エンジンに入っていくほうのガス交換:インテーク側の日本語は「吸気」。でも「給気」という書き方もある。どちらが正しいのだろうか。

いきなり人頼みで恐縮だが、macOSの入力辞書によれば、両者は以下のように意味が異なる。




▶︎ 吸気:気体を吸い込むこと。特に内燃機関で、燃料の混合気を気筒内に吸い込むこと。また、その気体。


▶︎ 給気:内部に空気を送り込むこと。




ソースがひとつなので断言は難しいが、少なくともこれらを眺める限りでは、エンジン側から見たガスの流れを吸気、ガス交換そのものを客観的に眺めたときに給気という字を充てるのが正しそうだ。

(FIGURE;RENAULT)

『モーターファン・イラストレーテッド』では、このところのエンジン技術トレンドである急速燃焼について、多くの紙幅を割いてきた。早く燃えると(あるいは速く燃やすと)結果として熱効率を高めることにつながる。急速燃焼のためのさまざまなテクノロジーを、作り手や考案者にお話をうかがい、その仕組みと効能について解説をしてきた。




しかし、主役である「そこを流れるガス」に焦点を当てたことがなかった。道を作るのはなぜか。形状を変えたのはなぜか。可変させるのはなぜか。ガスが淀みなく遅滞なく通過することを期待するためだ。

SIP(戦略的イノベーション創造プログラム)による筒内可視化/予想技術「火神:ひのか」は、ガスの気持ちになってエンジンを眺められる革新的なソフトウェアである。ポートの角度を寝かせたらどうなるか、ブランチ(ポートの集合部)を遠くすると何が起こるか、ピストン冠面はどのような形状がいいのか、吸排気タイミングを動かすとガスはどう振る舞うか——非常に高精度に検討することができる。




たとえば吸気ポートが開いた瞬間。バルブで閉じられている吸気ポートは、閉まる直前まで勢いよく流れ込んできた空気が出口をふさがれたことで行き場を失い、筒内に入りたくてうずうずしている。その状態でバルブが開くと、ピストンが下がって相対的に吸気ポート内より圧力が低い筒内に、ガスたちは勢いよく流れ込む——のだが、バルブシートまわりでは一瞬の逆流が生じる。勢い余って、なのだろう。こんな瞬間的な、微細な動きも見て取れるようになった。

余談だが、ターボチャージャーの日本語訳についても、大別してふたつの書き方がある。過給機と過給器だ。個人的には排気でタービンホイールを駆動して圧縮機を動かしているという装置=機械なので「過給機」の字を用いている。同様にラジエーターの類は「熱交換器」=機械(動力源から動力を受けて一定の運動を繰り返し、一定の仕事をする装置:macOSの辞書より)には概して当たらないため。




こんなふうに考えてみるのもなかなか楽しいものである。

情報提供元: MotorFan
記事名:「 吸気?それとも給気? エンジンの呼吸:モーターファン・イラストレーテッド175特集