トルクの谷を補正するアイシン精機の可変インテークマニフォールドは、内部に筒状の部品を用いて管長をコントロールする仕組みを持つ。


TEXT:松田勇治(MATSUDA Yuji)

アイシン精機が、ドイツのマン・ウント・フンメル社と共同開発した、ロータリーバルブ式の可変吸気管長機構内蔵インテークマニフォールド。マン社は樹脂製吸気系部品の専業メーカーで、欧州では同分野でトップクラスのシェアを持っている。




樹脂化の主目的はやはり軽量化だが、成形自由度の高さや、製造工程で機械加工が不要なことによるコスト低減なども大きなポイントだったという。

サージタンクの外周に沿うように配された長流路と、入口すぐのところに配された短流路で構成。バルブの作動によって、共鳴周波数を変化させる。

バルブが開いて短流路が有効となった状態。ふたつの開放端によって生じるトルクの谷を埋める。

バルブが閉じた状態。バルブ部のリブは重量、剛性、音響特性などを改善する目的で設けられている。

機構は特に複雑ではない。スクロール形状のインマニ内部に、長短2系統の吸気流路を作っておく。短流路の入口に配置したロータリーバルブは、初期状態で短流路を閉鎖していて、エンジン低〜中回転域では吸気は長流路だけに流れる。エンジン回転数が高まるとバルブが回転して短流路を開き、長短両方の流路から吸気する。回転域ごとに吸気の共鳴周波数を最適化し、体積効率を向上させるわけだ。

樹脂筐体の中に樹脂の機構部を組み合わせた上で、動作の確実性、耐久性、密閉性といった性能要件をすべて満たすことに苦労したという。

バルブは負圧で駆動される。アクチュエーターは、バルブ位置を初期(閉)状態に保つばねを備えている。エンジン回転数が設定値になったら、バキュームスイッチングバルブを作動させ、ばねレートより大きな負圧をアクチュエーターに送ることでバルブを回転させる。

左:ロータリーバルブ/右:バタフライバルブ

同様の可変吸気管長機構を、バタフライ式バルブで構成した場合との性能を、シミュレーションで検討した。バタフライ式では、流路上にバルブ機構が残ってしまうことで抵抗が増加し、圧力損失が増えてしまう。対してロータリー式バルブでは、体積効率で6%有利という結果が導かれた。可変機構なしの場合との比較では、約10%の向上を果たしている。

負圧作動なら、バタフライバルブのほうが簡便な構造にできそうだが、バルブが流路上に残ることで生じる抵抗と損失を嫌ってロータリーバルブを採用した。バルブの開閉にはある程度の時間を要するが、それは特に問題にはならない。

初の採用となったのは、2006年にフルモデルチェンジしたノア/ヴォクシー用3ZR-FAEエンジンだ。

直4エンジンの吸気系は、サージタンクまでの間と、もう少し上流の地点の2ヵ所に開放端を持つ。上流側はおおむね上限3000rpm程度まで、サージタンク側は下限5000rpm程度までにマッチした共鳴周波数なので、その間でトルクの谷ができがち。この手の機構のおもな目的は、もうひとつ異なる長さのポートによってトルクの谷を埋めることなので、シビアな作動は要求されないのだ。

情報提供元: MotorFan
記事名:「 内燃機関超基礎講座 | ロータリーバルブ式可変インテークマニフォールドの仕組み