TEXT:加茂 新(KAMO Arata)
サスペンションはこのクラスとしてはオーソドックスな、フロントはストラット/リヤはトーションビーム式となっている。フロントは普通のストラットで、それはZC33Sでも基本は先代、先々代と変わっていない。歴代どのモデルもサーキットでも楽しめる懐の深い減衰力が持ち味だ。
リヤは左右がつながったトーションビーム式。接地性だけを考えたら独立懸架に越したことはない。実際、ディーランゲージが走らせていたフルチューンチキチキZC31Sはリヤにアームを生やして独立懸架にしてはいたが……。
通常の走行レベルではトーションビームだから遅いとか限界が低いということはない。素性はいいサスなのできちんとセッティングすれば、相応のコーナリングスピードを手に入れることができるぞ。
歴代スイフトでトーションビームのねじり剛性などが調整されており、ZC33Sになってからはそれほど剛性不足も感じさせない。というか、剛性を高めるほどにスタビライザー的な効果が高まるので、リヤが良くいえばシャープになる。悪くいえば限界が下がる方向にもなりかねないので、剛性が「不足」というよりは、もともと剛性が上がったので、そこまで調整する必要がなくなってきたといえる。
ちょっと気になるのはリヤのアライメント。溶接で形作られたトーションビーム。リヤハブの取付角度にも多少誤差がある。噂では±1°が公差になるという。標準は1°15分(1.25°)……。
つまり、ちょっとレーシーにネガティブキャンバー2°を超えるような個体もあれば、古い馬車やT型フォードのようにキャンバーほぼ0°の個体もあるということ。こればっかりは当たり外れというか個体差である。ハンドリングへの影響はほとんどないが、攻めたホイールサイズを収めようとすると、ここの1°はすごく重要になるのだ。
チューニングパーツメーカーのクスコやアールズなどから調整用のリヤキャンバーシムが発売されている。フレキシブルにキャンバー角とトー角も調整できるクスコ製と、キャンバーが1°プラスと2°プラスのものが選べるアールズ製などがあるので、自車のスペックを確認してから選んだほうがいい。
ZC33Sで指摘されているのは、アームの取付ブッシュの剛性不足というか、ゴムブッシュが軟らかく、そこがヨレてハンドリングが曖昧になっていると指摘するチューナーが多い。
ZC32Sからブッシュ硬度が低められたのではなく、単純に33になってターボパワーがブッシュのヨレまでを感じさせている可能性が高い。この部分をピロボール化に打ち替えればハンドリングはシャープというか、無駄がないスッキリとしたものになる。アフターパーツのアームにすると車検がめんどうだが、ブッシュの打ち替えは関係ないので車検も安心。
そんな歴代スイフトスポーツのサスペンションは「モンロー」製を採用。スバル車でビルシュタイン製サスを使ったりすることはあるが、この価格帯のクルマでブランド品のサスを採用するのはマレ。さすがスイフトスポーツに気合いの入ったスズキである。
ZC31Sから33Sまで一貫してモンローを採用している。
乗り味はかなりまとも。ふわふわの「This is Normal」という感じではない。
ロール量は大きいがじっくりと効く減衰力はサーキットでもまったく問題なし。正直を言うとちょっと街乗りでの突き上げがノーマルとしては強めではあるけれども……。
ちなみにモンローは1916年創業のサスペンションサプライヤーで、インディ500優勝を果たしたり、ポルシェ911などに純正供給するなど実績あるメーカーだ。スイフトスポーツ用サスはチェコで生産されたものが装着されている。チェコからはるばる浜松までやってきてスイフトスポーツに装着され、我々の手元に届けられるという、かなりの長旅を経験しているサスペンション。
地元浜松産パーツが大半を占めるなか、数少ない外国製パーツなのだ。【明日へ続く】