レポート=岡島裕二[本文]/小林秀雄[写真解説]
ルーミー&タンクは隠れた超人気車種だ。軽自動車を除いた、今年上半期の販売台数第1位はライズだったが、ルーミーとタンクの販売台数を合算すればライズを上回っており、ノア3兄弟に次ぐ、トヨタで2番目の稼ぎ頭となっている。2020年9月のマイナーチェンジでタンクが廃止されてルーミーに統合されたため、今後はルーミーが車名別の販売台数で1位に躍り出る可能性がある。
ルーミーが人気の理由は使い勝手の良さだ。いま日本でコンスタントに売れている車種は、軽ハイトワゴンとミニバン、コンパクトカーで大部分を占めるが、ルーミーにはそれらの要素がすべて揃っている。ルーミーの基本パッケージングは軽ハイトワゴンの拡大版といえるもので、乗降性に優れた両側スライドドアを採用し、後席を倒せばラクに自転車2台を積むことができる広い荷室を備えている。後席に乗り込めば軽ハイトワゴンよりも明らかに横幅が広く、狭くはなるが後席の3名乗車も可能。足元のスペースも広いから、3列目のないミニバンのような居住性が確保されている。前席はミニバンよりも着座位置が低く、乗降性も良好。視認性や取り回しも良いので、コンパクトカー感覚で気軽に乗りこなすことができる。このように小さなボディにマルチな才能を秘めている点が、ルーミーの魅力なのだ。軽自動車には抵抗があるけど、ミニバンまでは必要ないという人にはピッタリのコンパクトカーだ。
ルーミーはトールの兄弟車ということもあり、開発や生産はダイハツが行なっている。そのため、ルーミーには軽自動車で培ったノウハウが巧く活用されている。スクエアなボディ形状と大きなガラス面により運転席からの視界が開けており、狭い道路や駐車場でも軽自動車のように取り回すことができる。最小回転半径も4.7mと軽自動車並みだ。エンジンは軽自動車用とは別物だが、軽自動車で磨き上げた低燃費技術が用いられている。996ccエンジンは加速し始めに3気筒独特のプルプルとした振動や音が出るが、速度が乗ってしまえば気にならなくなる。少人数で街なかを走る程度なら自然吸気でもスムーズに走れるが、後席にも人を乗せる機会が多いならターボを選んでおきたい。ターボにはフロントに加えて、リヤスタビライザーも標準装備されるから高速道路や山道での安定感も高まる。サスペンションは乗り心地を重視したソフトな設定なのでカーブでは重心の高さを感じさせるが、トレッドが広めに取られているため軽ハイトワゴンよりも断然安定感がある。9月のマイナーチェンジでは自動ブレーキなどの安全装備の性能を向上させ、カスタムには全車速追従機能付きACCとホールド機能付き電動パーキングブレーキが標準装備された。だが、できればダイハツ・トールのように標準車にもオプションでACCと電動パーキングブレーキが選択できるようにして欲しかった。
後席スペースは膝前のクリアランスが最大420㎜と、余裕で足が組める広さ。頭上スペースも約70㎜あり、開放的だ。シートの前後スライドとリクライニングも可能。
前席は、極めて見晴らしが良く、目線も高い位置にあることから、運転に不慣れな人でも安心感が得られやすい。新型はシートの形状とトリムが変更されており、上質感を高めている。
後席シートには6対4分割式のダイブダウン機能が備わり、簡単な操作で広くフラットな拡大フロアを生み出すことができる。また、シートを前方にスライドさせるだけでも、荷室奥行きを約680㎜まで広げることが可能だ。
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新生ルーミーにも標準車とカスタムが用意されているが、標準車はタンク風の外観に変更されたので、タンクが欲しかった人は標準車を選べば良い。自然吸気とターボの価格差は12〜13万円あるが、ターボの方が断然力強く、ハンドリングも良いので、ターボを選んでおきたい。私なら少し値は張るが「カスタムG-T」を選ぶ。
※本稿は2020年10月発売の「モーターファン別冊統括シリーズVol.128 2020年コンパクトカーのすべて」に掲載されたものを転載したものです。車両の仕様や道路の状況など、現在とは異なっている場合がありますのでご了承ください。