一方、バンコンやトラキャン、キャンピングトレーラーは、二律相反なんてことはない。バンコンは動き出せばワンボックス車だし、トラキャンは置く場所さえあればキャンパーシェルを下ろすことができる。トレーラーも、切り離して駐車しておけばいい。そういう意味では、運動性能の面で云々言わなければ、バンコンというカテゴリーは非常にバランスがとれたキャンパーなのだ。
オーエムシー(OMC)というビルダーは、バンコン作りにかけて面白いものを持っている。個人的には「銀河」や「北斗」は、かなりのお気に入りだ。豊富なラインナップを有しており、ライフスタイルに合わせたレイアウトを選ぶことができるのだが、じゃあオススメは?と聞かれた時に、ファミリーなら「ツアーズ ワイド SGL」をおすすめする。
理由のひとつめが、ハイエースバン・ワイド・スーパーGLをベースに使っていることだ。ワイドは標準ボディに比べると、車幅が185mm広く、全高は125mmも高い。もちろん全長も長くなるので取り回しが不安になるかもしれないが、最小回転半径はわずか0.2mの差でしかない。それでいて、車内の居住性は大きく変わる。
理由のふたつ目としては、室内のレイアウトがオーソドックスなこと。昨今のバンコンにおいてファミリー向けモデルは、フロントとリアのベッドに高低差を付けることが多い。このタイプは寝食分離ができるというメリットもある。しかし、このモデルは運転席直後から車内後端までフルフラットになるのである。ベッドの高さが一定だと、居住空間が広くなり、移動もしやすい。大人がマットに座った時、ヘッドルームが広いと着替えも容易になる。
そして、オーソドックスゆえに、用途の幅も広い。リアの家具があるとしても収納スペースは十分で、セカンドシートの位置によっては、自転車、スキー&スノボ、釣り竿などを積載して出かけることも可能だ。
乗車定員は7名、就寝定員は大人3名+子供2名なので、ファミリーの愛車としてはうってつけだ。キャンパー装備としては十分なものをインストールしており、バタフライ式のセカンドシート(FASP製)にダイネットテーブル、ギャレー、サブバッテリー&走行充電システム、カーテン室内照明などなど。これにインバーターやFFヒーター、サイドオーニングなどのオプションを付ければ、快適度はさらにアップする。
キャンピングカーは夢あるクルマだけに、どうしても家なみの装備を求めがちだが、日常の使いやすさや多様性も忘れてはならない。特に、愛車を1台にまとめたい時はなおさら。二段ベッドやマルチルームがあると、それはそれで便利なシーンはあるが、汎用性を考えるならシンプルなレイアウトに越したことはない。
ちなみに同モデルの価格は、ガソリン2WDで514万円。このプライスはモデルによってはキャブコンが買えるものだ。しかし、ベース車両が378.4万円だということを考えれば、まあ納得できる価格だ。オートキャンプだけでなく、いろいろ使いたい、長距離移動が多い、なんて人は、やはりキャブコンよりもバンコンを選んだ方がいいかもしれない。