気の強い犬の特徴
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犬はもともと勇敢な動物です。家族やグループを守るため、飼い主に及んでいる危険を取り除くためには、自分の命を投げ打つ覚悟で敵と対峙する勇気のある動物です。それが全て良い方向に出ればいいのですが、中には気が強いだけの犬もいることでしょう。
犬種によって、大まかな性格や気の強さ・弱さをある程度知ることもできますが、性格的に種類に関係なく気が強いのも存在しています。仕草や行動から、そして犬種によってどのような犬が気が強いのかをご紹介します。
よく威嚇する
気が強い犬は、よく威嚇行動に入ります。吠えたり唸ったり、歯をむき出しにして待ち構えたりしている姿を見たことがおありでしょう。
気が強い犬は、自分のテリトリーや感情を侵略されたり変更したりするのが嫌いです。不安に感じながらも会ったことのない人の匂いを嗅いでみようとしたり、見たことのない犬の様子を見ようとしたりはしません。
自分のアイデアやいつも大切にしている縄張りが“侵略”されたと感じた時点で、相手を排除することしか頭にないようです。こういったタイプの犬は非常に頑固であるため、しつけを施す際にも苦労することがあります。
かといって、全て犬の気が済むように任せているとどんな人にも従わなくなってしまうため、他の人に会わせたり、最悪の場合トリミングや動物病院に連れて行くことさえ非常に困難になったりします。
どんなに頑固な犬でも、しつけを施すことは可能です。非常に気が強く、自分の思ったことや感じたことを曲げない犬の場合、人懐っこい犬よりしつけが難しくなるのは確かですが、犬が嫌がることやどんなにトレーニングしても嫌うことをなるべく避け、その繊細な感覚の範囲内でしつけを施していけるかもしれません。
話は犬の性格に戻すと、どんなにゆっくり近づいたり自然な範囲で犬を可愛がってあげようとしても、いつも唸ったり歯をむき出しにしたりして全く仲良くなれないのであれば、非常に気が強い犬であると言えます。
中には、初めは非常に警戒していたものの、最近では何とか触ったり抱っこできるようになったと思っていたのに、こちらが油断していつものように撫でようとすると噛まれてしまったというケースもあります。
気が強い事やその時の気分でお気に召さなかったことも理由かもしれませんが、その犬が育ってきた環境によっては、以前の飼い主から非常に悪い扱いを受けて、攻撃的で人間不信な性格に育ってしまった可能性もあります。
こういった、悪い思い出やトラウマを抱えている犬の場合、通常の接し方やしつけでは十分にコントロールするのが難しくなります。
「犬にトラウマなどあるのか」と思われるかもしれませんが、愛情を受けて育った犬と虐待を受けて育った犬とでは、やはり通常の行動パターンや人との接し方が大きく異なります。
犬にとってトラウマになってしまう要因は様々ですが、犬にも感情や信頼関係を築く能力があるため、時にはPTSDのような現在の行動にまで影響を及ぼすほど強いトラウマを抱える犬もいると報告されています。
動物には、物事の良し悪しを判断して選択する能力はないものの、恐怖やストレスを感じる能力があるからです。
近づこうとすると唸ったり吠えたりする犬が、飼い主とだけいるときや何もない時にも震えたり怯えて隠れたりしている、あるいはいつもハアハアと荒く息をして落ち着かなかったり、胃腸の調子が悪く常に下痢や嘔吐している等の様子が見られる場合、もしかすると気の強さが原因で人に懐かないのではなく、その犬が抱えているトラウマや何か大きなストレスが原因となっているのかもしれません。
体罰や虐待はもちろんトラウマになり得ますが、小さい子供たちが叫んでいるのを聞いて怖くなったり、特定の場所で痛い思いをしたことで恐怖を感じたりすることもトラウマの原因となります。爪切りやシャンプーなど、自分が苦手とすることを無理強いされた場合にも、犬によってはトラウマになります。
ある意味で、気が弱い故にトラウマを抱えるようになり、それが原因で人に懐かずに唸ってばかりいるため、周囲からは「気が強い」と思われてしまうこともあるでしょう。
これは、警戒心が強い気質の犬種にも多く見られます。これもある意味で、恐怖心が強かったり怖がりであったりすることにより、撫でられることをあまり好まなかったり、抱っこしてすぐに降りたがったりします。
ある程度年齢を重ねると落ち着くということも考えられますが、元々スキンシップや馴れ合いをそれほど好まない性格の犬もいるため、落ち着かせようと思って触れば触るほどその犬にとってはストレスとなるかもしれません。
