柴犬に噛み癖があるのはなぜ?
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日本犬の代表といっても良い「柴犬」は、スキっとした顔つきに飼い主に従順なところが人気の一つです。その人気は国内にとどまらず、海外でも大人気です。多くの外国人が柴犬に夢中になっています。
そんな人気の高い柴犬なのですが、何かと問題行動が多いことで手を焼いている飼い主さんもいます。柴犬は賢いのでむやみやたらに攻撃することはありませんが、それでも「噛み癖」に悩んでいる飼い主さんは少なくないようです。
柴犬はもともと猟犬や番犬として活躍していました。人間と深いかかわりを持って生活していたため、柴犬は飼い主に対しては大変従順で忠誠心の高い犬です。怪しい人が近づいてきたら吠えて飼い主に知らせるなど、今でも番犬の役割として飼っている家庭もあるのではないでしょうか。
では、なぜ柴犬は噛み癖があるといわれているのでしょうか?柴犬の噛み癖には様々な原因が考えられます。ここでは、柴犬の噛み癖の理由やしつけの仕方について取り上げます。
子犬の場合
柴犬が子犬の場合、何が原因で噛むことがあるでしょうか。
・歯の生え変わり
歯が生え変わる時期はむずむずするため、何かを噛みたくなります。特に生後4~6か月ころは生え変わりのため歯茎がむずがゆくなって、椅子やテーブルの脚などなんでも噛んでしまいます。
・遊んでいるときに興奮する
遊びに夢中になるとだんだんと興奮してきて、噛んでしまうことがあります。甘噛みともいえる行為ですが、別の生き物に対する好奇心から噛んで反応を見ることがあります。甘噛みとは言え、子犬の牙はとがっているため噛まれると痛いです。
・触られたり拘束されたりする
他の人に触られたり抱かれたりすると、拘束されていると感じ嫌がって噛むことがあります。恐怖心や本能的な攻撃からくるものです。
・飼い主の関心を引くため
こちらも甘噛みといわれる行為かもしれませんが、飼い主に関心を向けてもらいたくて噛むことがあります。
成犬の場合
成犬になって噛み癖がある場合は、仔犬の時の噛み癖と原因が少し異なってきます。成犬の噛み癖には本能や不安感、葛藤といった内的要素が関係していたり、病気が原因となったりしていることもあります。
・警戒心
柴犬は飼い主に対して強い忠誠心を持っています。そのため飼い主と一緒に働く猟犬としても活躍するのですが、その分見知らぬ人や他の犬に対しての警戒心が非常に強くなっています。その警戒心ゆえに噛むことがあります。威嚇の一つの方法なのです。
・ストレス
柴犬は猟犬として活躍していたほどなので、エネルギッシュで運動量の多い犬種です。そのため十分に運動ができないと、エネルギーが有り余っているためストレスが溜まってしまいます。たまったストレスのはけ口として「噛む」という行動に出ることがあります。他にも自分の使うベッドが汚かったり、トイレが汚かったりすることもストレスの原因になるでしょう。
・体罰
しつけとして体罰を加えていた場合は、防衛本能が働いて噛むようになることがあります。体罰を加える人の前ではおとなしくなっても、他の人や犬を攻撃したり噛むようになったりもします。
・主従関係の逆転
飼い主と柴犬との主従関係が逆転してしまうと、犬は自分の方が上だと勘違いして、噛むことで飼い主に命令をするようになります。これは大変危険な傾向です。
・噛むことで報酬を得ようとする
簡単に言うと、噛むことで飼い主を関心を引くことができると学習して噛み癖がつくケースもあります。
子犬のころに噛んだら叱るというやり方をしていませんでしたか?子犬は怒られたことを「噛んだら自分に関心を向けてくれる」と誤解することがあります。噛むことでかまってもらえると勘違いをしたまま成長してしまい、成犬になっても噛み癖が直らないことがあります。
・脳内の異常
柴犬の噛み癖の原因の一つに、病気が原因となっていることもあります。脳内ホルモンの代謝異常(セロトニンの代謝異常)や、てんかんの一症状で起こることがあるのです。このように脳の機能に異常が発生して「噛む」という行動に出ることがあります。
