プジョーの基幹モデル、308が本国でフルモデルチェンジを行った。先代308は2014年の欧州カー・オブ・ザ・イヤーを受賞するなど高い評価を受けていたが、新型はどうだろうか。新旧比較を交えながら、新型308の特徴を押さえていこう。

8年ぶりのモデルチェンジ。プラグインハイブリッドが新登場

新型プジョー308

早速、ボディサイズからチェックしてみよう。




新型プジョー308は、全長4367mm×全幅1852mm×全高1441mm、ホイールベース2675mm。先代は全長4275mm×全幅1805mm×全高1470mm、ホイールベース2620mm。新型は海外仕様、先代は日本仕様の値(5mm刻み)なので厳密な比較がしづらいところがあるが、注目はホイールベースが55mm延長され、後席スペースの拡大を実現したこと。また、全長は92mm、全幅も47mm大きくなっており、新型では唯一、全高だけが29mm低くなっている。




先代308が2013年に登場した際は、先々代よりも全長が55mm、全幅が15mm、全高が45mmほど小さくなったのが話題の一つだった。新型308ではコンパクト化が図られた先代の分を取り戻すかのように(?)、ボディが一回り大きくなったというわけだ。




ちなみに、新型308のライバルとなるフォルクスワーゲン・ゴルフ8のボディサイズはどうだろうか。こちらは全長4284mm×全幅1789mm×全高1456mm、ホイールベース2636mm(欧州仕様値)。ゴルフはモデルを重ねるごとに全長と全幅が大きくなっていったが、ゴルフ8では先代のゴルフ7と同等のボディサイズで登場した。




先代同士で比較すると、308とゴルフはほぼ同じサイズだった。それに対して、新型では308の方がゴルフ8よりも明らかに大きく、特に全幅の63mmも308の方が広いのが際立っている。

新型プジョー308:全長4367mm×全幅1852mm×全高1441mm、ホイールベース2675mm

先代プジョー308:全長4275mm×全幅1805mm×全高1470mm、ホイールベース2620mm(写真はマイナーチェンジ前のモデル)

フォルクスワーゲン・ゴルフ8:全長4284mm×全幅1789mm×全高1456mm、ホイールベース2636mm

プラットフォームはどうだろうか。ジョー(シトロエン、DS、オペル、ヴォクソールも)の車体は、「EMP2」と「CMP」の2種類に集約されることが発表されているが、新型308は先代から引き続き、EMP2(Effiicient Modular Platoform)を採用する。2013年に登場したC〜Dセグメント用のモジュラー構造のプラットフォームで、フラッグシップセダンの508やMPVの3008、50008などで幅広く使われている。




ちなみに、2019年にモデルチェンジした弟分の208はCMP(Common Modular Platform)を採用している。こちらはEPM2よりもコンパクトな車両(B〜Cセグメント車)に向けて開発された新世代のもの。




EMP2は、ガソリンエンジン、ディーゼルエンジン、ガソリンエンジンのプラグインハイブリッドに対応するが、CMPのようにフルEVには対応していないようだ。ということは、新型308のフルEVは登場しないということなのだろう。

新型プジョー308のプラットフォームはEMP2。ガソリン、ディーゼル、プラグインハイブリッド(写真)に対応する。

プラットフォームは継承するが、新型308のエクステリアデザインは大きく変わった。508から始まったプジョーの最新デザイントレンドに則ったもので、508と208を足して2で割ったような印象を受ける。ボンネット先端には車名のバッジがつくのは508以来のセオリー。牙のようなデイタイムランニングライトも健在だ。




208では3本爪をモチーフにしたLEDヘッドライトが特徴だったが、新型308では未採用。ヘッドライトまわりの処理は、508に近い印象だ。上級グレードではマトリックスLEDテクノロジーにより、照射部分を的確にコントロールしてナイトドライブをサポートしてくれる。




また、新型ではナンバープレートがバンパーの最下端に移動した。代わりにフロントグリルの中央に鎮座するのは、プジョーの新エンブレムだ。2月に発表されたばかりのもので、ライオンの顔が強調された精悍なものである。この新エンブレムはテールゲートや左右のフロントフェンダーにもあしらわれており、プジョーの新時代が到来したことを見るものにアピールする。

新型プジョー308のフロントビュー。

新型308は、牙のようなデイタイムランニングライトを採用する。
新型308が採用する新しいプジョーのエンブレム。裏側にはレーダーが隠れている。
先代プジョー308のフロントビュー。2017年にマイナーチェンジを行い、フロントグリルなどのデザインが変更された。

