・美しさ:デザインの美しさを提供できるだけでなく、使う人の諸様でも美しく見せること
・気軽な愉しさ:五感に訴えかける爽快な運転体験で、楽しく活力に満ちた毎日を送れること
それでは、ここから先は新型ヴェゼルの特徴を部位ごとにチェックしてみよう。
まずはパッケージングから。ホンダ独自の「M・M(マン・マキシマム/メカ・ミニマム)思想」に基づき、センタータンクレイアウトを採用しているのは先代と同様だが、理想とするスタイリングと空間効率をさらに高次元に両立したという。
狙ったスタイリングと空間効率の指標をご覧いただきたい。縦軸がスタイリング、横軸が空間効率を示している。これによると、大径タイヤを履くプレミアムSUVは空間効率が悪く、逆に空間効率に優れたSUVは実用的で平凡なスタイルになる傾向がある。先代ヴェゼルはスタイリングと空間効率を両立しているモデルだったが、新型ではさらにその次元を高めているという。
ボディサイズは未公表だが、先代とほぼ同等らしい。実車を目にした印象では、先代よりも大きくなった印象を受けたのだが、それはエクステリアデザインのコンセプトが大きく変更されたことが影響しているようだ。
新型ヴェゼルは、ロングキャビンと水平基調のキャラクターラインが目を引く。先代モデルがモノボリュームのシルエットとウェッジの効いたキャラクターラインが特徴だったのとは真逆の方向性である。
最近のSUVはクーペのようなルーフラインが特徴で、先代ヴェゼルはその嚆矢のような存在だったが、新型ヴェゼルではトップルーフをフラット気味にしている。その狙いは、後席居住性と爽快な視界の確保にある。
新型ヴェゼルは、フロントマスクも注目だ。現行フィットのグリルデザインから発展させたという、ボディとの一体感を強めたボディ同色のインテグレーテッドグリルを採用している。また、Aピラーはフィットのような極細ではなく一般的なものだが、できるだけ後方に引くことで、斜め前方の視界を向上させつつ、存在感のあるロングノーズを実現している。
リヤビューも、先代よりもクリーンになった印象だ。余計なキャラクターラインを廃して、横基調のテールランプの存在感を際立たせている。ただ、使い勝手にはこだわっており、手を自然に伸ばした位置に配置されたテールゲートのハンドルや、荷物を積みやすいテールゲートの開口部を採用している。
インテリアも水平基調を取り入れた、クリーンなデザイン。オーソドックスだが、操作系はドライバー近くにまとめられており、使い勝手は良さそうだ。
ホンダはこのインテリアデザインを「SUVらしい強さを表現」と謳っているが、実際に乗り込んだ印象は、強さよりも心地良さを感じさせた。身体が触れる部位には柔らかな触感の素材を配置しているのも、そう感じさせる要因だろう。
さて、新型ヴェゼルでは、ユーザーに提供したい価値として「ワクワク感」「開放感」「爽快感」を挙げている。日常のクルマにおいても、風や光など外との繋がりを感じてもらいたい。そう考えた結果、新型ヴェゼルではパノラマルーフと新形状のエアコン吹き出し口を採用した。
パノラマルーフは、前席から後席にかけて心地よい光を室内に届けてくれる。日差しの熱をほとんど吸収するLow-Eガラスを採用することで、室内の快適さを損なうこともなさそうだ。
エアコン吹き出し口は、風を直接乗員に当てるのではなく、そよ風のような心地よい風の流れを生み出すという。実際に試してみたが、風はサイドウインドウを沿って首筋付近から側頭部付近を包み込むように流れてきたのは初めての感覚だった。
カラーコーディネイトにおいても、新型ヴェゼルは新しい試みを取り入れている。「PLaY」というグレードでは、2トーンのエクステリアカラーを採用。また、内外装にはトリコロールのアクセントを加えたほか、シートには中央部にリボンのようなアクセントをあしらっている。「PLaY」というグレード名にふさわしい、遊び心を感じさせるコーディネートだ。
また、新型ヴェゼルではコネクテッド技術の「Honda CONNECT(ホンダコネクト)」にも便利な機能が多数搭載されている。その代表例をご紹介しよう。
・自動地図更新サービス:通信で新しい地図に自動更新される
・ホンダアプリセンター:radikoなど好みのアプリをインストールできる
・ホンダデジタルキー:スマートフォンをクルマのスマートキーとして使える
・車内Wi-Fi:スマートフォンなどWifi
これらの機能は、主にダッシュボード中央の9インチナビゲーションシステムを操作して利用することができる。
パワートレーンは2種類。1.5Lガソリンモデルとハイブリッドだ。先代で途中から追加された1.5Lガソリンターボはラインナップされていない。また、ハイブリッドも先代の1モーター+7速DCTから2モーターの「e:HEV」へと刷新されている。
駆動方式は、FFと4WDの両方を用意している。
e:HEVでは、「NORMAL」「SPORT」「ECON」の3つの走行モードを選ぶことができる。それぞれのモードは、以下のキャラクターを備えている。
・NORMAL:一般道で快適・スムーズで上質感を感じる走り
・SPORT:ワインディングで俊敏でダイレクトな加速を感じる走り
・ECO:高速道路でなめらかな高速クルーズを楽しむ走り
BレンジではDレンジよりもアクセルオフ時の減速が強く、ワンペダル操作を楽しむことができる。さらに減速セレクターも用意されており、ハンドルのパドルを操作することでアクセルオフ時の減速の強さを4段階で調整することが可能だ。
先進安全運転支援システムの「ホンダセンシング」は全車標準装備。先代から比べると、「後方誤発進抑制機能」「近距離衝突軽減ブレーキ」「渋滞追従機能付きアダプティブクルーズコントロール」「オートハイビーム」が追加されている。
新型ヴェゼルのグレードは、ハイブリッドが3つ、ガソリン車が1つとなる。
ハイブリッドでは、装備が充実して2トーンのボディカラーが与えられた最上級グレードが「e:HEV PLaY」、主力グレードとなるであろう「e:HEV Z」、エントリーグレードの「e:HEV X」が揃う。
ガソリン車で唯一のグレードとなる「G」は、どうやら「e:HEV X」と同等の装備となっているようだ。
新型ヴェゼルのカラーは、「e:HEV Z」「e:HEV X」「G」が6色となる。サンドカーキ・パールは、アースカラーのカーキが基調となった、落ち着いた雰囲気の新色だ。
「e:HEV PLaY」では、2トーンのボディカラーが5色用意される。ホワイト、グレー、カーキのボディではブラックルーフ、ブラックとブルーのボディではシルバールーフが組み合わされる。
注目ポイントが満載の新型ヴェゼルだが、このクラスは各メーカーが力を入れている激戦区であり、ライバルは多い。その筆頭となるのはトヨタ・ヤリスクロスだろう。新型ヴェゼルのスペック・価格は未公表のため、現段階では詳細な比較は難しいが、新型ヴェゼルはクリーンでモダンな印象の内外装デザイン、パノラマルーフなどユニークな装備、後席や荷室の広さがアドバンテージとなっているように思う。
新型ヴェゼルの4月の正式発表・発売を楽しみに待ちたい。