皆さんこんにちは、ロンドン在住トラベルライターのさかいもとみです。TRAICYに出てくるのは久々ですが、引き続きよろしくお願いします。
さて、今回は新型コロナウイルスの感染拡大で世界中の航空業界が危機に喘ぐ中、世界有数のハブ空港であるロンドン・ヒースロー空港の現状はどうなっているかについてお伝えします。
日本で「緊急事態宣言」が出された折、政府や自治体は「欧米のようなロックダウンはしない」としきりに言っていました。そんな状況なので、「イギリスに住む人は全く家から出られないじゃないか?」と思っている人は多いと思います。
実は、一度もそんなキツい外出禁止令はなく、買い物にはいつでも行けますし、その気になれば空港へも地下鉄で行けます。
ただ、3月中旬からしばらくは本当に危険でした。下手に出歩くと「どこでコロナをうつされるかわからない」という状況が続き、乗り物でどこかに行こうなどとは全く思いませんでした。
今回のレポートは、イギリス政府が「ちょっと遠い公園の散策に出かけるのはかまわない」といった規制の緩和を行った(5月13日)のを受けて空港を訪れた時(同15日)のものです。
ヒースロー空港へはロンドン中心街から地下鉄で45〜60分で着きます。新型コロナウイルス影響による相次ぐフライトキャンセルで、4つある稼働中のターミナル(T2、3、4、5)のうち、現在はT2とT5のみ使われています。
約10〜15分間隔で走る空港行き地下鉄は、T123駅経由でT5駅まで行くので、まずは終点まで向かいました。T123駅で搭乗客と思われる下車客は3人、こりゃひどい、と思いつつT5駅で降りたら、なんと自分以外の誰もいませんでした。
平日午後遅めの時間に訪れましたが、その日飛ぶフライトは、ブリティッシュ・エアウェイズとイベリア航空の数本を残すのみ。夕方にかけては国際線、国内線各1便しかなく、出発ターミナルの見えるところに乗客とスタッフ合わせても10人くらいしかいない。こんなにひどい状況とは想像できなかったです。試しに到着階に回ってみましたが、こちらも見事に人がおらず。
ドラッグストアを覗いたら、市中では品薄だった消毒ジェルがあったのが成果といえば成果でした。
「誰もいないT5」について、トピックを書こうにも書きようがない訳なのですが、次に立ち寄ったもう一つの稼働中のターミナルであるT2は、天と地ほどの違いがありました。なんと、ターミナル中が出発客で溢れていたのです。
地下鉄で一駅戻って、T2ビルの地下まではT5並みに人がほとんどいませんでした。ところが、出発階に上がってびっくり。「搭乗客以外の入場は不可」との表示がなされている上、チェックインにやってくる利用客に対し「地上階に戻れ」と声をかけています。成田空港で例えると、一旦、出発階まで来た客を全員、鉄道駅のある階まで戻れという状況ですから尋常ではありません。
そしてその「地上階」へ。なんと、地面に2メートル幅でロープが張られ、おびただしい数の若者たちが列を成しています。様子を聞くと、中国に帰る学生がこれから2機のフライトで出発する、というではありませんか。
空港係員によると「出発階の広さではソーシャルディスタンシングが取れない。使えるすべてのスペースを使って、誘導をかけている」とのこと。
ただ、たかだか2便分の搭乗客の整理に空港の建物全体を使うような格好で対応する状況を見るにつけ「500人乗りのフライトだと、列は1キロに及ぶ。そんなのは普通の空港では無理だ」とヒースロー運営会社の社長が頭抱えているとの報道を思い出しました。
なお、日本の航空会社では、日本航空(JAL)が通常使用するT3からT2へ一時的に移転しています。全日本空輸(ANA)は従来からT2を発着しています。
新型コロナウイルスの感染拡大で、世界中の飛行機の大半が空を飛べずにいます。
そんな中、ヒースロー空港を運航拠点(ハブ)とするブリティッシュ・エアウェイズは保有しているエアバスA380型機10機をすべてを一旦、フランスにある「飛行機のお墓」と呼ばれる空港に退避させる一方、「ジャンボジェット」ボーイング747-400型機は空港内の一角で翼を休めています。
ボーイング747-400型機はもうずいぶん古くなっているので、このまま退役でもやむなし、と思うのですが、「おやすみ中」の機体には、ボーイング777型機やエアバスA350型機の姿も見られます。別のハンガーにはエアバスA320ファミリーが数え切れないほど止まっており、まるで「景気の悪い中古車販売店」のような雰囲気が漂っています。
世界的に「ロックダウン」が続く中、イギリスでの生活は「買い物には自由に行ける」という状況だったので、一般的な食品を買うには不自由がありませんでした。ただ、都心にある日本食材のお店まで行くのは、依然としてウイルス感染のリスクが消えていないので、積極的に行こうとは思いません。かれこれ3ヶ月は都心に行っていないという状況です。
ちなみに、欧州圏内のビジネスユーザー向けのフライトが発着するロンドン・シティ空港(LCY)は3月下旬に全面閉鎖となりました。同空港があるニューハムという行政区は、イギリスで最悪の死亡率(10万人当たり150人弱)を示し、ニューヨーク並みのひどい状況になったことによります。
ガトウィック空港からブリティッシュ・エアウェイズはすべて撤退、ヴァージン・アトランティック航空はコロナ禍から明けてももう同空港には戻らない、と明言したこともあり、イギリスを取り巻くフルサービスキャリアの動向は今後、どうなるか注目する必要がありそうです。
イギリスもついに入国を制限する格好へと舵を切りました。島国で、欧州大陸側の出入国スキームである「シェンゲン協定」の枠組みから外れていることから、国外からの人の流れは当分止められることでしょう。
日本の皆さんがイギリスに来られるようになるのは、いつ頃になるでしょうか。状況が改善した頃にまた最新情報をお届けすることにしましょうか。では、皆さん、くれぐれもご無事にお過ごし下さい。