ダイハツとトヨタが用いる直列4気筒の小型エンジン・SZ型の最大排気量版である3SZ-VE型は、超ロングストローク設計をはじめ、数々のユニークな特長を備えている。

「3SZ」というトヨタ式のエンジン型式名が与えられてはいるものの、本機はダイハツ開発によるエンジン。サフィックス(ハイフン以下の記号)が「VE」であることからもそれがうかがえる。実際、SZ型には997ccの1SZ型および1296ccの2SZ型のバリエーションが存在するが、ダイハツにも1.3ℓ版である1297cc直4・K3-VE型が存在し、3SZ-VE型はこのK3-VE型との共通点が数多く見られる。




実際にはほとんどのパーツが別物ではあるものの、設計の基となる基本的な寸法を多くの部分で共用しており、実質的にはK3-VEのストロークアップ版といえる内容となっている。そのストローク値は91.8mmとし、実にSB比(ストローク/ボア比)は1.275と、当時としても現在のロングストローク志向のエンジン勢と照らし合わせても破格の数字である。ボア径はK3-VE/2SZ-FEと同値の72mm、ボアピッチはこれらのエンジンがすべて78mmなので、ボア間はわずか6mmしかない計算。その6mmのボア間には冷却の厳しい2番気筒を冷やすための冷却水路が穿たれている。なお、ブロック材は鋳鉄。




ボア径72mm/ボアピッチ78mmという構造のため、排気量拡大にはストロークアップしかできなかったというのが予想されるが、ロングストローク設計による相対的な小径ボアは冷却損失の低減に寄与するし、コンロッドの傾きが緩くなることでピストン側壁圧/機械損失も抑えられる。エンジン全高が増し搭載性に難があったり、ピストンスピードが増してしまうなどのデメリットはあるものの、実用性と経済性を考慮すれば総合的に取り分の多い設計であるといえよう。ピストンスカートには樹脂コーティングを施すとともに、図面を見る限りではシリンダーオフセットも設けられているようだ。




結果、2SZ-FE型に対して3SZ-VE型の全高は25.5mmの増加となった。対して前後長は目論見どおり、かなりコンパクトになっていることから、レイアウトの自由度は高く、一部ではFR用としても採用されている。

3SZ-VE(左)とK3-VE(右)

K3-VEと同様、吸気側カムシャフトに可変タイミング機構を装備し、カムトレーンには8mmピッチのチェーンを採用。ボア径は先述のように72mmのままながらバルブ径を吸気側は26.1から27.8mmへ、排気側を22.6から23.4mmへと拡大している。目的はもちろんガス交換の効率向上で、ポート径も32mmを確保、さらに上流のスロットルバルブも1.3ℓでは45mm径だったところ、50mm径まで拡大された。割を食った点火プラグは12mm径のものへと変更されている。




カムの作用角も220度から230度へ、リフト量も1.3ℓの吸気7.2/排気6.7mmに対して、3SZ-VE型では吸気カムリフトを8.0mmに拡大している。排気後処理にはダイハツお得意のインテリジェント触媒を備えた。





3SZ-VE

■ 3SZ-VE


気筒配列 直列4気筒


排気量 1495cc


内径×行程 72.0×91.8mm


圧縮比 10.0


最高出力 80kW/6000rpm


最大トルク 141Nm/4400rpm


給気方式 自然吸気


カム配置 DOHC


吸気弁/排気弁数 2/2


バルブ駆動方式 直接駆動


燃料噴射方式 PFI


VVT/VVL In/×


(ブーン・ルミナス)
情報提供元: MotorFan
記事名:「 内燃機関超基礎講座 | 超ロングストロークのダイハツ1.5リッター4気筒[3SZ-VE]