またしても時間が空いてしまったが、前回の作業でハンマーを叩き過ぎイヤになったわけではない。シューと固着していたシャフトを整えるだけの時間がなかっただけのこと。暇人に戻ったので、早速シャフトを磨いてフロントブレーキを組み直してみたい。今回はスンナリ行くだろうか?

シューと固着していた下側のシャフト。

サビを落とすために用意した道具はこれだけ。

 ハンマーを100回も振るって腕が痛くなった前回の作業。その結果、シャフトに固着していたシューを外すことには成功したが、サビと固着で真っ黒に変色したシャフトへ、そのまま新品のシューを組む気にはならない。ここは腰を据えてじっくりシャフトを整えてあげよう。


 というわけで用意したのは右写真の3点。前回潤滑剤を拭いて軽くワイヤーブラシを当ててみたのだが、真っ黒な変色は落ちそうになかった。そこで耐水ペーパーで表面の変色とサビを同時に落としてみようという作戦だ。手順としては潤滑剤をシャフトへ吹きかけ、そこへペーパーを当ててシコシコひたすら磨くだけ。何度か試してから潤滑剤の代わりにピカールを使い、程よいところでピカールと布で仕上げてみた。

ガンコな変色を小一時間かけて落としてみた。

上のシャフトも軽く磨いて表面を整えている。

 書くだけなら1行2行のハナシだが、このシコシコに小一時間ほどかかっている。それでようやく上写真の状態にまでなってくれた。もっと手早い方法もあるだろうが、手持ちの道具で処理すれば余計な出費を抑えることができる。費用対効果とか考えるなら、こんなことやってられないのだ。


 さらに時間をかければ黒いシミを完全に落とすこともできるだろうが、地道さに欠ける性格なのでこれが限界。ここまで磨いたら最後にパーツクリーナーで汚れを落としつつ脱脂しておこう。

小さな部品たちは汚れたままだった。
汚れを落としてカムのシャフト部を軽く磨いておく。

 もうここまできたら新品のシューを組むだけ。でもその前にひと手間かけよう。というのもブレーキまわりの部品たちが汚いままなのだ。シューに使うプレートも写真に写っているが、これは新品のシューに付属しているので磨かなくて大丈夫。肝心なのはシューを動かすカムのシャフト部分で、ここがスムーズに動かないとブレーキング時のフィーリングが悪化する。汚れを落とすのと同時に軽く磨いて摺動性を良くしておこう。

シューを組む前にメーターギア周辺へ新品のグリスを入れる。

 シューを組む前にもうひと手間。というのもシューを組んだ後だとメーターギアまわりへグリスを入れるのが面倒だから。シューを組む前なら簡単に円筒内へグリスを入れることができる。また同時にシューが入るシャフト、カムが入る円筒にもグリスを塗布しておく。

シューの当たり面をヤスリで整えて面取りする。

カムとの間に入るプレートをつけるのを忘れずに。

 ここでようやく新品のシューを組むのだが、その前にもひと手間。シューはカムが動くことで広がる。この時シャフト側は動かずカム側が広がるので、ドラム面にはカム側のシューが当たって制動力を生み出す。そこでカム側のシューから段差を取り除くため面取りするのだ。新品状態だとシューの角は鋭角なまま。ここをヤスリで削ってなだらかにすると、ドラムへの密着度が増えて制動性が上がる。またブレーキをかけたときにキーキー鳴くことも予防できる。


 シューを組むコツは先に2つのシューをスプリングで固定してしまうこと。連結した状態でシャフトへ通し片方だけカムへ入れてしまう。もう片方はマイナスドライバーなどで押し広げてからカムへ入れるのだ。両手が塞がり作業中の写真が撮れなかったが、それほど大変なことではない。

ようやくシューを組み終えた。

プレートに抜け留めのピンを入れる。

 やっとシューを組み終えることができた。ここでシューやシャフトからハミ出た余計なグリスを拭き取り、ドラムとの当たり面へ付着することを予防する。グリスが回ってしまうとブレーキが効かなくて危険極まりないからだ。


 シューを組んだら最後にシャフトへ抜け留めのピンを戻す。このピンは意外に反発力が強いので素手で入れようとすると指が痛くなる。ラジオペンチで挟み込んで入れるといいだろう。

プレートへドラムをかぶせてアクスルナットを締め込む。

 シューを組んだらドラムをかぶせよう。その前にドラム内側のシューとの当たり面を入念に清掃しておくこと。ドラム内を清掃したらドラムをかぶせ、アクスルナットを締め込んでいく。ナットが手で軽く締められるくらいに清掃しておくことも大事で、シャフト側も同様だ。

スナップリングプライヤーで輪を小さくして差し入れる。

スナップリングが奥まで入ったか確認。

 以前の記事でスナップリングプライヤーの使い方を紹介したが、その時は写真がなかった。あまり親切な記事でないように思うので、今回はスナップリングプライヤーを使って差し入れるところを撮影しておいた。このようにスナップリングの2つの穴へ専用のプライヤーを入れて握るとスナップリングを小さくすることができるのだ。


 スナップリングを小さくして筒内へ入れることができても安心しちゃいけない。ちゃんと筒内の溝へはまっているか確認すること。溝へ入っていないと抜け留めの意味がなくなってしまうからだ。入っていなければマイナスドライバーなどで押し入れても大丈夫。

ハブキャップを装着したらフロントブレーキの作業は完了だ。

 最後にキャップを装着してフロントブレーキの交換作業が終了した。たかがブレーキシューの交換にここまで手間と時間がかかるとは誰も思わないだろう。これが長期放置車の現実というもの。ただ、時間と手間をかければ、路上復帰したときの喜びもひとしおというもの。地道にコツコツが大事なのだ。


 次回はヒビ割れたタイヤを交換してみる予定だ。

情報提供元: MotorFan
記事名:「 【ベスパレストア計画】ピカールで小一時間ほど。地道にコツコツ、サビを落としてフロントブレーキを組む!