コロナ禍が猛威を振るう昨今、プライベートな空間を保ちながら自由に移動できるマイカーの良さが見直されつつある。




そこで、クルマの運転のブランクが大きいペーパードライバーや高齢者、あるいはこの機会に運転免許を取得した初心者にオススメなのが、安価かつ狭い道でも扱いやすい軽自動車やコンパクトカーだ。しかし、肝心の帰省や旅行でも、家族みんなが快適に過ごせるのだろうか?




「最新の軽&コンパクトはファーストカーとして使えるか?」と題したこの企画、4台目はダイハツの軽クロスオーバーSUV「タフト」。NA(自然吸気)エンジンを搭載する上級グレード「G」のFF車で、高速道路約300km、一般道約200kmのルートを走行した。




REPORT●遠藤正賢(ENDO Masakatsu)


PHOTO●遠藤正賢、ダイハツ工業、スズキ

初代スズキ・ハスラー

「やっとスズキ・ハスラーのライバルが現れたか」




2020年6月にダイハツ・タフトが発売された時、こう思ったクルマ好きや業界関係者がどれほどいるか定かではない。ともあれ、ハスラーの初代モデルは2013年12年にデビューしたが、その後6年半の長きにわたり、軽クロスオーバーSUVのカテゴリーはハスラーの寡占状態にあった。

ダイハツ・キャストアクティバ

「独占」ではなく敢えて「寡占」と表現したのは、ダイハツがキャストアクティバという軽クロスオーバーSUVを2015年9月に発売していたからに他ならない。だが、キャストにアクティバ・スタイル・スポーツの3タイプを設定したことで各タイプの存在感が薄れ、キャストスポーツともども2020年3月に生産を終了している。

【ダイハツ・タフトG(FF)】全長×全幅×全高:3395×1475×1630mm ホイールベース:2460mm 最低地上高:190mm アプローチアングル:27° デパーチャーアングル:58°

こうしてキャストアクティバの実質的な後継車として生を受けたタフトだが、実車を見て触れて乗るほどに、ハスラーともキャストアクティバとも大きく異なるモデルとして作られたことが見えてくる。

2019年12月にデビューした現行二代目スズキ・ハスラー

エクステリアは、ハスラーとキャストアクティバがスクエアなフォルムに丸基調のディテールを用いることで、マッシブさの中にレトロ感と可愛らしさを同居させているのに対し、タフトはノーズ先端を除いてフォルムもディテールもスクエアで力強い、SUVらしさを最大限強調したものとなっている。

テスト車両は165/65R15 81Sのヨコハマ・ブルーアースFE AE30を装着

また、タイヤサイズがハスラーとキャストアクティバが165/60R15なのに対しタフトは165/65R15と一回り大きく、最低地上高も前二車の180mmに対し190mmとなっているのも、見た目の印象に大きく影響している。

スクエアな造形にオレンジの加飾パネルをアクセントとして加えた運転席まわり。エンジンフードの両端が運転席から見えるため車両感覚は掴みやすい

インテリアも同様に、タフトはスクエア基調のゴツゴツしたデザインと触感で、加飾パネルもオレンジのアルマイト調と、若い男性が好むであろうテイストでまとめられている。しかし、その質感はお世辞にも高いとは言えず、デザインそのものも子供臭いというのが率直な印象だ。

センターコンソール上に配置されたEPBとオートブレーキホールド機能のON/OFFスイッチ
問題のセンターコンソール。パネルの凸部がシート座面のやや上、膝の位置にあるのが写真からも見て取れる

一方、ダイハツ車として初めて全車標準装備されたEPB(電動パーキングブレーキ)およびオートブレーキホールド機能を含め、各スイッチ類は直感的に操作しやすい。だがセンターコンソールの形状が非常によろしくないのは、同じDNGAプラットフォームを用いるロッキーと同じで、パネルの凸部が旋回時に膝の急所に当たりやすく、その時の不快感は言語に絶する。ダイハツは両車とも早急に設計を見直してほしい。

ライトグレーの表皮で明るい印象のリヤシート
黒を基調にオレンジのステッチが入れられたフロントシート
後席を倒しフレキシブルボードを上段に設置すればフラットで汚れに強い荷室ができる。奥行き×幅×高さは36~124×86×77cm(筆者実測)
フレキシブルボードを立てかければ奥行き×幅×高さ=25×87×15cm(筆者実測)のサブトランクが生まれる

なおタフトは前席のシート・トリムを黒基調、後席以降をライトグレー基調に色を分け、居住空間とラゲッジスペースの境界を視覚的に表現している。後席は背もたれが見た目にも小さく、さらに倒せばフラットな荷室フロアが得られることからも、乗員の掛け心地は割り切られているだろうと推測した。




だが実際に座ってみると、座面が大きく厚みがあり、さらにヒップポイントの沈み込みが大きい形状で背もたれの小ささを補っているため、望外に快適。身長176cm・座高90cmの筆者が座ってもヘッドクリアランスは約10cm、ニークリアランスは25cmほどあり、広さも充分だ。逆に前席は、背もたれの分割位置の窪みが大きいため肩と腰の間がやや浮いてしまい、フィット感が悪く感じられた。

スカイフィールトップは全車ともスーパーUV&IRカットガラス仕様。サンシェードも備わる

そして、現行モデルの軽自動車としては唯一となる大型ガラスルーフ「スカイフィールトップ」を設定し全車に装着したのも、タフトが持つ大きな特徴の一つ。この装備のおかげで確かに頭上の見晴らしは良く、同乗者には大いに喜ばれそうではあるが、ドライバーがその恩恵に与るのは信号待ちの時程度だ。




