REPORT●中村友彦(NAKAMURA Tomohiko)
PHOTO●富樫秀明(TOGASHI Hideaki)
外観から初代との判別はつきづらいものの、2020年9月から発売が始まった二代目CBR250RRは、パワーユニットに関して、かなり緻密な仕様変更を受けている。初代+3psとなる41psの最高出力を獲得した並列2気筒エンジンは、ピストン+リング、バルブスプリング、コンロッド、バランサーなど、数多くの部品を刷新しているし、吸排気系やECUも新規開発。アシスト&スリッパークラッチの導入や、純正アクセサリーとしてクイックシフターを設定したことも、二代目ならではの特徴だ。
とはいえ、2020年秋以降の日本で最も注目を集めている250ccスポーツモデルは、カワサキが同時期に投入した並列4気筒車のZX-25Rで、業界内でもCBR250RRの進化が話題になる機会はあまり多くはない。何だかデビューと同時に出鼻をくじかれてしまった感がある二代目だが、改めて振り返ると初代だって、街や峠で見かることこそ多いものの、250ccクラスを制するほどの人気は獲得できなかったのである。
もっとも、2017年に初代CBR250RRに初試乗したとき、これはもしかしてNSR250Rの再来じゃないか?と僕は感じたのだ。ライバル勢と同様の構成を採用しながら、ライバル勢を凌駕する運動性能を備えていたことがNSRを思わせるし、戦闘的なライディングポジションや電子制御式スロットル、倒立式フォーク+アルミスイングアームなど、既存の250ccスポーツの常識とは一線を画する機構を導入したこともNSR的。さらにデビュー後のレース、JP250やAP250などで圧倒的なシェアを獲得したことも、NSRとCBR250RRに通じる要素だろう。
ただし、1980年代後半~1990年代初頭の250ccクラスを席捲したNSRとは異なり、少なくとも日本では、CBR250RRは爆発的なヒットモデルにはならなかった。その最大の原因は、ライバル勢+10~20万円前後の価格と言われていたものの、CBR250RRの82万1700/85万4700円よりわずかに高い、82万5000/91万3000円のZX-25Rが大人気を獲得している事実を考えると、必ずしもそうではないような……。いずれにしても、二代目CBR250RRの船出は順風満帆とは言い難いのだが、このバイクで1000kmを走った今の僕は、ホンダを応援したい、最新4スト並列2気筒スポーツの魅力を多くの人に伝えたい、という気持ちにかられているのだった。
最初に初代との違いを記しておくと、二代目のエンジンは全域でパワフルになっている。と言っても、ライバルに当たるYZF-R25やニンジャ250などと比較すれば、初代も十分にパワフルだったのだけれど、二代目は最高出力発生回転数が12500→13000rpmに上がっているにも関わらず、低中回転域だけを使っていても相当に速くて刺激的だし、回したら回したぶんだけモリモリと力が湧いてくる。言葉としては適切ではないかもしれないが、二代目のエンジンはイキがよくて、どんな領域でもスロットルを開けることが楽しいのだ。
では僕を含めた多くのライダーが気になる、ZX-25Rと比べての印象はどうかと言うと、まず親しみやすさは五分五分といったところ。サイドスタンドを払っての引き起こしやハンドリングの軽さは、車重が15/16kg軽くてエンジン幅が狭いCBR250RRが優位だが、ライディングポジションは上半身の前傾がユルめのZX-25Rのほうが気軽。まあでも、このあたりの感じ方は乗り手によって異なるもので、ミドル以上の並列4気筒車のオーナーがZX-25Rを体験したら、あらゆる挙動を軽く感じるだろうし、サーキットを前提としたCBR600RR/1000RR-Rと比べれば、CBR250RRのライディングポジションはフレンドリーな部類に入ると思う。
続いては2台の運動性能の話だが、これはなかなか表現が難しい。先にお断りしておくと、僕はZX-25Rの乗り味を否定するつもりは微塵もないのである。それどころか、最新の技術でよくぞクォーターマルチを復活させてくれたと思っているし、近年の250ccスポーツの定番と言うべき並列2気筒とはまったく異なる、懐かしくて新しいエンジンフィーリングには大いに心を動かされた。でもCBR250RRでさまざまな場面を走ってみると、あら、ZX-25Rってあんまり速くなかったのかも……という気がして来るのだ。
