TEXT &PHOTO◎世良耕太(SERA Kota)
約束の時間(夕暮れどきだった)に訪れた。それまでは奥の個室ブースに案内されたのに、この日は通りに面した窓際のテーブルに案内された。テーブルには宴席よろしく納車式の段取りを記したメニューが置いてあり、車検証など書類の確認に始まって、カギを受け取り、現車を確認して、取り扱いの説明を受け、受け取りの書類に署名し、最後は「お見送り」と書いてある。大きなガラス窓の向こうにあるウッドデッキにはポリメタルグレーメタリックのMAZDA3ファストバックが置いてあり、たぶん、いや、間違いなくこれから自分が受け取るクルマだ。すなわち、
最高の眺めである。
ピアノブラックのBピラーにはまだ、白い養生フイルムが貼ってある。なんと初々しい。いろいろ省いてカギを受け取った(省きすぎ?)。いまどき当然だがリモコンキーである。「ご存じだと思いますが、実際にキーを出して使うことはほとんどありません。カバンに入れておくだけで大丈夫です」と、飯田さんは説明する。キーについては納車後にいろいろ起きるのだが、機会があったいずれ報告しよう。
マツダはリモコンキーを使ったシステムを「アドバンストキーレスエントリー&プッシュボタンスタートシステム」と呼んでいる。カバンの中も含めてキーを身につけておけば、ドアハンドルのタッチセンサーに触れるだけで運転席、または助手席側のドアを解錠または施錠することができる。解錠するときはドアハンドルを握るようにすればよく(ハンドルの内側にタッチセンサーがある)、施錠する際はハンドルの外側にある凹んだ部分に触れればいい。
施錠する際はドアハンドルに触れる必要もない。あらかじめ設定しておけば、エリア離脱式のオートロック機能が働くため、ドアを閉じて3mほど離れると自動的に施錠される。施錠されたかどうかは非常点滅灯(ハザードランプ)の点滅とドアミラーの格納により確認することができる(そうなるよう設定しておいてくれたのは飯田さんだ)。職業柄、いろいろなクルマに乗る機会が多いので、こういう機能があることは知っていたし体験もしているが、自分のクルマとして付き合うのは初めてで、新鮮だ。それに、便利である。
「まだあります」と飯田さんは言いながら、実践する。すべてのドアが施錠された状態でもキーを身につけていれば、リヤゲートの電磁式オープナーを操作し、リヤゲートだけ解錠することができる。買い物して荷物を載せるときや、ホテルをチェックアウトして荷物を載せるときなどに便利そうだ。いちいちキーを取り出して操作する必要がない。
感心している間はない。初期設定が先だ。まずはシート。PROACTIVE Touring Selectionより上のグレード(は本革シート)には、運転席10Wayパワーシート&ドライビングポジションメモリー機能(シート位置/アクティブ・ドライビング・ディスプレイ/ドアミラー連動)が標準で装備されている。メモリーは2パターン設定が可能だ。
ポジションメモリースイッチはステアリングホイールの右側にある。機能させるには、パーキングブレーキがかかっていることが条件。背もたれの角度、座面の高さ、ステアリングの位置(チルト&テレスコピック機構付き)を調整し、ポジションが決まったら、「SET」→「1(または2)」の順に押せばメモリーは完了。正しく操作して記憶が完了すると、音が鳴って知らせてくれる。メモリーに失敗したときは、失敗した旨の音が鳴る。どちらもきれいな音すぎて、「あれ? この音はどっちだっけ?」と、ときどきわからなくなるのが難だ。
アクティブ・ドライビング・ディスプレイとは、いわゆるヘッドアップディスプレイのことだ。高さ調整はマツダコネクト、すなわち、8.8インチのセンターディスプレイに設定画面を呼び出して行なう(明るさや表示内容の設定も可能)。このアクティブ・ドライビング・ディスプレイ、コンバイナー投影タイプではなくフロントガラス照射式なので見やすいし、スマートでとてもいい。MAZDA3の装備品については機会を改めてじっくり観察することにしよう。
手持ちのスマートフォンをBluetoothで接続できるよう登録するのも、大切な初期設定だ。飯田さんに任せればチャッチャと終わる。自宅を登録しておけば、ナビゲーションシステムで自宅を目的地設定する際に便利だ。これもお任せ。なんでもかんでもお任せだが、必要性を感じなければ、「結構です」と断っていい。設定する項目ごとに、「どうしますか?」と尋ねてくれるし、各機能のベネフィットを説明してくれる。こうした丁寧なやりとりがあるので、1時間や1時間半はゆうにかかるのだ(筆者は2時間以上費やしたが)。
初期設定はまだある。スマートフォン専用アプリの「MyMazda」だ。これについては次回説明しよう(つづく)。