頭や背中を撫でることは嫌がらないものの、喜んでいるそぶりが見られなかったり、寝転んでお腹を見せることもなくじゃれる以上のことをしたがらないこともあるでしょう。
そういった犬の場合、ゆっくり近づけば、あるいは優しくなれていればいつかは懐いてくれるはずと考えていると、いつもと様子が変わらないように思えたのに急に噛みつかれたり唸られたりするかもしれません。
物を取り上げようとすると怒る
遊んでいる最中に、物をくわえて離さなかったり、もう一度遊ぶために持って行った物を取り上げようとすると唸って離そうとしない場合も、犬の気の強さが原因かもしれません。
遊ぶことそのものは大好きで、ボールやおもちゃを投げれば取りに行って戻ってくるものの、もう一度投げてあげようとして取り上げることを許さない犬もいます。
飼い主との主従関係がしつけられておらず、自分が噛んでいたいものを取り上げられることに怒りを感じているのかもしれません。
タオルなどを噛んで引っ張り合いするのは犬が喜ぶ遊びの一つですが、あまりにも離そうとしなかったり手に噛みつこうとするような様子を見せるのであれば、気が強くて遊びに真剣になっている可能性もあります。
物怖じせずに立ち向かっていく
物怖じしないことも、気が強い犬の特徴です。中には2~3キロという小型犬が、30~40キロの大型犬に飛びかかっていかんばかりの勢いで立ち向かう様子も見られます。
気が強い犬は、体格や年齢に関係なくどちらが優位にあるかを示そうとしたり、単純に遊びたい時でも全くひるむことなく大きな犬に近づいていったりします。
犬の世界では主従関係や上下関係が非常に重要であるため、一度上下関係が築かれてしまうと体格差はさほど重要ではないという事実もあります。
小さい犬が近づいていくだけで、40キロ以上の大型犬が道を譲ろうとする姿は滑稽で可愛らしく見えますが、あまりにも気が強すぎるようであれば他の犬たちとうまくやっていくのが難しくなるかもしれません。
所有物に対する意識が強い
普段自分が気に入っているものを触られると怒るような犬も気が強いと言えます。特定のおもちゃやぬいぐるみなどを気に入っている犬が、誰か他の人が持って行こうとしたり他の犬が咥えようとしたりすると、吠えたり唸ったりして怒る場合があります。
縄張り意識や独占欲が強い犬の場合、持ち物に関しても必ず自分の手元に置いておくか自分の管理下になければ、よそ者や邪魔をする存在に対して威嚇するでしょう。
幾分紛らわしいのですが、ある程度自分の縄張りを守るために所有物に関して主張するのは、犬の特性の一つです。自分のテリトリーを好き勝手に荒らされることを好む犬はいません。
侵略してきた犬がどれほど自分より優位に立っていても、自分の主人の持ち物は身を挺して守ろうとしたりすることもあります。全てが全て気が強いがゆえに唸ったり威嚇したりするわけではありません。
言うことを聞かない
それに加えて、言うことを聞かないことも気が強い犬の特徴の一つです。ある意味で“自分である程度考えて行動をしている自立した犬”ということになりますが、やはり愛玩動物として飼われている以上、飼い主の言うことを聞かなければあらゆるトラブルや事故の原因になってしまいます。
自然界では有効なスキルでも、人間との共存という意味は厄介な事態を生み出してしまいます。
例えば、散歩に行く時に飼い主のリードを引っ張って、自分が進みたい方向にだけ進もうとするかもしれません。あるいは、「おいで」や「まて」ができないために、お客さんが来た時や外に出かけた時に行動をコントロールできないかもしれません。
しつけを受けていない犬は大抵言うことを聞かないものですが、それでもトレーニングを続けることで、どんなに素人の飼い主が訓練したとしても一定のレベルまでは到達するものです。
最低限「まて」が出来る、リードを引っ張ると多少嫌がってもこちら側に来てくれる、等です。
しかし、犬があまりに気が強いと一切言うことを聞こうとせず、永遠かと思えるほどリードを自分の側に引っ張って行きたい方向に行こうとしたり、おやつやごはんをあげるときに「まて」が一切できず、手で体を押さえておかなければコントロールできない、といった状況になってしまうかもしれません。
犬が「自分がボスだ」と思っている場合もそういった行動に表れる場合があります。飼い主が頼りなかった場合や甘やかしてばかりでしつけていない場合、犬の言うことを聞いてずっと喜ばせていた場合にそういった特性を身につけてしまうことがあります。
犬をどのように飼うかは飼い主に任されているものの、いざお客さんが来た時や犬を連れてどこかに出かけた時などに、予想以上に周りに迷惑をかけたりトラブルを引き起こしたりしてしまうでしょう。