いつも目の前に立つあの子
「嘘じゃないんだ…
毎朝絶対に、私の目の前に立つんだよ。
私が座る席はいつもバラバラなのに…」
「うーん…
もしかしてその子、
田川さんのことが
好きだったりして!」
「そんなわけないだろ。
若い女性が、こんなおじさんのこと」
「そうですかね~?」
「もう不気味でしょうがなくて。
しかも私が降りるとき、じ~っとこっちを見てくるんだ」
「こわっ!なんか知らないうちに
恨みでも買っちゃったんですかね。
それとも…?」
「な、なんだよ…」
「その子、
本当に存在してるんですかね。
田川さんにしか見えてなかったりして…」
「おい、やめてくれよ!」
おじいちゃんの朝
歳をとってからというもの
朝早く目が覚めるようになった。
長い時間眠れないというのは
衰えを感じ、悲しいものじゃが
良かったこともある。
朝の凛とした空気を
思う存分味わえることじゃ。
季節毎に
いろいろな朝に出会える。
特に秋から冬にかけての朝は
格別じゃ。
空気がひんやりと顔に触れ
生きていることを
実感することができる。
さてさて、今日も頑張ろうかのお。
手作り嘘弁当
「昼飯、ラーメン行くか?」
「ごめん、今日も弁当あるから」
「毎日えらいな、お前の彼女。
愛されてて羨ましいよ」
「ねえ、今の聞いた?
田中くんの彼女、すごいね~」
「ううん。
あれ、彼女の手作り弁当っていうの
嘘みたいだよ」
「え、そうなの?」
「だってあの唐揚げ、
駅前のほっかり弁当のだもん」
「それを彼女の弁当って嘘ついてるの?
うわあ…」
「引くよね。
男ってなんで
あんな見栄はるのかな~?」
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