現行の二代目カングーのフィナーレを飾るモデルとして、「リミテッド ディーゼル MT」が400台限定で発売された。ファン待望のディーゼル搭載モデルであり、しかも6速マニュアル・トランスミッションのみ! 282万円と、なかなかお買い得な価格も見逃せない。早速、試乗してみよう。



フランスを走っている「フツーのカングー」に最も近い仕様

日本で最も人気の高いルノー車として知られるカングーだが、ついにと言うかようやくと言うか、ディーゼル搭載モデルが日本への上陸を果たした。




その名も「カングー リミテッド ディーゼル MT(以下、ディーゼル MT)」で、400台の限定車として販売される。すでに本国では次期型の三代目カングーが発表されており、ディーゼル MTは現行カングーの最後を飾る限定車ということになる。

ボディカラーはブルー エトワールM(写真)、グリ アーバン、ノワール メタルM、グリ ハイランドM、ルージュ ビフ、ジョン ラ・ポストの6色をラインナップ。

エンジンは直列4気筒1.5Lディーゼルターボで、最高出力116psと最大トルク260Nmを発生する。ネーミングからもわかるとおり、組み合わされるのは6速MTのみだ。




本国フランスを始め、カングーの主力パワートレインはディーゼルである。ここ数年はガソリンエンジンが伸びてきて、2020年のEU圏内での販売比率はガソリンが6割ほどに達したらしいが、それでも累計販売台数……つまり現在の欧州の路上を走っているカングーの多くがディーゼルであることは間違いない。そしてご存知の通り、かの地ではMT比率が圧倒的に高い。




つまり、フランスを含む欧州で多く走っている「フツーなカングー」にかなり近い仕様が、この二代目の最後の最後にこの日本でも買えるようになったわけだ。後々、マニアの間でプレミアが付く伝説的存在になる可能性もある。

アップライトで視界良好なドライビングポジション。6速MTはゲート感が明瞭でシフトフィールも良好。ペダル配置はオフセットもなく、ヒール・アンド・トーも問題なくこなせる。

ディーゼル MTの専用装備は下記の通りだ。




●ブラックバンパー(フロント&リヤ)/ブラックドアミラー


●ボディ同色フロントグリルブレード(ソリッドカラーのみ)


●ホイールセンターキャップ&ホイールボルトカバー


●専用バッジ「LIMITED」


●LEDデイタイムランプ


●バックソナー

リヤシートはそれぞれのクッションが独立した3名掛け。頭上空間が広大なのは言うまでもないが、足元スペースも余裕たっぷり。
大ぶりでアタリのソフトなシートは、長距離ドライブでの疲労の少なさもすでに確認ずみ。快適でありながらホールド性も意外に高い。

乗り込んでみると、ガソリン仕様のカングーととくに変わったところは見当たらない。大ぶりでアタリのソフトなシートが相変わらず気持ちいい。




エンジンをかけても室内に耳障りなガラガラ音が届かないのは近年のディーゼル車の常である。




シフトレバーを1速に入れ、アクセルを踏まずにクラッチをつなぐ。ディーゼルらしく、ストールの兆候など一切見せずにドンッとボディが押し出される。これなら久々にMTを運転する人でも心配はいらないだろう。




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カングー名物のオーバーヘッドコンソール。運転席に座ったまま手を伸ばせば届くから、なんでも気軽にガンガン放り込める。
リヤのオーバーヘッドコンソールは旅客機のようにフタのあるタイプ。車外から見られたくない物をしまっておくにも都合がいい。

タフな道具感を求めるなら、これが最後のチャンス!

カタログモデルの1.2Lガソリンターボと比べて最高出力は1ps高い……つまりほぼ同等だが、発生回転数は750rpmほど低い3750rpmで、最大トルクは70Nmも上回る260Nmを発生する。当然だがその走りは断然力強く、速い。




そしてエンジン回転数でパワーを稼ぐのではなく低回低域のトルクがもたらす速さだから、タウンスピードでも高速巡航でも扱いやすい。「とくに飛ばすような走りをしていないのに妙に速い」のはいかにもフランス車らしい。荷物を満載にして突っ走るというカングーというキャラクターにも合っている。




ちなみにトップギヤの6速での100km/h巡航時のエンジン回転数は1800rpmだ。今回の試乗は短時間だったので計測はできなかったが、これなら燃費にも大いに期待ができそうだ。