サイドビューは、新旧で共通性が多く感じられる。先々代の308はスペースユーティリティを視覚的にアピールするワンモーションフォルムが特徴だったが、先代では一変。Aピラーの根元を後ろに引き、ボンネットの存在を明確にするトラディショナルな2ボックス・スタイルへと回帰した。新型もその路線を踏襲しているが、全長とホイールベースが長くなったことで、伸びやかさが増した印象を受ける。全高が低くなったことも、そう感じさせる要因の一つだろう。サイドウインドウを比べると新型308の方が天地幅が狭く、スポーティさを感じさせる。




新旧308では、サイドのキャラクターラインの意匠も異なる。先代はドア上部、ドアノブ付近、ドア下端の3本のラインが直線的に伸びていた。一方、新型はより前後のフェンダーを強調するダイナミックなラインとなっている。




細かいところでは、ルーフアンテナも変更された。先代はオーソドックスなポールタイプのアンテナだったが、新型ではシャークフィンタイプとなっている。

リヤビューも新型308は最近のプジョーのデザイントレンド通り、左右いっぱいにブラックのバンドが走る。テールライトは3本爪をモチーフにしているが、斜めに光るのが新型308らしいところだ。先代と比べると7年分の時の流れを確かに感じさせる。




ちなみに、Cd値は0.28。ハッチバックとしては優秀な値といえるが、先代も同様だった。




新型308のカラーバリエーションはオリヴィーングリーン(オリヴィーンとは緑色をしたカンラン石のこと)、ヴァーティゴブルー、エリクサーレッド、パールホワイト、アイスホワイト、アルトンスグレー、ペルラネラブラックの7色が揃う。

新型プジョー308のリヤビュー

208との共通性も感じられる新型308の後ろ姿。左右をブラックベルトが繋いでいるのが特徴だ。
テールライトは斜めに光る3本の帯が目を引く。
先代プジョー308のリヤビュー

インパネは先代308と同様、i-コクピットを採用する。楕円のステアリングの上側からメーターを見るプジョーお得意のレイアウトだ。メーターは10インチの液晶タイプで、重要なデータは一層目、それに準じるデータは二層目といった具合に3次元表示を行う。先代はデビュー当初はアナログメーターで、マイナーチェンジ時にデジタル化されたが、3D表示は未採用だった。




新型で特筆すべきは、ダッシュボード上部に空調の吹き出し口を設けた「ハイヴェント構造」を採用していること。最近のクルマは大型ディスプレイをダッシュ中央の最上部に配置することが多く、空調の吹き出し口はその下側に追いやられることが多い。フォルクスワーゲン・ゴルフも7代目から最新の8代目へのモデルチェンジではそのような変遷を辿った。




先代308では、ダッシュ中央に7インチ・ディスプレイを配置し、その左右に空調の吹き出し口を設けていた。新型ではディスプレイが10インチに大型化した一方で、空調の吹き出し口はディスプレイの上部に設けているのだ。こちらのレイアウトの方が、乗員に直接空調の風があたることがなく、快適な室内空間を実現できるのではないかと思われる。

新型プジョー308のインパネ

先代プジョー308のインパネ

中央のディスプレイはもちろんタッチ操作が可能で、3本指で押してアプリケーションリストを表示したりと、タブレットライクな使い方ができるようになっている。




新型308では、ディスプレイの下に「i-トグル」というタッチボタンを設けている。エアコンやオーディオ、アプリケーションの起動などユーザーの好みに応じてボタンの機能を設定できるという。MacBook Proに搭載されているタッチバーを思い出させる。その下には、物理キーも用意されており、デフロスターのオン/オフや内気循環/外気導入の切り替えなどが行えるようだ。すべてをタッチ操作に集約してしまわないところにプジョーの見識の深さがうかがえる。




新型308では音声操作が可能なインフォテインメントシステムも搭載されている。起動コマンドは、「OK PEUGEOT」だ。また、スマートフォンのミラーリング機能はワイヤレス化されており、Bluetoothで2台を同時に接続可能となった点も便利そう。




センターコンソール周りも大変身を遂げた。先代では機械式だったシフトセレクターは電子式となり、レバーから小さなノブへと姿を変えた。P(パーキング)とB(ブレーキ)はボタンで選択する。その手前側にはドライブモードセレクターと、パーキングアシストボタンが備わる。また、奥側にはワイヤレス充電が可能なスマホの置き場所が設けられている。




