スターウッドホテル&リゾーツワールドワイドは、中国の安邦保険グループ(Anbang Insurance Group)を中心とするコンソーシアムから受けている買収提案で、すでに合意しているマリオット・インターナショナルを上回る金額の提示を受けたと発表した。
スターウッドはマリオットによる買収提案に一度合意していたものの、安邦保険グループからマリオットの提示額を上回る提案があったことから白紙化。その後、マリオットは提示額を安邦保険グループより高くすることで、3月21日に再合意に至っていた。スターウッドは声明で、安邦保険グループからの提案は「優れており合理的」としており、スターウッドの株主利益などを検討した上で結論を出す見込み。再度、マリオットによる買収合意が白紙となる可能性が高く、米中の買収合戦に終わりは見えない。
マリオットは設立当初、機内食の製造・販売を手がけており、1957年に初のホテルをアメリカ・バージニア州のアーリントンにオープン。1993年にはホテル運営会社となり、2014年にはアメリカ・ワシントンに4,000軒目のホテルをオープンしている。1995年にはザ・リッツ・カールトンLLC、2015年にはカナダのデルタホテルズの株式を取得するなど、買収により企業規模を拡大してきた。スターウッドは約100カ国に展開し、約18万人が働く世界有数のホテルチェーンで、セントレジス、ウェスティン、シェラトン、トリビュートポートフォリオなどのブランドを展開しており、マリオットにとって過去最大規模の買収となる。
安邦保険グループによる買収提案額は140億米ドル(約1.6兆円)となっており、マリオットがこれを上回る提案を行うことができるかにも注目が集まるものの、断念するのではないかとの見方も大きい。また、買収が決まった場合も、一部の不動産を売却する可能性も指摘されている。
安邦保険グループは、中国の保険業界販売などを行うグループ企業。総資産は8,000億元(約14兆円)で、中国31の省市自治区に3,000以上の店舗を展開。顧客は2,000万人以上、海外資産会社も保有している。
2014年にはニューヨークの老舗ホテル「ウォルドルフ・アストリア・ニューヨーク」を19.5億米ドル(約2,217億円)で買収するなど、ホテルへの投資を強化。一方で、中国企業の買収で機密情報の盗聴など安全面を懸念する声も大きく、2015年9月にオバマ大統領は、これまで定宿としてきた「ウォルドルフ・アストリア・ニューヨーク」への宿泊を見送った。
マリオットは日本にもホテルを展開しており、「ザ・リッツ・カールトン東京」や「東京マリオットホテル」などを2013年頃から相次いでオープン。今年2月には、森トラストが保有する「ラフォーレ」ブランドのホテルを、「マリオット」ブランドにリブランドすることで、訪日外国人の取り込みを目指すと発表している。2020年までに、日本での運営ホテル数は30を超えたい考えだ。買収先によっては、計画が変更になる可能性もある。
スターウッドの取締役会は、マリオットとの合併を支持する方針に変わりないとしている。
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