かつて隆盛を誇ったAMGの「55」シリーズ。スクリューコンプレッサー:いわゆるスーパーチャージャーをバンク内に収めるV8エンジンである。

M113型は、1998年に先代であるM119エンジンを引き継ぎデビュー。機械的特徴は、同時期のV6・M112エンジンおよびV12・M137と基本を同じくしている(よって、M112も90度バンク)。




目を引くのは、SOHC3バルブのシリンダーヘッド。排気側のバルブが1本の構造となっている。M119も、後継のM273もDOHC4バルブなのに本機だけがこの構造なのは、当時の排ガス対策のため。バルブ表面積を小さくし冷間時の熱損失を抑える目論見で、排ガス温度の低下を最小限にとどめ、触媒の活性化を促していた。また、排気バルブの左右にプラグを配したデュアルイグニッションシステムを搭載。速く均一に燃やし、EGR導入時の失火を防いだ。




M155はAMGの手によるスペシャルバージョン。Vバンク内にスーパーチャージャーを備える。2004年のSLRマクラーレンに搭載されている。

M113シリーズの機械構造:図示するのはM155ユニット。電磁クラッチを持ち、インテークマニフォールドと一体とされたIHI製のリショルム・コンプレッサーが460kW/780Nmを発揮させる、モンスターユニット。左右には水冷式のインタークーラーを設置する。圧縮比は9.0だ。なお、M113は2ステージ可変長型の吸気マニフォールドを装着する。排気管は4-1の構造で、集合直後にメタル触媒を備える。

スーパーチャージャーの組み付け。M155は、文字どおりの手作り。AMGのアファルターバッハ工場で、ひとりの職工が一基のエンジンを組み上げる。写真は、M155最大の特徴であるスーパーチャージャーをVバンク内に収めるところ。組み付け前にはひとつひとつを動作確認し、クレーンを使って慎重にセットされるのが、当時の資料から見て取れる。

シリンダーヘッドの組み付け。SOHCだけに、コンパクトなシリンダーヘッド。バルブのクリアランス測定だろうか。

カムシャフトをジャーナルに収めるときは、割れ物を扱うかのごとくなされていた。カムギヤはあらかじめセットされ、ヘッドを装着したあとにカムと締結される。

最後に10本のボルトを規定トルクで一気に締め、セットを終える。

■ M113


気筒配列 V型8気筒


排気量 5439cc


内径×行程 97.0×92.0mm


圧縮比 11.0


最高出力 265kW/5750rpm


最大トルク 510Nm/4000rpm


給気方式 スーパーチャージャー


カム配置 SOHC


吸気弁/排気弁数 2/1


バルブ駆動方式 ロッカーアーム


燃料噴射方式 PFI


VVT/VVL ×/×


(ハイエース/レジアスエース)
情報提供元: MotorFan
記事名:「 内燃機関超基礎講座 | AMG 55/SLRマクラーレンのスーパーチャージドV8[M113/M155]