REPORT●近田 茂(CHIKATA Shigeru)
PHOTO●山田俊輔(YAMADA Shunsuke)
取材協力●株式会社 ホンダモーターサイクルジャパン
ホンダ・PCX e:HEV.......448,800円
既報の通りPCXはフレーム、エンジン等、ほぼ全ての部分が新設計されて第4世代モデルへと大きくフルモデルチェンジされた。そのバリエーションの一つに加えられているのが今回試乗したe:HEVである。
ご存知の通り、エンジンとモーターの動力を協調制御して両方を賢く使うハイブリッドモデル。ごく簡単に説明すると、基本となっているPCXと同様に動力源はエンジンが主体となっているが、電力によって駆動させるモーターがそれを加勢する仕組み。
普通のエンジン車であるPCXの基本を、大きくは変えない構造で構築されている合理設計も見逃せない。
注目のモーターはACGスターターを活用。つまり交流発電機に電流を流す事で回転力を発生、セルモーターは不要で合理的なクランキングを静かに果たす物だが、それを増強してアシストモーターとしても機能させている。
48V系のリチウムイオンバッテリーを後席下の位置に搭載。それに合わせた電気(制御)系に変更されている。さらにエンジンとモーターを一つのPDU(パワー・ドライブ・ユニット)で制御する。つまり基本構造の多くはPCXと変わらぬままに、ハイブリッド化しているのが大きな特徴なのである。
リチウムイオンバッテリーを搭載する分、スペースが奪われ、コストや車重も増加するが、立ち上がりから最大トルクが発揮されるモーターの特質を活用することで、より強力な発進加速性能を発揮できる。
ゼロ(停車状態)からいきなりビッグトルクを発揮させることで、エンジンへの負担は大きく軽減される。言い換えるとまるで下り坂や強い追い風を受けて発進するかの様に軽快な滑り出しが期待できる。
モーター動力で加勢される分、PCX(普通のエンジン車)と比較すると、エンジンへの燃料供給がセーブ(節約)され、結果的に燃費性能が向上するメリットも見逃せないだろう。
さらに言うと、エンジンパワーとモーターパワーをフル活用すれば、それこそPCX160のパフォーマンスを凌ぐ領域があるほど、強力な走りも期待できるのである。
ホンダのオフィシャルWEBサイトから引用すると、スロットルを開けるとモーターが約4秒間、エンジンをアシストするという。4,000rpm時のPCXと比較すると33%のトルクアップに相当。当初の3秒間はフルアシストし、その後の1秒間でアシスト力は徐々に減少する設定になっていると言う。
ちなみに諸元データによれば、フルアシスト時の最大トルクは16.3Nm。PCX160の15Nmを凌ぐ。フレーム等の車体関係はほぼ共通。明確な相違点は次のイラストでわかる通りリチウムイオンバッテリーの搭載と縮小されたシート下収納スペース程度。ただし車両重量は4kg増加している。
125ccカテゴリーとは思えないほどにトルクフルな走りが気持ちいい。
足つき性チェック(身長168cm)
ディテール解説
主要諸元
車名・型式:ホンダ・2AJ-JK06
全長(mm):1,935
全幅(mm):740
全高(mm):1,105
軸距(mm):1,315
最低地上高(mm):135
シート高(mm):764
車両重量(kg):136
乗車定員(人):2
燃料消費率(km/L):55.4(60km/h)〈2名乗車時〉
WMTCモード値(km/L):51.2〈1名乗車時〉
最小回転半径(m):1.9
エンジン型式:JK06E-K1N
エンジン種類:水冷4ストロークOHC単気筒
電動機種類:交流同期電動機
総排気量(cm³):124
内径×行程(mm):53.5×55.5
圧縮比:11.5
最高出力(kW[PS]/rpm):9.2[12.5]/8,750
電動機(モーター):1.4[1.9]/3,000
最大トルク(N・m[kgf・m]/rpm):12[1.2]/6,500
電動機(モーター):4.3[0.44]/3,000
電動機(モーター)定格出力(kW):0.36
始動方式:セルフ式
燃料供給装置形式:電子式〈電子制御燃料噴射装置(PGM-FI)〉
点火装置形式:フルトランジスタ式バッテリー点火
燃料タンク容量(L):8.1
主電池種類:リチウムイオン電池
変速機形式:無段変速式(Vマチック)
変速比:無段 2.550〜0.810
減速比(1次/2次):3.058/3.384
キャスター角(度):26°30′
トレール量(mm):79
タイヤ(前/後):110/70-14M/C 50P / 130/70-13M/C 63P
ブレーキ形式(前/後):油圧式ディスク / 油圧式ディスク
懸架方式 (前/後):テレスコピック式 / ユニットスイング式
フレーム形式:アンダーボーン
■製造国/ベトナム
⚫️試乗後の一言!