写真のモデルは、2021年2月25日発売されたばかりの最新型。水平対向6気筒エンジンの搭載は、まさにライバル無き存在。その堂々たるスタイリングとプレミアム感漂う仕上がりには、さらに磨きがかけられていた。




REPORT●近田 茂(CHIKATA Shigeru)


PHOTO ●山田俊輔(YAMADA Shunsuke)


取材協力●株式会社ホンダモーターサイクルジャパン

ホンダ・Gold Wing Tour.......3,465,000円

ガンメタルブラックメタリック
パールグレアホワイト
キャンディーアーダントレッド

ユーティリティの改善で魅力度アップ

 ゴールドウィングのルーツを辿るとCBの上級グレードを目指して開発され、水冷の1L水平対向4気筒エンジンを搭載。シャフトドライブを採用したGL1000(1974年登場)に端を発している。


 その後はより上級へと進化革新を重ねる中で、グランドツアラーというコンセプトとプレミアムな仕上がりが評価を集め、特にアメリカ市場で大ヒット。


 内外他のメーカーから多数後発のライバル車が投入されるも、その追撃をかわし見事に独壇場のカテゴリーを築き上げてきた。まさに贅を究める孤高の存在として、今もその商品力の高さと確かな人気が堅持されている。




 今回のマイナーチェンジでは、カラーバリエーションの変更に加えて、使い勝手や快適性を向上。さらにマニュアルの6速トランスミッションを廃し、DCT一本化を果たしているのも印象深い。


 MT(マニュアルミッション)が欲しいと思うユーザーには少し残念かもしれないが、もともと州(アメリカの)を跨いでタンデムでロングツ-リングする様な使い方で、より快適かつ優雅な旅を楽しめる道具として、扱いやすさと快適性はDCTならではの魅力がありゴールドウィングのコンセプトにもピタリとマッチする。


 ついでに言うとこのDCTは7速自動変速が基本で、それに加えてリバースも可能。前進時も含めてウォーキングスピードモード(微速前後進機能)が採用されているので、切り返しや車庫入れでも重宝するのである。




 今回のトピックで一番目立つポイントはリアのラゲッジボックスが大きく拡大されている。従来は50L容量だった収納容量は61Lになり、フルフェイスヘルメット2個が余裕で入れられる。


 この設計変更に伴い、後席のシートバックを従来の17度から24.5度に寝かせたデザインとし、高さも30mm延長。パッセンジャーの快適性が向上したと言う。ゆったりと寛げる乗り味が期待できそう。


 また左右シリンダーヘッドの前端部分に装着されるLED式フォグランプを標準装備化。オーディオ系には55Wスピーカー4個を標準搭載。またスマホと連携が図れるAndroid Autoも標準採用された。


 なお国内市場での販売計画台数はGold Wing (価格・2,948,000 円) も合わせて500 台。いずれも受注生産方式となっている。

ミッションとクランクシャフトで2階建構造を持つ水平対向6気筒エンジン。

ディテール解説

威厳と品格を兼ね備えたフロントビューは堂々と力強い。ヘッドライトは左右5個のレンズを配したLED式。スクリーンはハンドル左手の電動スイッチで無段階に高さ調節できる。

アルミツインチューブ・フレームに取り付けられた独自の二輪車用ダブルウィッシュボーン式サスペンション。カウルに隠れた位置にモノショックユニットがセットされている。直進安定性を追求し、寝かされたキャスターアングルを採用するも軽快なハンドリングが両立されていると言う。

量産車唯一の存在と言える縦置きの水平対向6気筒エンジン。ボア・ストロークは73mmスクエアの1,833cc。水冷OHC24バルブ方式。

ほぼストレートに後方へ伸ばされた左右ツインマフラーを装備。左右ラゲッジボックスにピタリと添わせた巧みなデザインセンスも印象深い。

操舵機構は直結されておらず、ハンドルとフロントフォークはリンクを介して操作する方式。

使い方をマスターするのもオーナーに許された楽しみのひとつ。オーディオもスクリーンもボイスコントロールも操作できる。中央最下段はウォーキングスピードモードスイッチ。
トランスミッションはDCTに一本化。ハンドル右側スイッチでN(ニュートラル)とD(ドライブ)を切り替える。下方はクルーズコントロール。人差し指で操作する向こう側にはライディングモードスイッチがある。
7インチのフルカラーTFT液晶ディスプレイを中央に据えた大型メーターパネル。アナログ表示の左が速度計で、右側が回転計。レッドゾーンは6,000rpmから。メーター寄りの小さな黒いダイヤルがメインスイッチだ。

主にオーディオ系を集中的にコントロールできるセンタースイッチ。インターフェイスダイヤルはマルチインフォメーションディスプレイも操作できる。別売のBluetoothヘッドセットを使うと電話の発着信も可能になる。

後席は見るからに特等席。サイズ的にも容量たっぷりなダブルシート。リヤには背もたれとアームレストが標準装備されている。

スエード調のシート表皮を採用。テールボックスの前方左右にはオーディオ・スピーカーが組み込まれている。

新デザインで容量アップされたリヤのラゲッジボックス。リッドには油圧ダンパーが装備されている。
収納容量は61L。写真はジェットヘルメットを収納したところ。フルフェイスヘルメット2個を納めることができる。
テール/サイド共にスマートキー対応式。オープナーボタンで解錠でき、とても扱いやすい。
左右ラゲッジボックスを合わせた収納総容量は何と121L。写真の左側にもUSB電源ソケットが装備されている。
大人びた独特の風情を漂わせるテールビュー。見るからにプレミアムなモデルであることがわかる。

⬛️主要諸元⬛️

Gold Wing Tour


車名・型式:ホンダ・2BL-SC79


全長(mm):2,615


全幅(mm):905


全高(mm):1,430(スクリーン最上位置1,555)


軸距(mm):1,695


最低地上高(mm):130


シート高(mm):745


車両重量(kg):389


乗車定員(人):2


燃料消費率(km/L):27.0(60km/h)〈2名乗車時〉


WMTCモード値(km/L):18.2〈1名乗車時〉


最小回転半径(m):3.4


エンジン型式:SC79E


エンジン種類:水冷4ストロークOHC(ユニカム)水平対向6気筒


総排気量(cm3):1,833


内径×行程(mm):73.0×73.0


圧縮比:10.5:1


最高出力(kW[PS]/rpm):93[126]/5,500


最大トルク(N・m[kgf・m]/rpm):170[17.3]/4,500


燃料供給装置形式:電子式〈電子制御燃料噴射装置(PGM-FI)〉


始動方式:セルフ式


点火装置形式:フルトランジスタ式バッテリー点火


潤滑方式:圧送飛沫併用式


燃料タンク容量(L):21


クラッチ形式:湿式多板コイルスプリング式


変速機形式:電子式7段変速(DCT)


変速比:


 1速 2.166


 2速 1.695


 3速 1.304


 4速 1.038


 5速 0.820


 6速 0.666


 7速 0,521


減速比(1次/2次):1.795/0.972×2,615


キャスター角(度):30゜30′


トレール量(mm):109


タイヤ(前/後):130/70R-18M/C 63H / 200/55R-16M/C 77H


ブレーキ形式(前/後):油圧式ダブルディスク / 油圧式ディスク


懸架方式(前/後):リンク式 / スイングアーム式(プロリンク、プロアーム)


フレーム形式:ダイヤモンド

情報提供元: MotorFan
記事名:「 収納スペース拡大、オーディオ高性能化。優雅なひと時を味わえる、新型ホンダ・Gold Wing Tourを解説