オープンカーを総計10年以上所有する筆者の主観を敢えて言えば、車重は重く、重心は高く、ヘッドクリアランスは狭く、価格は高くなるうえ、肝心の開放感もむしろ減るという五重苦を背負わされる、この手のガラスルーフとサンルーフはタダでも欲しくない装備の最右翼。特にタフトはインパネ上端とサイドウィンドウの下端が高く、室内の閉塞感が強い傾向にあるため、ぜひレスオプション設定をしてほしいと願わずにはいられない。

フロントサスペンションはストラット式。最小回転半径は4.8m
FF車のリヤサスペンションはトーションビーム式。4WD車は3リンク式

では、実際に走ってみるとどうか。サスペンションは同じ軽自動車かつDNGAプラットフォームを用いるタントに対し明確に硬く、大きな凹凸を乗り越えた際は重い突き上げを乗員に伝えてくる。だが細かな凹凸はキレイにいなし、車体の姿勢変化も素早く収めてくれるため、路面や速度域を問わず不快感は思いの外少なかった。




だが、タフトが最も得意とするのは、コーナーが連続する高速道路やワインディングだろう。今回はダイハツ東京高島平センターを起点として首都高速道路、東京湾アクアライン、館山自動車道を経由して千葉・館山に至り、房総半島を半周するルートを走行したが、首都高・都心環状線や房総半島の一般道では軽快にレスポンス良くドライバーの意思に答えてくれた。

KF-VE7型直3NAエンジンと従来型のCVTを搭載

なお、タフトはタントやロッキーと異なり、高速域でベルトと遊星ギヤを併用することにより変速比幅を拡大した新世代の「D-CVT」が組み合わされるのは、KF-VET2型0.66L直列3気筒ターボエンジンのみ。KF-VE7型NA(自然吸気)エンジンには従来型のCVTが与えられているが、変速制御は非常に巧みで、NAの軽自動車とは思えない鋭い加速を見せてくれる。ただし加速時のノイズはタントのNA車よりも盛大で、この点にこそ世代の差を感じずにはいられなかった。

タフトが初採用となった新設計のスマートアシスト用ステレオカメラ
ACCの操作スイッチには凹凸が新たに設けられ操作性が改善された

ADAS「スマートアシスト」は、このタフトからステレオカメラが3年半ぶりに一新され、視野角が拡大し夜間歩行者検知に対応するなど、タントおよびロッキーとはハード・ソフトとも別物に生まれ変わった。……はずなのだが、全車速追従機能付きACC(アダプティブクルーズコントロール)とLKC(レーンキープコントロール)の制御は全くと言っていいほど進化していない。




ACCは加減速とも制御がラフで他車の認知が遅く、LKCがほぼ仕事しない傾向はタント、ロッキーと何ら変わらず。また緩いコーナーが明確に苦手で、隣の車線のクルマを誤認しやすい一方で同一車線のクルマを認知するのは遅く、渋滞末尾に遭遇してもなかなか減速しないため、自分でブレーキを踏まざるを得ない状況に陥ったこともあった。




なお、約500km走行後のトータル燃費は22.4km/L。60km/h前後で走行する距離・時間が長かったとはいえ、WLTC総合モード燃費20.5km/Lを大きく凌ぎ、郊外モード燃費22.4km/hと全く同値となったのは、実際に帰省やロングドライブ、アウトドアレジャーに出掛ける際も心強いことだろう。




こうして見ると、タフトは最大のライバルたるハスラーとは見事に好対照である一方、同じプラットフォームのタント、ロッキーとは長所も短所も瓜二つ。設計の根幹に関わる部分の改良が短期間では進みにくいという、多くの車種で設計思想を共通化する一括企画開発の思わぬ弱点が露呈していた。




長距離長時間運転した後の疲労は少なく、後席の住人はより安楽なシートと「スカイフィールトップ」のおかげでさらに快適に過ごせるため、老若男女を問わずファーストカーとして充分に使えることだろう。だがそれでも、「スマートアシスト」の出来の悪さは看過できない。より過酷な状況で走り続けざるを得ず、疲労困憊になったドライバーのミスをフォローするためのADASが、その役目を果たしていないどころか、使うとかえって危険でさえあるのは、頭の片隅に留めておくべきだろう。

■ダイハツ・タフトG(FF)


全長×全幅×全高:3395×1475×1630mm


ホイールベース:2460mm


車両重量:900kg


エンジン形式:直列3気筒DOHC


総排気量:658cc


最高出力:38kW(52ps)/6900rpm


最大トルク:60Nm/3600rpm


トランスミッション:CVT


サスペンション形式 前/後:マクファーソンストラット/トーションビーム


ブレーキ 前/後:ベンチレーテッドディスク/ドラム


タイヤサイズ:165/65R15 81S


乗車定員:4名


WLTCモード燃費:20.5km/L


市街地モード燃費:17.6km/L


郊外モード燃費:22.4km/L


高速道路モード燃費:20.8km/L


車両価格:148万5000円
ダイハツ・タフトG

情報提供元: MotorFan
記事名:「 ダイハツ・タフトG | タント&ロッキーとは長所も短所も瓜二つ。設計の根幹に関わる部分の改良が短期間では進みにくい一括企画開発の弱点が露呈