今回紹介するのは2代目の戦後型で、年式は不明ながら非常に珍しいピックアップだ。ピックアップの特徴といえばキャビンのルーフを反転させることでオープンになる構造。とはいえ日本では数えるほどしか存在しないことだろう。
さすがにこれだけ古いクルマを今、普通に走らせるのは難しそうに思える。ところが群馬県の「道の駅おおた」で開催されたイベント(サンブレフェスタ)の会場で見つけたピックアップのオーナーは、サラッと「普通ですよ」と語ってくれた。
というのも、オーナーの小畑さんは自宅にガレージを備えて愛車のメンテナンスから修理まで自分で行ってしまう人だったから。これまで水漏れやオイル漏れは当たり前で、ガソリンまで漏れた経験がある。その都度、自分の手で修理を重ねて改良してきたのだ。それだけの技術があるからだろう、快適に走らせようと考えてエアコンを追加装備している。
旧ミニにも採用されたAシリーズエンジンは948ccの排気量でしかないけれど、国産の軽自動車より排気量は上。そこで軽自動車用のコンプレッサーやコンデンサーなどを用いつつ、ステーや配管などを自作してマイナーでも使えるようにしてしまったのだ!
このマイナーを手に入れたのは5年前だそうで、当初はホロやエアコンはもちろんなかった。乗りながらコツコツと自分の手で仕上げてきた結果が今の姿というわけで、内外装を見るとオリジナルではないものの実にツボを得た改良が施されていた。
エアコンを備えた室内は本来シンプルな計器しか装備していないから、トラブルの早期発見が難しい。そこでメーターパネルを自作して速度計以外に水温や油圧などの各種メーターを追加している。それも古いメーターではない新しい信頼性のあるものを使っているところも実用性を重視した結果だろう。
エアコンといってもヒーターとのエアミックスまでは難しいため、実質的にはクーラーとして使用されている。ダッシュボードの下に汎用ユニットを追加してベンチレーターとしている。
これらだけでなく、改良の手は細部にまで渡っている。その例がドアライナー。おそらく痛んでボロボロだったのだろう。現在はアルミ板から作り出したオリジナルのものを装着している。これがまた雰囲気のあるもので、修理の技だけでなくデザインへのこだわりも感じられるのだ。
外装で見つけられる改良点はホイール。純正だと14インチの80偏平と交換タイヤを見つけるのすら難儀する。そこでスペーサーを自作してBBSのアルミホイールを履いている。外径こそ14インチのままだが、このホイールにしたため185/60という一般的なサイズにすることができた。またギア比が合っていないこともあり、デフをMGミジェットのものに変更している。これで周囲のクルマを気にせず走ることができるのだ。
左リヤタイヤの前にはサイド出しに変更されたマフラーを見ることができる。このようにオーナー自ら手を加えて楽しむスタイルも、古いクルマの楽しみ方のひとつといえるだろう。