TEXT●森口将之(MORIGUCHI Masayuki)
やっぱりベスト3の中にアメリカ車は入れておきたい。2輪のハーレーダビッドソンと同じで、楽しさのひとつとして評価してあげたいから。
でもアメリカ車ならなんでもというわけではもちろんない。ビッグV8を味わいながら流せる大きめのクーペで、たまに大トルクでお遊びしたいので後輪駆動は必須。となるといまも思い出すのが3代目のシボレー・カマロだ。
当時ヤナセが輸入していたのは、スタンダードのスポーツクーペでも5リッターV8、でもパワーは200ps以下という、今じゃ考えられないスペック。
無理に力を絞り出していないからこそ、ユルユル回してドロドロ言わせながら流すのが、とにかく心地よかった。シンプルでシャープなデザイン、大きなリアゲートによる使いやすさもお気に入りだった。
運転が楽しいスポーツカーといえばまず思い出すのがロータス。セブンやエリート、エランからエリーゼまでいろいろ乗せてもらった。その中でのベストはヨーロッパのS2、つまりロータスツインカムではなくルノーのOHVを積んだヤツだ。
ライトウェイトボディとしなやかなロータス足のコンビは、軽快きわまるのにロードホールディングは異次元。それを恐ろしく低いコクピットで、背もたれを傾けたシートに収まり味わっていると、まるで自分がF1パイロットになったような気分。
もちろんそのときに背後から響いてくるのはルノーエンジンの牧歌的なサウンドなのだが、そのミスマッチ感がまたいい。僕にとってのヨーロッパはサーキットの狼ではなく、牧場の牛追い狼なのである。
多くの人が思い描くファントゥドライブとはまったく違うアプローチで、クルマを操る楽しさを提供するシトロエン。僕はその世界にすっかりハマってしまって、いま持っているGSが6台目になる。
でも楽しさでいえばGSよりもDSだろう。GSもハイドロニューマチックのサスペンションやブレーキは備わっているが、同じ油圧を使った2ペダルドライブのトランスミッションは、シトロエンの中でもこれだけだから。
ステアリングの向こうに直立したレバーを介しての変速は独特の感触。でも工夫していくと水を得た魚のように路上を泳ぎ出す。峠でスポーツカーに鞭を当てるときのように、人とクルマがともに高みを目指していく瞬間が味わえるのだ。
しかもそれが、街中を法定速度内で走っていても堪能できる。そこまで考えてこのクルマが作られたのであれば、まさに時空を超えた存在である。
『運転が楽しいクルマ・ベスト3』は毎日更新です!
クルマ好きにとって、クルマ選びの際に大きな基準となるのは、
「運転が楽しいかどうか」ではないでしょうか。
とはいえ、何をもって運転が楽しいと思うかは、人それぞれ。「とにかく速い」「速くないけど、エンジンが気持ち良い」「足周りが絶品」などなど、運転を楽しく感じさせる要素は様々です。
本企画では、自動車評論家・業界関係者の方々に、これまで試乗したクルマの中から「運転が楽しかった!」と思うクルマのベスト3を挙げてもらいます。
どんなクルマが楽しかったか。なぜ楽しいと感じたのか。それぞれの見解をご堪能ください。
明日の更新もお楽しみに!