概して、ディーゼルエンジン搭載車はガソリンエンジン車に比べて燃費がいい。あらためてその理由を考えてみる。

牧野 文系素人である私にはどうも理解できないのがディーゼル・エンジンの実燃費です。ヨーロッパでディーゼル車を借りると同じ車種のガソリン車より3割くらい燃費が良いのではないかと思えるデータを示してくれます。自動車メーカーが発表しているモード燃費で見る以上に実燃費が良いこともあります。熱効率で見れば、ガソリンエンジンに対してディーゼルが30%も良いはずはないのですが......。



畑村 ヨーロッパで発表された実車データでも、ガソリンはディーゼルより平均して35%くらいCO2排出が多いというデータがあります。燃料消費はディーゼルのほうが約25%少ない、と。エンジン単体の燃費率では同じBMEP(Break Mean Effective Pressure=正味平均有効圧、簡単に言えばトルクを排気量で割った数値、排気量当たりのトルク)で比較するとガソリンとディーゼルの燃費率の差は15%程度でしかない。



牧野 その15%が、ナゼ2倍になるのですか?




畑村 まず、エンジン排気量はガソリンよりディーゼルのほうが小さいというのがいまの傾向で、それはターボ過給をしているからです。排気量当たりの発生トルクで見れば、ディーゼルはガソリンの30%から60%増しになる。




牧野 そんなに差があるのですか!!



畑村 排気量の大きいエンジンほど差が広がる。自動車用ガソリンエンジンで排気量1万ccは作れないですよ。ボアはノッキング限界があるからむやみに拡大出来ないし、気筒数を多くすると冷損(冷却損失)が増える。作ったとしてもディーゼルの1万ccにはかなわない。

牧野 小排気量でトルクを出せるのが過給ディーゼルの長所ということですか。ガソリンと同じ動力性能を狙うなら、過給ディーゼルのほうが小排気量で済むというのは感覚的にもわかります。




畑村 駆動力、つまりトルク×ファイナルギヤレシオ(エンジン回転数)で合わせ込んでやる。最大トルクをディーゼルとガソリンとで同じに設定した場合は、低回転域のトルクは必ずディーゼルのほうが厚くなる。昔のディーゼルは、最高性能をガソリンと同じにするために排気量を増やして対応していたのです。



牧野 なるほど。確かにそうです。ガソリン1600ccと同じ図示トルクで動力性能にするには1900ccのディーゼルが必要だった。




畑村 それと排気量×エンジン回転数。このふたつで見ると、過給ディーゼルは回転数を下げても駆動力が出るのです。実用域のエンジン回転数ではなおさらそうだから、実燃費として30%良くなる。言い換えれば、過給ディーゼルはガソリン比で約3分の2のダウンサイジングが可能です。フルトルクではなく常用域トルクでの余裕駆動力の差が燃費向上分になると考えていい。



牧野 そのダウンサイジングは「小排気量化」という意味ですか??



畑村 排気量を下げてもエンジン回転を上げたらダメ。目一杯過給して回転数は上げない。それを前提にした小排気量化という意味です。排気量×ファイナルギヤレシオ、つまりエンジン回転数。これがダウンサイジングの指標です。「ピストンがどれだけの空気を吸う動きをしているか」が排気量だから、エンジン回転を上げてしまうと、結局は大排気量エンジンと同じことなのです。



牧野 なるほど、だからCO2発生量も30%オフ。




畑村 発進トルクでは、ディーゼルは800rpmからちゃんと出る。ガソリンだと、そうはいかない。



牧野 低回転大トルクがディーゼルのメリットということですね。


畑村 排気量と回転数を下げてもガソリンと同じ駆動力を得られるわけです。トータルとしてダウンサイジングが効いている。だから燃費が良いのです。



牧野 燃料を噴いただけトルクが出る、と。



畑村 ディーゼルは空気量があるから燃料噴射量=トルクに近い動作になる。しかも低回転域にピークがあるから、実走行でトルクの余裕のあるエンジン回転数を使える。



牧野 逆に、ガソリンは燃料量にマッチした空気量がキレイに入ってこないとトルクにならない。




畑村 運転していて感じるのは、各ギヤが持っている全負荷ではないところ、アクセルストロークが小さいところの余裕が必要なのです。そのときの燃費を見ないと全体の燃費は見えてこない。



牧野 ということは、ディーゼルこそ効率が良くシフトの早い変速機が必要ということですね。

情報提供元: MotorFan
記事名:「 内燃機関超基礎講座 | ディーゼルがガソリンより燃費がいいのはなぜか