TEXT●伊藤英里(ITO Eri)
PHOTO●APRILIA、Ducati、Honda、KTM/Philip Platzer、MICHELIN、PETRONAS SRT、Pramac Racing、SUZUKI、YAMAHA
2021年シーズン、MotoGPに参戦するのは11チーム22名のライダー。スズキ、ヤマハ、ホンダ、ドゥカティ、KTM、アプリリアという6メーカーが参戦する状況にも変わりはない。
2020年シーズンMotoGPチャンピオンに輝いたジョアン・ミルを擁するスズキ(Team SUZUKI ECSTAR)。昨年はスズキとして20年ぶりにライダータイトルを獲得し、Team SUZUKI ECSTARとしてもチームタイトルを獲得した。
ライダーのラインアップに変わりはなく、ミルとアレックス・リンスという布陣で挑む。ミルはMotoGPクラス参戦3年目、リンスは5年目。ともにMotoGPクラスに昇格したそのシーズンから同チームで戦ってきた生粋のスズキライダーだ。
昨年この二人が挙げた勝利数は、ミルとリンスがそれぞれ1勝ずつで合計2勝。優勝数としては少ないと思えるかもしれないが、ミルは7度もの表彰台を獲得しており、これは2020年シーズン中の最多表彰台獲得回数なのである。安定した結果を残す実力を示したと言える。今季、ミルとしてはディフェンディングチャンピオンとして迎える初のシーズンであり、リンスとしては“もう一人のスズキライダーチャンピオン”を目指し挑むシーズンだ。
ヤマハ(Monster Energy Yamaha MotoGP)はマーベリック・ビニャーレスが続投。チームメイトはファビオ・クアルタラロ。2020年まで在籍していたヤマハのサテライトチームであるPetronas Yamaha SRTからファクトリーチームに移籍した。
2020年にはビニャーレスが1勝、クアルタラロが3勝を挙げたが、エンジンのバルブ問題発覚やマシントラブルも重なり、安定した結果を残すことができなかった。とは言え、その実力は間違いなく、新たな状況で挑むシーズンとなる。
ファクトリーチームにとって新たな状況、というのはバレンティーノ・ロッシの離脱も含まれている。42歳という年齢を重ねてなおMotoGPを戦うロッシは、2020年をもってヤマハのファクトリーチームを離れ、2021年はPetronas Yamaha SRTで現役を続行。19年ぶりにサテライトチームからシーズンを戦うのである。今季、ロッシにはファクトリースペックのマシンやサポートが提供されるということだが、ファクトリーチーム在籍時とまったく同じ状況とはいかないはず。ロッシ自身としても、ヤマハとしても、一つの節目のシーズンとなるだろう。
2020年にコンストラクターズランキング5位、Repsol Honda Teamとしてはランキング9位と、未勝利に終わり屈辱のシーズンを送ったホンダ。ファクトリーチームのRepsol Honda Teamでマルク・マルケスが継続参戦し、もう一つのピットボックスにはKTMから移籍のポル・エスパルガロが座ることになった。
これまでにMotoGPクラスで6度のチャンピオンを獲得してきたマルケスは、昨今のMotoGPにおいてその強さと速さで王者として君臨し続けてきた存在だった。しかし2020年シーズンは初戦スペインGP決勝レース中の転倒により、右上腕骨を骨折。復帰することなくシーズンを終えた。今季は3月上旬のカタール公式テストへの参加をも見合わせたが、ついに先日、スペインのカタルーニャ・サーキットでプライベートテストを行い、市販車RC213V-Sを走らせた。開幕戦、第2戦でのレース復帰を目指すという。ホンダ陣営としてはマルケスの復帰が一つのカギとなるだろう。
また、MotoGPクラスに参戦する唯一の日本人ライダー、中上貴晶(LCR Honda IDEMITSU)がホンダのサテライトチームからクラス4年目のシーズンを迎える。昨年はポールポジションを獲得し、自己ベストリザルト4位で2度フィニッシュ。表彰台に迫るレースを展開し、大きな躍進を見せた。2018年にMotoGPクラスにステップアップを果たして以来、中上は1年前のマシンを走らせてきたが、2021年からは最新型マシンが供給されることになっている。初優勝、初表彰台獲得への期待は膨らむばかりだ。
ドゥカティ(Ducati Lenovo Team)はライダーラインアップを一新。ともに2020年までサテライトチームで走っていたジャック・ミラーとフランセスコ・バニャイアという若いライダー二人が新たなファクトリーライダーとなった。
2020年、ミラーは未勝利ながら、合計4度もの表彰台を獲得しているライダーだ。カタール公式テストでは、5日間の総合トップタイムをマーク。非公式ながら、これまでのオールタイムラップ・レコードを上回るタイムを記録した。ミラーはMoto3クラス参戦ののち、Moto2クラスを経ずに一足飛びにMotoGPクラスに昇格を果たしたライダーで、26歳ながらすでにMotoGPクラス参戦7年目。今季はチャンピオン候補の一角に名乗りを上げるライダーとなりそうだ。
KTM(Red Bull KTM Factory Racing)もまた、若いライダー二人の布陣を敷く。ブラッド・ビンダーが継続参戦、サテライトチームからミゲール・オリベイラが加わった。ビンダーはMotoGPクラス参戦2年目、オリベイラは3年目というみずみずしい顔ぶれだ。ちなみにビンダーとオリベイラがタッグを組むのはこれが初めてではなく、Moto3クラスとMoto2クラスでもチームメイトだった時期がある。
2017年からMotoGPクラスへの参戦をスタートさせたKTMは、2020年にビンダーによって初優勝を挙げ、さらにオリベイラが2勝を挙げた。ただし2021年、KTMにとって変わる点はいくつかある。2020年の成績により、これまで適用されてきたコンセッションというエンジンの使用可能基数や開発などについての優遇措置を外れた。サテライトチーム(Tech 3 KTM Factory Racing)にはダニロ・ペトルッチというベテランライダーが加入したが、2017年からKTMに在籍してきたポル・エスパルガロは去った。その実力を押し上げた2020年を経て、今季はKTMにとって新たな挑戦のシーズンとなるだろう。
そしてアプリリア(Aprilia Racing Team Gresini)は、MotoGPクラスで10年以上戦ってきたベテランライダー、アレイシ・エスパルガロが引き続き参戦。チームメイトは2020年シーズン終盤の3戦を戦ったロレンツォ・サバドーリである。
アプリリアとしては今季、唯一コンセッションの適用を受けるメーカーであり、エンジンのアップデート可能などのアドバンテージを持っている。カタール公式テストでは、A.エスパルガロが最終日までトップ6以内のポジションにつけて終えた。今季は上位争いに食い込むレースを見せるかもしれない。
さて、2021年からMotoGPクラスに参戦するルーキー勢を紹介しよう。まず、ドゥカティのサテライトチーム、Pramac Racingから参戦するのがホルヘ・マルティン。23歳のスペイン人ライダーで、2018年にはMoto3クラスでチャンピオンを獲得している。
そして同じくドゥカティのサテライトチーム、Avintia Esponsorama Racingからは2020年Moto2クラスチャンピオンのエネア・バスティアニーニが、SKY VR46 Avintia Teamからはロッシの異父弟ルカ・マリーニがエントリー。バスティアニーニ、マリーニともに、23歳のイタリア人ライダーだ。
2021年シーズンMotoGPは3月26日から28日、カタールのロサイル・インターナショナル・サーキットで開幕戦カタールGPを迎える。お気に入りのライダーを見つけて声援を送るなど、様々な形でMotoGPというモータースポーツを楽しんでみてはいかがだろうか。