ゴールデンウィーク短期集中連載として全8回でお届けした「スイフト博士カモ?」の加茂 新氏解説・スイスポ丸ごと講座。いよいよ最終回の脚周り(後編)です。ブレーキだけはスイフトスポーツで積極的にチューニングしてもいい部分。あまりのクルマの速さに、ちょっとだけブレーキには負荷がかかっているので、そのいたわる方法や対策法を解説!!




TEXT:加茂 新(KAMO Arata)

ブレーキもベアリングも育ててきたからいまの性能がある!!

筑波サーキットではラジアルタイヤのRE-71Rで1分6秒台をマーク。新品タイヤでもなく、とくに準備もせず6秒台で走って、そのまま帰れる究極のスポーツファミリーカーである

さて、ここまで7回に渡ってスイフトスポーツの凄さを伝えてきたが、最終回となる今回は、サスペンション後編です。脚周りの凄いポイントはまだまだあるのがスイフトスポーツの底力。




地味ではあるが取り上げておきたいのがハブベアリングだ。ZC31Sではスポーツ走行していると時折ハブベアリングにガタが出て交換を余儀なくされるのが弱点と言われていた。それがZC32Sからはトラブルは皆無。ハブベアリングには負担となるキャンバー角を多めにして、サーキットで縁石をバンバン乗り越えても全然大丈夫。もちろん、縁石にガツンと乗らない方が良いですけど……。

レブスピード編集部ではZC32S、ZC33Sどちらも8万キロ以上、サーキットは年間20回近く走行しているがどちらもハブベアリングのトラブルは起きなかった。ちなみにドライブシャフトが折れるようなトラブルもナシ。


ついでに言えばトラブルらしいトラブルはまったくなし。「修理」ということをした記憶がない。トラブルフリーがスイフトスポーツの凄いところなのだ。

だが、ちょっとだけ心許ないのがブレーキ。ZC32Sに比べてローターサイズがアップされ、増大したトルクによる速度に対応させてきた。しかし、それ以上にZC33Sは速かった。絶対的な制動力は問題ないが、サーキット走行を繰り返すとキャリパーが開いてきてしまう。それによってブレーキパッドがすべての面積を使えず、だんだんペダルタッチと制動力が落ちてきてしまうのだ。




このキャリパーが開く問題はZC32Sでも指摘されていて、その改善策としてZC33Sでは先代と同様に17インチのホイールが装着できる範囲でローター径をアップさせてきたが、それ以上にクルマが速くなってしまったのが原因ということ。

片押しキャリパーの爪の部分が徐々に開いていってしまう。防止策としてはキャリパーが熱を持った状態で強いブレーキを繰り返さないこと

ZC32Sからキャリパーの見た目は若干変わっているが、パッドは同じカタチで基本キャリパーのスペックは継承されている模様で、どちらも片押し1ポット構造だ

編集部のテストでも本庄サーキットでの連続走行では、ローター温度700℃、キャリパー温度は250℃以上になり、どちらも限界を超える温度になってしまった。ちなみにブレーキメーカーのエンドレスによると、純正は熱に強い鉄製キャリパーだが、温度が200℃を超えると急速に剛性が落ち、その状態でフルブレーキを繰り返すと「開き」やすいという。




普段乗りではまったく問題ないが、サーキットユースではダクトによる冷却や、連続走行をしないこと、キャリパーの交換などの対策をしたほうがいいだろう。

REV SPEED号のフロントキャリパーは度重なるサーキット走行によりダストブーツも穴が空いてしまったほど。このシールが傷まない程度に冷却するなり、クーリングラップを入れないとキャリパーも開いてしまう

そしてキャリパー交換時に気をつけたいのが電子制御だ。


ZC32Sではブレーキ強化としてフロントローターを極端に大きくして、キャリパーキットを組み込むと、サーキットでのフルブレーキ時にABSが誤作動してブレーキがロックしたり、リリースしてしまうことがあった。




そこでREV SPEED号では純正ローターサイズにエンドレス製キャリパーを組み合わせたところ、まったく問題は起きずにキャリパー強化ができた。現代のクルマの場合、4輪の回転差などを統合制御して、横滑り防止装置の制御などをしているので、過度なブレーキ強化はトラブルの原因になることもあるのだ。




ZC33Sではまだあまりブレーキトラブルは聞かれていないが、4輪の接地性が落ちるとABSが過度に反応するので、しっかりと路面を捉える脚周りにしたうえで、ブレーキキットのキャパシティアップはプロショップとよく相談して行なってもらいたい。

情報提供元: MotorFan
記事名:「 スイスポ進化論脚周り編② 筑波で走ってそのまま帰れる、究極のファミリーカーなのだ!【連載|スズキ・スイフトスポーツを愛しすぎた加茂からのラブレター⑧】