新型308の室内には、LEDのアンビエントライトも備わる。8色から選択可能で、ダッシュボードやドアパネルを艶かしく照らしてくれる。また、車内に導入される空気を常時監視するAQS(Air Quality System)も新型308の新装備だ。上級グレードでは排気ガスや微粒子を濾過する空気処理システム(クリーンキャビン)も搭載される。

新型308の液晶メーター。3Dで重要な情報を手前側に表示する。
新型308のセンターディスプレイ。画面下にはi-トグルと呼ばれるタッチスイッチが備わる。
シフト操作は小さなノブで行う。操作系がコンパクトになったおかげで、センターコンソールの収納部が拡大。ドリンクホルダーは1→2名分に増加し、シャッター付きに。
センターコンソール奥には、スマホの充電トレーが備わる。置くだけで充電が可能なワイヤレス式だ。

新型308の室内では、後席の居住性が向上したことも注目だ。前述の通り、ホイールベースが55mm増えたことで、後席膝まわりの余裕が増えている。




ラゲッジルームは、新型が通常時で412L(プラグインハイブリッドは361L)、後席格納時で1323L。先代は通常時で470L、後席格納時で1309Lだった。新型は通常時の容量がかなり減っているが、これは測定方法の違いなどの要因も考えられる。

新型308はホイールベースの延長に伴い、後席の膝まわり空間が拡大した。荷室容量は、ガソリン&ディーゼル車が通常時412L、プラグインハイブリッド車が同361L。

新型308のパワートレーンは多彩だ。1.2Lガソリンターボ、1.5Lディーゼルターボ、1.6Lプラグインハイブリッド、計7種類がそろっている。

・1.2L 3気筒ガソリンターボ(110bhp/205Nm)+6MT


・1.2L 3気筒ガソリンターボ(130bhp/230Nm)+6MT


・1.2L 3気筒ガソリンターボ(130bhp/230Nm)+8AT


・1.5L 4気筒ディーゼルターボ(130bhp/300Nm)+6MT


・1.5L 4気筒ディーゼルターボ(130bhp/300Nm)+8AT


・1.6L 4気筒ガソリンターボ(150bhp/250Nm)+8AT+プラグインハイブリッド


・1.6L 4気筒ガソリンターボ(180bhp/250Nm)+8AT+プラグインハイブリッド





プラグインハイブリッドは110bhp&320Nmのモーターと、12.4kWhのバッテリーを搭載。システム最高出力は180bhpと225bhpで、一充電あたりの走行距離は59〜60kmとなっている(グレードにより異なる)。




先代308(日本仕様)の現在のパワートレーンは以下の通り。プラグインハイブリッドは未搭載だ。

・1.2L 3気筒ガソリンターボ(130ps/230Nm)+8AT


・1.5L 4気筒ディーゼルターボ(130ps/300Nm)+8AT





1.2L 3気筒ガソリンターボと1.5L 4気筒ディーゼルターボのスペックを新旧の308で見比べてみると同一。つまり、新型308の1.2L 3気筒ガソリンターボはEB2型、1.5L 4気筒ディーゼルターボはDV5型で、パワートレーンはキャリーオーバーと考えてよさそうだ。




果たして、新型308の日本仕様ではどのパワートレーンが導入されることとなるのだろうか。

こちらは先代308の1.2L直列3気筒ガソリンターボ。新型も同じエンジンを搭載する。

新型は308で初めてプラグインハイブリッドをラインナップ。一充電あたりの走行距離は59km(WLTCモード)。

先進運転支援システムも、最新モデルらしく新型308ではテンコ盛りだ。ストップ&ゴー機能付きのACC(先代は作動速度が30〜180km/hだった)は、レーンキーピングアシストも備わっており、さらに制限速度の標識に応じてドライバーに速度調整を促したり、カーブの曲率に応じて速度を最適化してくれる。そのほか、7〜140km/hで作動する自動緊急ブレーキ(新型は夜間の歩行者・自転車も検知する)やドライバー・アテンション・アラート(ステアリングホイールの動きを検知してドライバーの注意力を検知・警告する)などが搭載される。

先進運転支援システムの操作ボタンは、ステアリング左側に集約されている。

208が大ヒットとなっているプジョーだが、新型308もその波に乗れるだろうか。2021年後半にヨーロッパで販売が始まる予定だが、日本上陸を楽しみに待ちたい。

情報提供元: MotorFan
記事名:「 【新型プジョー308・新旧比較】ボディサイズは? 室内は? エンジンは? 顔が激変の新型を先代と比べてみた