かつてはタイヤのテストドライバーも務めるなど、ドライビングテクニックもピカイチな菰田潔さんが「運転が楽しいクルマ」の第1位は、なんとマーチ743。フォーミュラカーならではのダイレクト感はえも言われぬ楽しさを味わえたが、同時にレーシングドライバーとしての限界を悟ることにもなったという。




TEXT●菰田潔(KOMODA Kiyoshi)

第3位:BMW M4(先代モデル)「ニュル北コースで鍛えられたことを実感できる」

コロナ禍のため2020年は行けなかったが、それまでは毎年ニュルブルクリンク詣でをし、トレーニングカーである最新モデルのBMW M4クーペをドライブした。




エスケープゾーンが狭く、路面ミューが低く、難しいコースをハイスピードで駆け抜けるとき、M4クーペはこの北コースで熟成したのだということを実感する。日本で乗るとサイズ的にM2クーペが良く感じるが、ニュルの北コースではM4クーペの方がいい。1日ニュルを走ったあと、心の底から楽しかった!と言える。

写真は2014-2020年まで販売されていた先代モデルのBMW M4。3Lの直6ツインターボは431psを発生。

第2位:ポルシェ911(992型)「限界域でもドライバーの期待どおりに走ってくれる」

992型のポルシェ911に初めて乗ったのは袖ヶ浦フォレストレースウェイ(千葉県)。まだ広報車がない時期だったので、日本ではかなり早いタイミングだった。




ピットロードを走り始めたとき30km/hでもボディ剛性の高さを感じるほど、しっかり感のレベルが違った。これはサーキットを攻めていったときにも良い効果を発揮し、限界付近でもドライバーの期待する動きをしてくれるのだ。




良いスポーツカーの基本はいかにドライバーの期待どおりに走ってくれるかだと思う。992型の911はスピードを問わず運転の楽しさをドライバーに与え続けてくれるクルマだ。

2018年に登場した、8代目となるポルシェ911が992型だ。水平対向3Lターボの最高出力は、ベーシックな「カレラ」で385ps、高性能モデル「カレラS」の場合450psとなる。

第1位:マーチ743「ゴムブッシュがないからすべてがダイレクト!」

これはレーシングカー、それもフォーミュラカーである。イギリスのマーチというレーシングカーメーカーの1974年モデルのF3だから、ネーミングが743になる。このマシンで1975年から2年間、日本のJF1300というカテゴリーのレースにゼッケン17で参加した。最初は無限エンジンを搭載していたが、予算の都合で途中から三菱エンジンに換装した。




初めて乗ったときは、富士スピードウェイのピットロードから加速していくだけで恐ろしさを覚えた。やはり無駄なものが一切ないレーシングカーの加速は桁違いだ。というものの慣れてくるとモアパワーを期待するから、人間の適応能力はすごいと思う。




何が楽しかったのかというとダイレクト感だ。サスペンションにもステアリング系にもゴムブッシュというものがないから、すべてがダイレクトに反応する。遊びがないハンドルで自在に操れるようになったときには、ドライビングの楽しさはピークに達する。




とは言っても筆者はこのマシンによってレーシングドライバーとしての才能がないことも自覚することになったのだ。楽しいと感じているうちはレーシングカーとしてはまだすべてを引き出してないのだ。

写真は1974年のJAFグランプリ(鈴鹿サーキット)で長谷見昌弘がドライブするマーチ。

情報提供元: MotorFan
記事名:「 【最高に運転が楽しいクルマ|マーチ743】遊びのないハンドルで自在に操れるようになったとき、楽しさはピークに!(菰田潔)