TEXT●菰田潔(KOMODA Kiyoshi)
コロナ禍のため2020年は行けなかったが、それまでは毎年ニュルブルクリンク詣でをし、トレーニングカーである最新モデルのBMW M4クーペをドライブした。
エスケープゾーンが狭く、路面ミューが低く、難しいコースをハイスピードで駆け抜けるとき、M4クーペはこの北コースで熟成したのだということを実感する。日本で乗るとサイズ的にM2クーペが良く感じるが、ニュルの北コースではM4クーペの方がいい。1日ニュルを走ったあと、心の底から楽しかった!と言える。
992型のポルシェ911に初めて乗ったのは袖ヶ浦フォレストレースウェイ(千葉県)。まだ広報車がない時期だったので、日本ではかなり早いタイミングだった。
ピットロードを走り始めたとき30km/hでもボディ剛性の高さを感じるほど、しっかり感のレベルが違った。これはサーキットを攻めていったときにも良い効果を発揮し、限界付近でもドライバーの期待する動きをしてくれるのだ。
良いスポーツカーの基本はいかにドライバーの期待どおりに走ってくれるかだと思う。992型の911はスピードを問わず運転の楽しさをドライバーに与え続けてくれるクルマだ。
これはレーシングカー、それもフォーミュラカーである。イギリスのマーチというレーシングカーメーカーの1974年モデルのF3だから、ネーミングが743になる。このマシンで1975年から2年間、日本のJF1300というカテゴリーのレースにゼッケン17で参加した。最初は無限エンジンを搭載していたが、予算の都合で途中から三菱エンジンに換装した。
初めて乗ったときは、富士スピードウェイのピットロードから加速していくだけで恐ろしさを覚えた。やはり無駄なものが一切ないレーシングカーの加速は桁違いだ。というものの慣れてくるとモアパワーを期待するから、人間の適応能力はすごいと思う。
何が楽しかったのかというとダイレクト感だ。サスペンションにもステアリング系にもゴムブッシュというものがないから、すべてがダイレクトに反応する。遊びがないハンドルで自在に操れるようになったときには、ドライビングの楽しさはピークに達する。
とは言っても筆者はこのマシンによってレーシングドライバーとしての才能がないことも自覚することになったのだ。楽しいと感じているうちはレーシングカーとしてはまだすべてを引き出してないのだ。