PHOTO:富樫秀明 REPORT:ケニー佐川 ILLUST:大塚 克
ケニー佐川(以下、【ケ】)CT125には〝トレッキングカブ〟というコンセプトがついていますが、その意味するところを教えてください。
開発陣(以下、【開】) 80年代の前半に出てきたコンセプトで「山の中を散策するように楽しむ」という意味合いです。キャンプなどもブームですし、21世紀の今、自然との共生や触れ合いを楽しむための道具であってほしいなと。
【ケ】非日常を身近に、という感じでしょうか。CT125はたしかにヘビーデューティな作りですが、一方ではラグジュアリー感があってプライス的にも高めです。ずばり、ターゲット層は?
【開】 日本では40代から50代。大型バイクユーザーや生活に余裕が出てきたベテラン層をメインに考えました。さらに昔からCTを愛してくれている人々にとっても、21世紀のハンターカブとして説得力のある装備と性能を与えようと。高級バイクに乗っているユーザーにも満足していただけるように、それでいてカブならではの使い勝手の良さも考えて作り込みました。
【ケ】お金がかかっている部分は具体的にどの辺りでしょうか。
【開】C125ベースではありますが、マフラーやトップブリッジを新設したり、ヘッドパイプなども補強したりと変更を加えています。今回は走りの装備に力を入れ・キックスターターやタンデムステップ、ホイールの仕様などにもクオリティを追求しました。余談ですがマフラーのヒートガードも苦労しましたね。ライダーの邪魔じゃないところにしたいし車高も稼ぎたい。排気温を逃がしつつスリムに収められたと思います。
【ケ】一見すると似ている「クロスカブ110」との違いは?
【開】カブとしての扱いやすさや頑丈さは共通です。その上でクロスカブは優しさのあるデザインで軽量さや価格も含めて主にシティユースのエントリーモデル。としています。一方でCTはより本格的な旅やエキサイティングな走りを求める方へ。デザインもより尖がったアグレッシブな方向性としました。
【ケ】燃料タンクも大きくなり航続距離も伸びました。そういう使い勝手の面でいえばシフトインジケーターは欲しかった。
【開】燃料タンクが重くなるのそれに従いステーも補強しています。走る装備に力を入れて開発したため時計やインジケーターは見送りました。
【ケ】オフロードでの使い勝手も検討されたと思いますが、実際どれだけ過酷なテストをしたのでしょうか。開発がタイということで、何人まで乗れるとか(笑)
【開】国によって安全基準などは変わりません。ただ、タイでは都市部でもフラットダートや泥道も普通にあるため、そうした路面でも安心して走れて使い勝手も普通のコミューターを上回ることを考慮しました。
【ケ】でも、見た目はエンジンガードも付いて、丸太越えなどもできちゃいそう……。
【開】カブファミリーの中で最も高い地上高を確保していますが、そこを追求していくと「オフ車」になってしまいます。あくまでもカブという範疇の中で、林道を散策したり、ちょっとした段差を両足着きながら越えたりぐらいで。ブレーキもドラムではなくディスクを採用するなど、なるべく下側の部品が出っ張らないように工夫しています。
【ケ】開発拠点はタイと日本、どちらが主体でしょうか?
【開】CTに関してはタイで開発しています。大がかりなテストなどは一部日本で行ないましたが。生産に関しても同じく組み立てからアッセンブリーまでタイホンダで行ない、完成車を日本へ送っています。
【ケ】C125がベースと聞いていますが、エンジンを見ると外観が少し異なるようです。
【開】エンジンは現地で主流のWAVE125をベースにしています。エンジンカバーなどの外見は少し異なる部分はあると思いますが、基本的に中味は同じです。対してC125は静粛性や上質感を高めるためにヘリカルギヤを使ったり、シフトドラム支持にベアリングを入れたりと手を加えています。
【ケ】タイと日本の仕様の違いは?
【開】一番の違いはタンデムできるか否か。日本ではリヤキャリアのままでも認可されますが、タイの法規ではパッセンジャーシート付きでないと2人乗りはNGです。だからタイ仕様にはタンデムステップも付いていません。
【ケ】国内で乗るなら、やはり日本仕様ということですね!