています。
戦争が完全自動化するのも時間の問題なのかもしれませんね。
参考文献
ACE Program’s AI Agents Transition from Simulation to Live Flight https://www.darpa.mil/news-events/2023-02-13 VISTA X-62 Advancing Autonomy And Changing The Face Of Air Power https://news.lockheedmartin.com/2023-02-13-VISTA-X-62-Advancing-Autonomy-and-Changing-the-Face-of-Air-Power