TEXT:畑村耕一(Dr.HATAMURA Koichi)
最初に、ディーゼルエンジン車の燃費がガソリンエンジン車より良好になる理由について、考えてみよう。ディーゼルエンジンと比較するとガソリンエンジンの燃費(CO2排出量)は、図1のように約30%多いのが現状である。
この差の原因を知るために、エンジン単体の熱効率として、通常使用領域である1500rpmの燃料消費率(g/kWh)のデータを比較する。ディーゼルは、スロットルを持たないためにポンピングロスが小さいことや、圧縮比が高くリーン燃焼であることなどによって、図2-aのように横軸にBMEP(排気量当たりのトルクに相当)を取って燃費率を表すとガソリンより約15%良好な値を示す。しかし、これでは30%の差が説明できない。
そこで、車載の状態での燃費率を考えてみよう。アクセル全開の加速のための駆動力は駆動系の減速比が同じならエンジントルクで決まる。一般的に、ディーゼルはガソリンより排気量当たり1.5~2倍のトルクを発生するから、ディーゼル車はエンジン排気量を小さく設定しても同等の駆動力が得られる。すなわち、加速力が等しい(1500rpmのトルクが同じ)エンジン同士を比較するために、横軸を負荷(最大トルクを100%)として図2-aを書き直すと図2-bを得る。こうすることで、車載条件では、通常使用領域(10-40%負荷)において30%程度燃費が向上することが説明できる。すなわちエンジン排気量を小さくすることで、エンジンの使用領域が高負荷側に移動して約15%の燃費向上効果を得ているのであり、これがダウンサイジングによる燃費向上効果である。