商用車に出自を持つカングーだけに、ラゲッジスペースの広さは圧巻のひと言。スクエアで出っ張りがなく、開口部が大きいのも好ましい。
リヤシートは6:4の分割可倒式。座面が前方にスライドして完全にフラットになり、シート背面と荷室床面を平らにつなぐフラップが備わる。
標準装備のトノボードは、使わないときにはこのようにリヤシート背面に差し込んで収納することができる。
トノボードは二段階の高さ調整式。低いほう(写真)にセットすれば、床下収納のようなスペースを生み出せる。

面白いのは、ガソリン仕様のMTとはギヤ比が微妙に異なるからなのか、1速から2速のつながりが良く、発進直後からダイナミックかつスムーズな加速ができることだ。




その一方で、アクセルを踏んだ直後にちょっとしたトルクデリバリーのタイムラグを感じる場面もあった。ディーゼルならではの豊かなトルクのおかげでついついシフトアップが早めになってしまい、トルクバンドを外してしまったのだ。シフトアップした後に1500rpmを下回ってしまうようだと、アクセル操作に対してひと呼吸、いや、1/2呼吸ほどのラグを感じることになる。




いや、もちろんそんな低い回転数でつないでいった自分が悪いのだけれど、トルクフルなエンジンのおかげで、ついやってしまう人は少なくないはずだ。同じディーゼルながら8速ATと組み合わせるプジョー・リフターやシトロエン・ベルランゴでは起こりえない現象だが、むしろMTを操ることでそうした部分を補えることに悦びを見出す好事家も多いだろう。

限定車であることを示す「LIMITED」のエンブレムがフロントフェンダーの後方に貼られている。ディーゼルMTの販売台数は400台で、ボディカラーは6色をラインナップ。
ホイールキャップを外すのはカングーの定番スタイル。ということで、ディーゼルMTのホイールは最初から鉄チン仕様。中央にルノーのエンブレムがマウントされている。

それにしてもつくづく思うのは、二代目カングーの走りの奥深さである。これはディーゼルに限った話ではないけれど、高速巡航時の大型客船のような直進安定性、首都高速のランプを駆け抜けるときのステアリングの正確さ、そして目地段差をまろやかにいなすサスペンションのしなやかさなど、どれをとってもこれ以上のレベルは望めそうにないし、望もうとも思わない。

ライバルであるリフターやベルランゴよりも大幅にお手頃な282万円という価格を引っ提げて登場したディーゼル MTだが、世代が古いだけにアダプティブクルーズコントロール(クルーズコントロールのみ装備)や衝突被害軽減ブレーキといったADASは備わらない。インテリアなどの仕立てもチープだ。さらに6速MTのみのラインナップというのは、今どき大いに乗り手を選んでしまう。




しかしカングーは、商用車を出自に持つこのカテゴリーならではの「道具感」が色濃い。ガンガン使い倒せるタフさに満ちている。MTであることもそれに拍車をかける。




そして2022年頃の日本への導入が期待される三代目カングーはリフターやベルランゴを大いに意識しており、かなりの上質感を備えた仕上がりになっていると聞く。つまりカングーにタフな道具感を求めるなら、今が最後のチャンスと言うわけだ。




二代目カングーのフィナーレを迎えるこのタイミングで、その「らしさ」を最も強く感じさせるディーゼル MTを導入してきたインポーターの見識にはさすがと唸らざるを得ない。

ルノー・カングー リミテッド ディーゼル MT




全長×全幅×全高:4280mm×1830mm×1810mm


ホイールベース:2700mm


車両重量:1520kg


エンジン形式:直列4気筒DOHCディーゼルターボ


排気量:1460cc


ボア×ストローク:76.0mm×80.5mm


圧縮比:15.1


最高出力:85kW(116ps)/3750pm


最大トルク:260Nm/2000rpm


トランスミッション:6速MT


駆動方式:FF


サスペンション:Ⓕマクファーソンストラット Ⓡトレーリングアーム


燃料:軽油


燃料タンク容量:60ℓ


燃費:WLTCモード 19.0km/ℓ


   市街地モード15.9km/ℓ


   郊外モード:19.1km/ℓ


   高速道路:20.0km/ℓ


タイヤサイズ:195/65R15


車両本体価格:282万円
情報提供元: MotorFan
記事名:「 待望のルノー・カングー リミテッド ディーゼル MTが日本上陸! ベルランゴやリフターよりかなり安いけれど中身はどうなの?〈初乗りインプレッション〉