TEXT:生江 凪子(Naco NAMAE)/PHOTO:山上 博也(Hiroya YAMAGAMI)
じつはワタクシ、キックスを運転するのは「事実上」初めてである。もっというと、e-POWERを体験するのも、お恥ずかしながら初、だ。
事実上、と書いたのには理由がある。動かしたことはあるのだ。キックスの車両開発主管の山本陽一さんをお乗せして、日産グローバル本社地下1階の駐車場から地上のエントランスまでの約150mくらい。距離が短いうえに開発主管が隣に乗っていることから究極に緊張して、まったくそのときの記憶はない。
そんなわけで、今回「ほぼ初」キックスe-POWER体験! のドライビングレポート、ぜひ最後までおつき合いください。
そもそもそんなワタクシがなぜ、このドライビングレポートを担当することになったのかについてご説明させていただくと、それはキックスの名前の由来に関係しているのです。
キックス(KICKS)の車名には “興奮” や “熱中” という意味のほかに、地面を蹴る(Kick)ことから “靴” という意味があるんです。そこには、新しいこと、新しい道、新しい場所、もっともっと遠くへ蹴りだし進んでいく、という意味も込められているのだとか。
つまり “靴” なんですね。と、なればヒールはピンヒールからローヒール、サンダル、ブーツ、スニーカー……靴はなんでも大好き! モーターファン.jp編集部・イメルダ夫人の異名をとるワタクシ、生江の出番というわけです。
「今回のサンライトイエローのキックスに合わせるならスニーカー!」と、企画が立ち上がった瞬間にお気に入りのスニーカーたちをキックスの前に並べたメインカット画が思いつきましたので、すぐに根回しを開始。撮影イメージのラフをメモし各方面へお送りし、自分が担当します! と、手を挙げたわけです。根回し、重要ですね。
必須要素は「青い空」「白い雪」「サンライトイエローのキックス」「カラフルなスニーカー」。
その組み合わせだと、春もまだ浅いころ鮮やかなサンライトイエローのキックスにさっそうと飛び乗って、週末のドライブへ出かけるというイメージでしょうか。
目的地は……東京から片道2時間ほどのドライブで雪があるところ、そうだ、群馬県の赤城山・大沼にしよう。大沼は3月末まで氷上ワカサギ釣りができるらしい。昼はその場で揚げるワカサギの天ぷらだな。フフフ、これは楽しみだ。
雪道を目指すので、もちろんタイヤはスタッドレスタイヤ(ブリヂストン BLIZZAK)を履いて、いざ! ワカサギ!
トランクにワタシのコレクションから厳選した(というか撮影に耐えられるであろう綺麗目な)21足を積み込み、いざ出発!
脳内のイメージでは、仲良しの女友だちとふたりドライブなのだが、実際はカメラマン(♂大柄)+編集担当(♂まぁまぁ大柄)と、かわいい後輩(♀少々小柄)という大人4名乗車。
新型コロナウィルス感染拡大防止の観点から、全員がマスクを着用。15分毎に窓を開けて換気を実施しました。撮影の短時間、マスクを外しています(生江のみ)。ご了承ください。
まず驚いたのが、ラゲッジルームの収納力の高さ。スニーカー21足(もちろん、すべてキッチリと箱に入っています)とカメラマンの撮影機材(機内持ち込み可能マックスサイズのスーツケースふたつ)、4名分の手荷物をまるっと積めてしまった。コレは、なかなか優秀。
キックスは、日産独自のシリーズハイブリッド技術である「e-POWER」を搭載している。フロントに積んでいるエンジンは完全に「発電機」として働き、タイヤはエンジンが発電した電気で駆動するモーターで回る。そのことから、日産は「充電のいらない電気自動車」と謳う。
そしてe-POWER、これがとっても気持ちいい。R35(GT-R)ラブのワタクシ、エンジンの存在感アリアリ(音も振動もスキ)なクルマでのドライブが大好きだが、e-POWERのエレクトリックドライブもまったく新しいドライブ体験で、アリだ。
これが噂の「e-Pedal」か!
と叫んだら、隣に座る編集担当から
「お言葉ですが、e-Pedalは電気自動車のリーフに使う言葉ですね。キックスやノートについては、e-POWER Driveって呼んでいます」
と鋭い指摘が入る。申し訳ありません。ハイ、やり直し。
これが噂のワンペダルで操作できる「e-POWER Drive」か!
たいていのドライブシーンではアクセルペダルひとつでスピードコントロールができる。これが思いのほか、楽しい!
