クランクシャフトの回転を動弁機構に伝達する部品。補強を施した樹脂製で、内側は凹凸処理がなされスプロケットの歯と噛み合う構造。凹凸のコマがひとつでもずれると一大事のため(バルブとピストンが衝突する危険性)、歯数と張力は厳密に管理される。最近はチェーン式が主流。
② 吸気カムスプロケット(VVT付)
タイミングベルトの回転を受ける歯車で、カムシャフトに直結。すなわち、DOHCはカムシャフトが2本なのでカムスプロケットもふたつ。エンジン回転の1/2に減速されてカムシャフトを動作させる。図では、バルブの開閉時期を可変させるVVTが備わる。
③ 排気カムスプロケット
同じく、排気カムシャフトを回転させるための歯車。図は固定式のスプロケットだが、近年は吸排気ともにVVTを備え、EGR(排ガス再循環)やスカベンジング(掃気)などを行なうことで、エンジンの効率向上に結びつけるエンジンも現れている。
④ 吸気ロッカーアーム
カムシャフトからの入力を受け、その力をバルブの開閉に転換する、シーソー状の部品。支点側にはラッシュアジャスター(位置を自動調整する部品)、力点には抵抗低減を図りローラーを備えるのが現在のトレンド。図では隠れてしまっているが、もちろん排気側にも備わる。
⑤ 吸気カムロブ
カムシャフトに設けられた「山」の部分。回転する棒に凸部を設けることで、回転運動を往復運動に変換する。理想は「スパッと開きパシッと閉まる」ことだが、バルブの開閉に伴う衝撃を和らげるために、山の形状にはさまざまな工夫が凝らされている。
⑥ 排気カムロブ
排気バルブを開閉させるための排気カム上の「山」。山を高くすればバルブのリフト量は増え、山の裾が広がれば開いている時間が増えることになる。エンジンの負荷状況に応じて山の高さや形状が変化することが理想だが、それは不可能なことからVVLが考案された。
⑦ 吸気バルブ
混合気、あるいは新気や燃料の、燃焼室への流入を制御する弁。高速で往復運動をするため(エンジン回転数が2000rpmであれば毎分1000回の開閉)軽量であることが望ましいが、燃焼圧力を受け止め、かつ確実に密閉するためには強さも求められる。
⑧ 排気バルブ
燃焼時の熱をいかにシリンダーヘッド側に逃すかという点も、バルブに求められる課題のひとつ。排気バルブはステム(シャフト)部を含めて中空構造として、内部にナトリウムなどを充填し効率的にバルブ傘部の熱を吸収する構造をとるものが増えてきた。
⑨ 吸気カムシャフト
中実構造の鋳造品を切削加工するのが一般的な製法だが、いっぽうではカムロブをシャフトに通してからかしめる方法や、中空シャフトにカムロブをセットし内側から高圧をかけて固定する方法など、新しい製造アプローチも現れ始めている。
⑩ 排気カムシャフト
開閉させるバルブの数だけ、カムロブを設けた棒状の部品。4気筒4バルブなら、8つのカムロブが備わることとなる。エンジン回転数の半分で回転する。気筒数、ボア径などによって全長が決まり、長ければ回転時にねじれが生じやすくなる。
Ⓐ バケットタペット
直打式において、カムロブの入力を受ける部品。バルブステムにかぶせる格好で備わる。
Ⓑ ステムシール
シリンダーヘッド内のオイルが燃焼室に入り込むのを防ぐ樹脂製部品。バルブステムに通す。
Ⓒ コッター
アッパースプリングシートをバルブスプリング上方に留めるためのくさび状部品。ステムに噛み込む。
Ⓓ バルブ
混合気や燃焼ガスなどの流入と流出を司る弁。レシプロエンジンでは円形+シャフトのきのこ形状が一般的。
Ⓔ アッパースプリングシート
バルブスプリングをシリンダーヘッドに留めておくための「ふた」。コッターで位置を固定する。
Ⓕ バルブスプリング
バルブ開閉、とくに閉動作を担う部品(開動作はカム押力)。理想は軽量で振動しにくい特性。
Ⓖ ロワースプリングシート
バルブスプリングとシリンダーヘッドの間に敷かれる部品。ヘッド側の摩耗防止に寄与する。
㋐ バルブガイド
シリンダーヘッドに備わる、バルブを受け入れる筒。銅製で、バルブの熱をヘッドに逃す役割も担う。
㋑ 排気ポート
シリンダーヘッドに備わる、排ガスを通す通路。エキゾーストマニフォールドに続く。
㋒ 排気バルブシート
排気バルブがシリンダーヘッドに密着する部位。特殊合金を焼結成形しヘッドに打ち込む。
㋓ 吸気バルブシート
かつては燃料内の鉛分で潤滑していたが、無鉛化以降は材料改質を経て耐久性が著しく向上している。
㋔ 吸気ポート
シリンダーヘッド内の混合気あるいは新気の流路。インテークマニフォールドから接続される部位。