当時の日産は直列6気筒エンジンの搭載車種が多く、これらを代替する目的でVG型の開発は進んだ。当時のヨーロッパでもV6エンジンはすでに登場していたが、これらのユニットは高回転時のクランクねじれを抑えたいというニーズから直6からシフトしたものであった。よく話題に上るPRV(プジョー・ルノー・ボルボ共同開発)のV6エンジンはV8からV6へ開発が移行したこともあってか、バンク角90度/ピン共用の不等間隔点火というエンジンであり、日産の目指す「回転領域全域でスムーズな吹き上がりと静粛さを得る」という方向性と合わなかった。
そこで日産が選択した構造が、現在のV6エンジンでは主流である「60度バンク/60度ピンオフセット」である。4ストロークのワンサイクル720度を6つの気筒で等間隔で点火するとなると
720 ÷ 6 = 120
直列6気筒なら、クランクを前方視したときに120度毎のピン配置にすれば等間隔点火とすることができる。ならば対向する気筒同士でピンを共用するV型となると、120度のバンク角を実現できるなら3ピン配置構造でクリアできるが、それだけの大きなエンジンを収めるのは市販車では難しい。そこで、たとえば90度バンクなら120-90=30度の、60度バンクなら120-60=60度のピンオフセットを設けてこれを解決している。
VG型のクランクシャフトにも60度ピンオフセットのためにウェブをかませてあり、これはV型の全長短縮というメリットにある意味反してしまう構造なのだが、当時の『モーターファン』の紹介では「V6が直6に比較して格段に有利なのは、シリンダー間の間隔がクランクシャフトの形状によってきまってしまうため、非常にゆったりと気筒を配置できることだ」と記している。
とはいえ、これにより当時の高出力志向から好まれたオーバースクエア構造や気筒間冷却性能などが実現でき、高圧縮比設計としていた。なお、VG20E型は9.5/VG20ET(ターボ)で8.0、VG30E型では9.0という具合である。
90度バンクに比べてバンク内スペースに乏しく、エンジン全高もかさんでしまう60度V6エンジンだが、VG型は当時主流だったキャブレターではなくインジェクターを用いることでエンジン高を抑えることを可能とした。FJ型で採用されていたシーケンシャル型ではなく、一般的な同時噴射型を用いているのは、応答性を何より重視するスポーツエンジンではなく中低速トルクを確保したエンジン特性であったため(ターボ仕様はグループ噴射システム)。エアフローの把握には機械式ではなく、当時最先端だったホットワイヤ式をおごり、通気抵抗の低減を図っている。
その中低速トルクについては吸気系統に慣性効果をねらう「サイアミーズコレクター」によって得ている(登場当初のSOHC仕様)。のちに現れたDOHC仕様でも、同様に可変吸気コントロールシステム「NICS」によって中低速域トルクの確保に努めた。
軽量コンパクト化が最大の目的であったことから、エンジンブロックは鋳鉄製ながらハーフスカート+はしご構造のベアリングキャップフレーム。ブロック全長は390mm、クランク全長は483.3mmであった。
カムトレインはベルト駆動で両バンクを1本で駆動する方式、SOHCであることからバルブトレインはロッカーアームで、クリアランスの自動調整のためにラッシュアジャスターを備えた。これは当時の日産として、国内仕様としては極初期の採用だった。吸排気バルブの挟み角は50度、当然ガス交換はクロスフロー型である。
■ VG30E
エンジン形式 V型6気筒 SOHC
排気量 2960cc
内径×行程 87.3×83.0mm
圧縮比 9.0
燃料供給システム PFI
過給システム 自然吸気
最高出力 180ps/5200rpm
最大トルク 26.5kgm/4000rpm
■ VG20ET
エンジン形式 V型6気筒 SOHC
排気量 1998cc
内径×行程 78.0×69.7mm
圧縮比 8.0
燃料供給システム PFI
過給システム ターボチャージャー
最高出力 170ps/6000rpm
最大トルク 22.0kgm/4000rpm
■ VG20E
エンジン形式 V型6気筒 SOHC
排気量 1998cc
内径×行程 78.0×69.7mm
圧縮比 9.5
燃料供給システム PFI
過給システム 自然吸気
最高出力 130ps/6000rpm
最大トルク 17.5kgm/4400rpm