先の交差点の信号が黄色になる。アクセルを離す。回生ブレーキが効いて減速、停止線にぴったり合わせられる快感。これはクセになる。
ワインディングで走りを楽しむときも、コーナー手前でアクセルを抜いて回生ブレーキでぴったりの速度に減速してコーナーに入れると、これも気持ちいい。
スピードの速い遅い、ドライビングテクニックのあるなしとは関係なしに、「自分の思ったとおりに」キックスをコントロールできたときの爽快感。うん、やっぱりお気に入りのスニーカーを履いて、街を駆け出したときの感じに似ている。
キックスには「SMART」「NORMAL」「ECO」と3つのドライブモードがあります。
ちなみにNORMALを選ぶとワンペダルではなくなるため、ワンペダルのフィーリングが合わない人はNORMALで。
ワタクシはもちろんワンペダル。気に入りました。エンジンを切っても前回OFFにした状態の設定が保持されるので、今回の道中はほぼSMARTモードでした。
さて撮影当日。関東は暖かい陽気で、前橋市内の気温は10℃。「こんな気温じゃ、雪なんかないのでは……」とちょっと心配になった。赤城山へ登るコースは、なかなかの勾配でツイスティ。キックスは、調子よく上っていく。でも、バッテリーに貯めている電気では足りないので、エンジンで発電した電気で直接モーターを駆動して走っていく。大人4名+荷物満載でこれだけ走れば問題なし。
外気温計は100m上るたびに、ちゃんと下がっていく。大沼に着いたときにはマイナス2℃。充分に寒いです。
大沼は全面結氷していて、ワカサギ釣りの小さなテントがいくつも点在していた。あれが、テレビでよく見るワカサギ釣りか。やってみたい……。その前に、目的であるキックス&スニーカーズの撮影だ!
カラフルな足跡、となるようにスニーカーを並べていく。本当はちょっこりと出演するワタクシも駆け出す(少し跳ねた感じの)イメージで写りかったのだが、全員から「コケるからやめてくれ」と反対されたため、おとなし目で。
ここでちょっとワタクシのキックス(スニーカー)たちをご紹介。すべてをご覧にいれたいのですが、とくにお気に入りの5足をピックアップです。
思いどおりの撮影ができて大満足。では、さっそくワカサギ釣りに行きましょうか! と思ったのだが、これが、寒い。とにかく寒い。気温はマイナス2℃だが、風があるから、体感温度はさらに低い。ワカサギ釣りはまた別の機会にして、東京に戻ろう……(ヘタレ)。
山頂付近の道路は雪&凍結路だったが、モーターの制御をものすごく緻密にできるe-POWERだから、安心してドライブできた。このあたりは、初代リーフからモーター駆動に取り組んで膨大なノウハウがある日産ならでは、なのだろう。e-POWER+スタッドレスタイヤなら、安心して春スキーに出かけられそうだ。
帰路、前橋市内を通って関越自動車道に乗る。
今度はプロパイロットを試してみた。これが、また楽ちん&快適。ステアリングホイール右側の「プロパイロットスイッチ」をON、そして希望する速度に到達した段階で、その左隣にある「SET-」ボタンを押すだけ。
その後の速度は「SET+」「SET-」で5km/hきざみで設定が可能。インパネ画面上に表示されるクルマの絵に車間を示す横線や前走車のマークが出れば、前走車への追従が機能しており、車線マークやステアリングマークが緑になると「ハンドル支援」が働いていることになる。これは、とてもわかりやすい。
スカイラインのプロパイロット2.0のように手放し運転はできないので、そこはご注意を。それでもプロパイロットドライブができるのは、とてもいい。疲れが全然違う。往路も使えばよかった(いや、往路は運転が楽しくて全然その気はなかったのだが)。
300kmほどドライブさせてもらった感想はというと、キックスはエコドライブ(も大事だけれど)というより、名前のとおりでお気に入りのスニーカーを履いて気持ちよく走れること、に価値があるように思えました。
サイズ感、視認性を含めた運転のしやすさ、操作の簡単さとトータルで考えるとキックスはとてもバランスの良い、そしてファッション性も充分! な1台でした。
願わくば(絶対無理なんだけど)、ワタクシのスニーカーコレクションに合わせて、日によって違う色のキックスに乗りたい! と思ったのでした。
どっとはらい。
記事内スニーカー含め、すべて私物。現在は販売していない可能性がありますのでご了承ください。また、スニーカーはすべて撮影用の小道具です(ヒールスニーカーでは運転しておりません)。雪道ではスニーカーであっても滑って転倒する可能性があるため、歩行時には充分ご注意ください。
日産キックス X(FF)キックスの情報はこちらから|日産自動車公式HP(外部リンク)
全長×全幅×全高:4290mm×1760mm×1610mm
ホイールベース:2620mm
車重:1350kg
サスペンション:Fストラット式 Rトーションビーム式
エンジン形式:直列3気筒DOHC
エンジン型式:HR12DE
排気量:1198cc
ボア×ストローク:78.0mm×83.6mm
圧縮比:12.0
最高出力:82ps(60kW)/6000rpm
最大トルク:103Nm/3600-5200rpm
過給機:×
燃料供給:PFI
使用燃料:レギュラー
燃料タンク容量:41ℓ
モーター:EM57型交流同期モーター
定格出力:95ps(70kW)
最高出力:129ps(95kW)/4000-8992rpm
最大トルク260Nm/500-3008rpm
最終減速比:7.388
バッテリー容量:1.47kWh
駆動方式:FF
WLTCモード燃費:21.6km/ℓ
市街地モード26.8km/ℓ
郊外モード20.2km/ℓ
高速道路モード20.8km/ℓ
車両価格○275万9900円〜