逆に言うなら、CBR250RRは速い!と感じることが多かったのである。具体的には、ZX-25Rでは助走区間に過ぎない8000rpm以下を使っていても、CBR250RRは濃厚なトラクションと共に車体がグングン前へ進んで行くし、車重の軽さとエンジン幅の狭さに加えて、ジャイロ効果の少なさや前輪荷重の高さが功を奏しているようで、コーナリングは明らかにZX-25Rよりシャープ。そういった特性だからか、峠道をムキになって走っている最中にふとスピードメーターを見ると、ZX-25Rは意外に遅い……と感じることがあったのだが、CBR250RRはその逆というケースが少なくなかった。
もちろん、超高回転域が存分に使える場面なら、2台に対する印象は変わって来るだろう。とはいえ、一般公道にそんな場面はめったに存在しないし、あったとしてもCBR250RRが完敗するとは思えない。なおパワーウェイトレシオを算出すると、初代CBR250RRは4.394kg/ps、二代目は4.097kg/ps、ZX-25Rは4.088kg/psだから、CBR250RRが仕様変更を受けていなかったら、僕の中でのZX-25Rの評価はもっと高くなったのかもしれない。
さて、速さの話が長くなったけれど、初代やZX-25Rとの性能差は抜きにしても、僕は二代目CBR250RRにかなりの魅力を感じている。ライディングポジションが程よく戦闘的で、エンジンが弾けるような感触で回り、車体が乗り手の意思に忠実に反応し、それでいてパワーが暴力的ではないこのバイクに乗っていると、どんな状況でも気分が自然に高揚して来るのだから。言ってみれば二代目CBR250RRは、ワクワク感が堪能しやすいライトウェイトスポーツなのだが、おそらく開発陣に心地いいフィーリングの演出という意識はほとんどなく、4スト250cc並列2気筒車という枠の中で、ただひたすらに運動性能を追求したのだと思う。
そして4スト250cc並列2気筒車という枠の中で考えるなら、CBR250RRは初代も二代目も、市販車で史上最高の運動性能を獲得しているのだ。サクッと書いてしまったが、これってスゴいことではないだろうか。と言っても一昔前の4スト250cc並列2気筒車は、実用的なキャラクターが多かったし、往年のホンダ製250ccスポーツモデルを振り返ると、CB72やCB250、ホークシリーズなどは、いずれも300~400ccの兄貴分と基本設計を共有していた。でもCBR250RRは、実用性にはあまり執着していないし、すべての部品を専用開発している。冒頭で述べたように、市場での人気はZX-25Rに押されがちでも、このマシンにかけるホンダの意気込み、そして二代目で行われた真摯な熟成を理解すると、個人的にはどうしても肩入れしたくなってしまうのである。
ただし、運動性能を徹底追及したバイクは、ツーリングでは何らかのマイナス要素を感じることが通例で、二代目CBR250RRも長距離走行がすこぶる快適というわけではなかった。その詳細は第二回目で報告したい。
車名:CBR250RR
型式:2BK-MC51
全長×全幅×全高:2065mm×725mm×1095mm
軸間距離:1390mm
最低地上高:145mm
シート高:790mm
キャスター/トレール:24°30′/92mm
エンジン種類/弁方式:水冷4ストローク並列2気筒/DOHC 4バルブ
総排気量:249cc
内径×行程:62.0mm×41.3mm
圧縮比:12:1
最高出力:30kW(41PS)/13000rpm
最大トルク:25N・m(2.5kgf・m)/11000rpm
始動方式:セルフスターター
点火方式:バッテリー&コイル(フルトランジスタ点火)
潤滑方式:ウェットサンプ
燃料供給方式:フューエルインジェクション
トランスミッション形式:常時噛合式6段リターン
クラッチ形式:湿式多板
ギヤ・レシオ
1速:3.181
2速:2.187
3速:1.727
4速:1.421
5速:1.222
6速:1.068
1・2次減速比:2.781・2.928
フレーム形式:ダイヤモンド
懸架方式前:テレスコピック倒立式φ37mm
懸架方式後:スイングアーム式 プロリンク
タイヤサイズ前後:110/70R17 140/70R17
ホイールサイズ前後:2.75×17 4.00×17
ブレーキ形式前:油圧式シングルディスク
ブレーキ形式後:油圧式シングルディスク
車両重量:168kg
使用燃料:無鉛レギュラーガソリン
燃料タンク容量:14L
乗車定員:2名
燃料消費率国交省届出値:40.1km/L(2名乗車時)
燃料消費率WMTCモード値・クラス3-2:27.1km/L(1名乗車時)