レポート=渡辺陽一郎[本文]/工藤貴宏[写真解説] フォト=平野 陽
クロスビーは、スズキの小型車では最も小さなプラットフォームを使うコンパクトSUVだ。
フロントマスクは同じスズキのハスラーに似たデザインで、最低地上高も180mmを確保しているので悪路の凸凹を乗り越えやすい。空間効率は軽自動車並みに高く、全長は3760mmと短いのに車内は広い。身長170cmの大人4名が乗車して、後席に座る乗員の膝先空間は握りコブシふたつだからフィット並みだ。荷室には水洗いが可能な加工も施され、屋外で使った遊びのグッズも気兼ねなく積める。
エンジンは1.0ℓ直列3気筒ターボを搭載する。動力性能は1.5ℓと同等だ。ターボ車に多い低回転域の駆動力不足はほとんど感じない。車両重量は4WDでも1000kgと軽く、加速性能に余裕がある。操舵に対する反応は自然な印象だ。後輪の接地性は、もう少し高める余地があるが、車両の向きを変えやすく峠道でも運転しやすい。乗り心地は、低速域では少し硬いが、突き上げ感と粗さは抑えられている。クロスビーは、外観から想像される以上に後席と荷室が広く、ファミリーカーとしても使いやすい。ハスラーのような軽自動車を所有するユーザーが、高速道路を使う機会が増えたりして、上級移行する時には最適だ。今の軽自動車が備える車内の広さ、シートアレンジなどの実用性を損なわずに、走行安定性と乗り心地を向上させられる。
運転席と助手席を隔てるセンターコンソールがなく、シフトレバーをインパネに設けるなどウォークスルーのしやすさを意識したレイアウト。空調スイッチの仕立てなどは、アウトドアギアのようなタフな雰囲気を狙っている。
ボディカラー:ミネラルグレーメタリック 3トーンコーディネート
オプション装備:全方位モニター用カメラパッケージ(5万5000円)/スタンダ
ードプラスワイドナビ(14万6905円)/ETC車載器(2万2220円)/フロアマ
ット〈クロスラインタイプ〉(3万30円)/特別塗装色(4万4000円)/他
前席は着座位置が高めで視界良好な上、フロントウインドウが立っているので開放感がある。パッケージングが実用ハイトワゴンなので、後席の広さはコンパクトカーの中でもトップクラス。足元は超ゆったりだ。
後席居住性を重視したパッケージングゆえに通常の荷室はミニマムサイズ。しかし、後席スライドを活用すれば後席に人が座れる状態をキープしたまま奥行きを520㎜まで拡大できる。後席を倒すとほぼフラットになるのが便利。
渡辺陽一郎はこう買う!
グレードは「ハイブリッドMX」と「ハイブリッドMZ」の2種類がある。それぞれにFFと4WDを用意するが、買い得なのは「ハイブリッドMZ」。LEDヘッドランプや11万円相当の衝突被害軽減ブレーキなどを加えて、価格上昇は24万2000円だ。
※本稿は2020年10月発売の「モーターファン別冊統括シリーズVol.128 2020年コンパクトカーのすべて」に掲載されたものを転載したものです。車両の仕様や道路の状況など、現在とは異なっている場合がありますのでご了承ください。