REPORT●栗栖国安(KURISU Kuniyasu)
PHOTO●山田俊輔(YAMADA Shunsuke)
試乗することになったAAカーゴは、α4、β4ともに共通の車体となっています。タイヤはフロント1輪、リア2輪の3輪タイプで、従来からある3輪スクーターとは異なるリア周りの構造としています。具体的には、ダブルウィッシュボーンを発展させた左右独立懸架サスペンションの採用で、路面状態に影響されにくい安定した走行性を実現したほか、コーナリング時にはリアタイヤもリーンするのが特徴です。そんなリア周りには大型の荷台が装備され、さらにルーフ装備と、デリバリー業務での快適性を高めています。結果的にボディはかなり大柄で、207㎏と車重も増加していますが、3輪なので走行に不安はありません。
搭載するリチウムイオンバッテリーは約4kWhの容量で、α4は0.6kW、β4は1kWの定格出力を発生します。バッテリーは着脱式ではなく、シート下に収納してある専用の充電ケーブルで充電します。200V電源で約3時間で満充電となります。走行可能距離はα4が98km、β4が90kmとなっていて、実走行でも80kmは行くとのことなので、市街地のデリバリー業務には不足ないデータを実現しています。
まずは原付一種のα4に試乗しました。ルーフの付いた車体に乗車する際には、頭をぶつけないように気を遣います。とくに180cm近い長身の僕の場合、頭をすくめないと乗降できません。170cmくらいの身長ならおそらく大丈夫でしょう。フロアボードがステップスルーなので乗降性そのものはいいです。ポジション自体にそれほど余裕があるわけじゃありませんが、乗車姿勢はラクです。シート高も700mmなので足つきに不安はありません。パーキングシステムに関しては、このα4ではスイッチ操作で行う自動タイプを採用しています。余談ですが、スタンドの類は装備していません。
原付一種規格の出力で200kg以上の車体を果たしてまともに発進させられるのだろうか?と猜疑心を抱きながらアクセルグリップを回してみました。するとどうでしょう、エンジン車よりはるかにトルクフルに、スムーズに加速しました。電力が供給された瞬間から最大の出力が発揮されるモーターならではの特性に、改めて驚きました。それだけじゃありません、低速での走行もしっかり制御できているので、3輪の安定感と合わせて取り回し性は非常にいいと感じました。気を良くして速度を高めていくと、30km/hを過ぎたあたりでディスプレイ内の速度警告表示が点滅し、加速は抑制されます。がんばってもメーター読みで40km/hまででした。
原付一種ということで30km/hの法定速度に合わせた制御がされているのです。しかし欲をいえば、せめて50km/h程度までは出てほしいと思いました。とくに上り坂では加速も鈍るので、交通の流れを悪くしてしまう可能性があります。
その点原付二種となるβ4は、α4同様の発進加速をするだけでなく、そのまま60km/h以上までリニアに速度を高めてくれます。配達エリアが広範囲だったり坂道が多いような地域では、β4のほうが使いやすいでしょう。今回2台を乗り比べるかたちで都心を走行しましたが、β4はスピーディで安心して走ることができました。
AAカーゴは3輪であることに加え、すべて13インチの大径タイヤを装着しています。そのため悪路走行や段差を乗り越えた際にも衝撃の影響を受ける度合いが小さく、不安な挙動が出ない安定した走行が可能となっています。これなら荷物を積載しても安心です。
スタートすると実に軽快なハンドリングを示します。停止時にはロール方向の動きが抑制され、フラツキが防止されるのですが、走りだした瞬間軽やかなリーン操作ができるようになるのです。さらに慣れてくると、停止したときにサッとロールスイッチあるいはレバーを操作して固定させると、足を地面に着けないまま停止させられます。そこまでできればもう自在に扱えます。
狭い場所での方向転換がしやすいように、バックさせることもできます。右手にあるリバーススイッチを押しながらアクセルを回せばバックするのですが、操作性が非常にいいと感じました。さらにロールしないように固定しておけば乗車したまま足を着けずにバックさせられます。このように、乗り慣れることでいろいろと使い勝手が良くなるのが特徴だとの印象を受けました。
さて、低速ではあまり気にならなかったのですが、いわゆるコーナリング性に関してはちょっとクセがあります。車体をバンクさせるとリアの2輪もリーンするのですが、リアタイヤの接地力が強いこともあってアンダーステアが強く出ます。とくに直角に曲がるときにはラインが外側になってしまいがち。このあたりのハンドリング性に関しては今後、調整を進めていく必要があると思いました。いずれにしても、環境に優しい電動バイクはどんどん普及していくのは確実です。そういう意味からも、aideaという新たなメーカーが誕生したことは歓迎できるのではないでしょうか。