TEXT●大音安弘(OTO Yasuhiro)
軽でも200万円が珍しくない昨今、クルマは高くなったと感じるのは当然のこと。しかし、その背景には、時代が求める先進機能の搭載や厳しさを増す環境対応などの理由もあり、単なる値上げともいえないのも事実だ。そこで改めて、内容、価格、所有体験など様々な角度からコスパの良いクルマを考えてみた。
スバルの新たなコンプリートカー「STIスポーツ」。そのエントリーモデルが、インプレッサSTIスポーツだ。インプレッサとしては、FFモデルでも約270万円とお高い。しかし、基本を共有するFFの2.0i-Lアイサイトとの価格差は、装備差を埋めるメーカーオプションを加えると、実質29万円ほど。専用チューニングダンパー、アクティブトルクベクタリング、18インチホイール、サイドスポイラー、アルミパッド付スポーツペダル、STI専用加飾の内外装などが追加される。内容を考えれば、超お得なのだ!
レヴォーグやBRZのSTIスポーツのような派手さはないが、STIチューンの足まわりが新世代プラットフォームSGPの魅力をしっかりと引き出した走りは想像するよりもずっとおもしろい。これは毎日乗れるスポーツカーだ。スバルとなると、4WD仕様が気になるだろうが、インプレッサはNAエンジン。ここはFFがベターだし、その軽快な走りは癖になる。FFのスポーツスバルなんて、原点回帰したみたいでおもしろい。
高くて良い輸入車は数あれど、ここまで高条件が揃ったモデルも珍しい。それがシトロエンC3だ。現行型は、シトロエンらしい個性をお洒落に表現。しかも着飾らないポップさが周囲にも受けが良い。だから乗るだけで“お洒落な人”や“趣味の良い人”なんて、まわりの評価も勝手に挙げてくれる(たぶん...)。また乗ってみても、不満なし。シートは、ソファのようにふかふかで乗り心地も抜群。遠乗りだって疲れないのだ。
1.2L直3ターボは、110ps仕様なので、新プジョー208よりもパワフル。だから、加速性能や高速巡行性能も申し分なし。足まわりも硬すぎず、柔らか過ぎずで走りやすい。まさに万能選手なのだ。マイチェンモデルで価格も少し上がったが、インフォテイメントシステムがAndroid AutoとApple CarPlay対応になったのはグー! 高価なクルマを買わなくても、輸入車の面白さが味わえる、高コスパなフレンチだ。
規制強化でクルマの未来は、厳しさを増すばかり。そんな今のうちに載っておけ!の代表的存在ともいえるGT-R。エントリーモデルのピュアエディションでさえ、約1080万円とお高い。しかし、世界の一流スポーツカーと張り合える国産スポーツの最高潮が、この値段なら、お買い得といえるのではないだろうか。しかもピュアエディションでも、走りの装備は、基本共通で、他のグレードとも大きな違いはない。装備差は快適機能や内装の仕様などが多いのだ。つまりあの特別なエンジンと高性能な4WDシステムによる走りの体験は、ピュアエディションでも十分に味わえるのだ。
GT-Rの良さは、所有の後にもある。いつの日か酒の席で語れる「昔、新車のRに乗っていた」の一言は、最高の肴になるだろう。もし、その場にポルシェ乗りやフェラーリ乗りがいたとしても、一目置かれるに違いない...。やはり、サーキットが育んだ「R」の称号は、偉大なのである。日本のクルマ好きにとっては、米みたいに体の奥底に刻み込まれた価値なのだ。
『プロが選ぶ最強のお買い得車』は毎日更新です!
予算に限りがある庶民にとって、車選びの際にこだわりたい要素が「コストパフォーマンス」。つまり、その車がお買い得かどうか、ということ。ただ安ければいいというわけではありません。ポイントは「値段と性能が釣り合っているか」。だから、価格が安い軽自動車だからコスパがいいとは限りませんし、1000万円以上のスーパーカーだってその価格に見合う機能や魅力があればお買い得と言えます。
というわけで、自動車評論家・業界関係者といった「クルマのプロ」たちに、コストパフォーマンスが高い「お買い得」な新車を3台ずつ、毎日選んでいただきます。明日の更新もお楽しみに。