このセロトニンとは、不安や恐怖といった感情が高まるのを抑えるホルモンの一つです。そのためセロトニンの代謝に異常が出ると攻撃的になりやすいといわれています。
柴犬は他の犬よりもセロトニンの代謝が弱いため、特に攻撃行動が出やすい犬種のようです。よく噛むといった攻撃行動のほかにも、自分の尻尾をずっと追いかけてグルグル回るなどの異常行動が見られることもあります。こうした時には一度専門家に診てもらうとよいかもしれません。
てんかん症状の一つに、脳の一部が興奮状態に陥る意識障害があります。脳の中で「噛む」という行動に関係する部分が興奮状態になり、噛む、顔面けいれん、異常な量のよだれ、瞳孔が開くなどの症状が見られることもあります。
犬のてんかんも自然に治ることはないので、専門家に診てもらうようにしましょう。
噛み癖を付けないためには子犬期が大切
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柴犬の噛み癖の原因にはいろいろありましたが、多くは子犬期にどのように接するかが関係していることがわかったのではないでしょうか?柴犬に噛み癖を付けないためには、子犬の時からしっかりしつけをすることが大切なのです。
警戒心が強く攻撃的になりやすい傾向のある柴犬ではありますが、子犬の時から他の犬やいろいろな人と接することによって、社会性を身につけさせることができます。社会性が身に付けば警戒心を軽減することができるため、むやみやたらに攻撃して噛むことは少なくなるでしょう。
一般的に犬の学習能力は2歳をピークに低下していくといわれているため、2歳までにいろいろな犬や人に慣れさせ、噛み癖を正しておくことをおすすめします。
噛み癖を直すためにできること
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ではここからは噛み癖を直すためにできることを見ていきたいと思います。噛み癖を直さないと他の犬や人を噛んで怪我を負わせてしまい、慰謝料問題に発展する場合もあるかもしれません。
上記でも紹介したように、噛み癖の多くは子犬期のしつけが大切です。そこで子犬の噛み癖を直すためにできることを紹介したいと思います。
社会性を身に着けさせる
まず初めにできることは社会性を身に着けさせることです。
そのためにできることは二つです。子犬の時からいろいろな犬に接する機会を作ること、そしていろいろな人に接する機会を作ることです。
通常は親犬や兄弟犬と一緒に成長して、犬同士のかかわりの中で噛むと痛いということや、相手を噛んだら自分も噛まれるということなどを学んでいきます。しかし幼い時に親犬や兄弟犬から離されてしまうと、こういったことを学ぶ機会がありません。ですから他の犬と接する機会をこちらが作ってあげるようにしましょう。
また家族だけでなく、友人や近所の人たちとも愛犬が接する機会を作りましょう。子犬の時からいろいろな人に接して触ってもらうことで、人間に対する警戒心を弱めることができます。
こうして小さい時から社会性を身に着けさせるようにしましょう。
低い声で大きく叫ぶ
どんなに社会性を身につけさせても、子犬であれば甘噛み行為があるのは当然です。しかしこれを放置していると噛み癖となって、人や他の犬に怪我を負わせてしまいかねません。
そこで、甘噛みをされたらその瞬間に低く大きな声で「痛い」と叫びます。低い声は母犬が子犬を叱るときの唸り声に似ています。そのため低い声で言うことで子犬は怒られたと感じます。甘噛みされるたびにこれを繰り返せば、噛んではいけないということを学習するはずです。
決してしてはいけないのが、逆に高い声で怒ることです。子犬は飼い主が喜んでくれた!と勘違いして甘噛みを助長しかねません。
無視する
他にできることは「無視」です。子犬が甘噛みしてきたら背中を向けて無視します。
子犬にとって飼い主の無視ほどつらいものはありません。これを通して噛んでも構ってもらえない、噛むことは悪いことだと学ぶはずです。