REPORT●北秀昭(KITA Hideaki)
新型のホンダPCXは、新設計の水冷4ストロークSOHC4バルブ単気筒124cc「eSP+(イーエスピープラス)」エンジンを搭載。前後にディスクブレーキを装備し、フロントブレーキのみ作動する1チャンネルABSを導入。また、Hondaセレクタブルトルクコントロール、充電などに便利なUSBソケット等も装備済みだ。
新型PCXシリーズ最大の特徴は、シンプルな2バルブエンジンから、吸排気効率に優れた4バルブエンジンに進化したこと。スリップしやすい路面でも安心の電子制御システム「Hondaセレクタブルトルクコントロール」も新装備されるなど、動力性能、安全性、利便性のすべてにおいてグレードアップ。
一方、ライバル車のヤマハNMAX ABSは、世界各国で支持されている「TMAX」「XMAX」のDNAを継承。斬新なスタイルとスポーティな走りなど、MAXシリーズの長所をコンパクトなボディに凝縮。通勤や街乗りに適した、優れたコミューターに仕上げられている。
エンジンはPCXと同じく、水冷4ストロークSOHC4バルブ単気筒124cc。ヤマハ独自の「BLUE CORE(ブル-コア)」と呼ばれる最新テクノロジー満載のエンジンは、6000rpmを境に低速向けと高速向けカムが切り替わる可変バルブ機構(VVA)を採用。アルミ鍛造ピストンやアルミダイキャクトシリンダーを採用するなど、フリクションロスや高効率燃焼化も徹底追求されている。
NMAX ABSは、PCXに採用のアンダーボーンフレームではなく、スポーティなバックボーンフレームを採用しているのも特徴の一つ。
【ホンダPCX】
全長×全幅×全高:1,935mm×740mm×1,105mm
ホイールベース:1,315mm
シート高:764mm
最低地上高:135mm
車両重量:132kg
タイヤサイズ:F 110/70-13M/C 48P(チューブレス) R 130/70-13M/C 57P(チューブレス)
ブレーキ:F 油圧式シングルディスクブレーキ R 油圧式シングルディスクブレーキ ※ABSはフロントに装備
懸架方式(前/後):テレスコピック/ユニットスイング
フレーム:アンダーボーン
【ヤマハNMAX ABS】
全長×全幅×全高:1,955mm×740mm×1,115mm
ホイールベース:1,350mm
シート高:765mm
最低地上高:135mm
車両重量:127kg
タイヤサイズ:F 110/70-14M/C 50P(チューブレス) R 130/70-13M/C 63P(チューブレス)
ブレーキ:F 油圧式シングルディスクブレーキ R 油圧式シングルディスクブレーキ ※ABSは前後に装備
懸架方式:F テレスコピック R ユニットスイング
フレーム:バックボーン
両車とも骨太なフォルムが大きな特徴。フレーム形式はPCXがスタンダードなアンダーボーン型。NMAX ABSは一般的に剛性に高く、ネジレに強いスポーティなバックボーン型を採用。
NMAX ABSはホイールベースが35mm長く、ボディサイズはPCXよりもやや大柄なイメージ。しかしNMAX ABSの車両重量は、PCXよりも5kg軽いのが特徴。
フロントホイールはPCXが14インチ、NMAX ABSは13インチを採用(リヤはともに13インチ)。車両重量とフロントホイールサイズを鑑みた場合、PCX=安定感のある走り。NMAX ABS=小回りの効く軽快な走りを目指したと推測。
前後ブレーキは両車とも、制動性に優れた油圧式ディスクを採用。フロントブレーキは、PCXがΦ220mmディスクローターに片押し型の2ピストン。NMAX ABSはΦ230mmディスクローターに1ピストンを組み合わせ。
なお、ABS(アンチロック・ブレーキ・システム)は、PCXがフロントブレーキのみ。一方、NMAX ABSは前後ブレーキに導入。前後タイヤの幅と扁平率は、両車とも同寸法だ。
【ホンダPCX】
エンジン:水冷4ストロークSOHC単気筒4バルブ
排気量:124cc
ボア×ストローク:Φ53.5×55.5mm
圧縮比:11.5
最高出力:9.2kW(12.5ps)/8,750rpm
最大トルク:12Nm/6,500rpm
燃費(定地燃費値):55.0km/L
燃料タンク容量:8.1L
【ヤマハNMAX ABS】
エンジン:水冷4ストロークSOHC単気筒4バルブ
排気量:124cc
ボア×ストローク:Φ52.0×58.7mm
圧縮比:11.2
最高出力:9.0kW(12.0ps)/7,500rpm
最大トルク:12Nm/7,250rpm
燃費(定地燃費値):50.5km/L
燃料タンク容量:6.6L
両車は水冷4ストロークSOHC単気筒4バルブ124ccエンジンを採用。最高出力はPCXが0.5馬力高く、回転数も1,250rpm高い。最大トルクは同じだが、PCXは1,000rpm低いのが特徴。
両車とも、ボアよりもストロークの長い、ロングストローク型エンジンに設計。一般的にロングストローク型エンジンは、粘り強くてトルクフルな、街乗りに適したタイプ。
ショートストローク率(ボア÷ストローク)は、PCXがΦ53.5÷55.5mm=0.963、NMAX ABSがΦ52.0÷58.7mm=0.885で、PCXのほうがショートストローク。
一般的にショートストローク型エンジンは、一般的に回転を上げてパワーを稼ぐ、多気筒のレーシングモデルに多用。NMAX ABSよりも、1,250rpm高い回転数で最高出力を発揮するPCXのスポーティさは、この点でも伺える。
PCXの圧縮比は11.5と高めだが、燃費はNMAX ABSを凌ぐ55.0km/Lを発揮。PCXの燃料タンク容量は、NMAX ABSの6.6Lよりも大容量な8.1Lを確保している。