「PX-375」は、従来の質量濃度を測定する装置にサンプルを非破壊で測定する蛍光X線測定技術を搭載することにより、1台で粒子状物質の質量濃度と元素濃度を自動で連続測定できる装置だ。装置に搭載されているカメラや専用ソフトウェアとの連携により、現場でサンプリングから測定データ取得までを実現し、手作業による成分分析では困難だった工場や自動車などから排出される汚染物質の解析や発生源推定を可能とした。
国内では、環境省主導のもとPM2.5の成分連続分析が可能なモニタリング体制の整備を目的に、2017年4月から全国4か所にPX-375が導入され、PM2.5の連続測定が行われている。これにより、国内の発生源や大陸からの越境汚染による影響の迅速な把握やPM2.5の発生に関するメカニズム解明、および大気予測手法の開発など、様々な分野で貢献している。
また、SDGsやESG投資に関連した環境改善や保全を目的とする汚染源特定に対するニーズの高まりから、各国の環境省や民間企業(鉄鋼や発電所など)が本製品の導入を始めており、大気汚染の原因解明や対策の研究を通じて地球環境改善に貢献していく。
※環境賞:公害問題が深刻だった1974年に創設された。環境を守り、未来につなげる調査、研究、技術・製品開発、実践活動のなかで、画期的な成果をあげた個人、法人、団体・グループなどが表彰される。
PM2.5などの粒子状物質による大気汚染問題が注目されているなか、効果的な対策を行うためにはどのような物質から粒子状物質が構成されているかを把握する必要がある。本装置は、PM2.5の質量濃度測定に加え、含有元素の成分分析も同時に1台で測定できる画期的な装置である。工場内・工場操業地域において工場から排出される有害元素の測定も可能だ。また、独自の前処理装置と組み合わせることで、高濃度ばいじんや粉じんを含む処理ダクト内や排煙出口での測定ニーズも出てきている。
さらに、搭載しているカメラを使い、粒子の黒色度合いを数値化することで、すすや酸化鉄に代表されるような黒色粒子を同時に測定ができる方法を開発した。(特許出願済:US Patent NO. 10876950)
びわこ工場で大気を常にモニタリング
堀場製作所のびわこ工場「HORIBA BIWAKO E-HARBOR」(滋賀県大津市)では、「PX-375」と大気汚染監視用微量ガス分析装置を組み合わせた大気汚染常時監視局「AQMS(Air Quality Monitoring Station )※」を敷地内に設置している。日々測定、分析することで、新技術の研究だけでなく、大気汚染の原因解明や防止対策の研究を行うことで、環境保全に貢献していく。
※「AQMS」: 風向風速を含む気象データや大気中の二酸化硫黄、粒子状物質、窒素酸化物、一酸化炭素、オゾンなどの濃度を1年間通じて連続で計測できる自動測定機を設置した施設