・エンジン分解、各部点検にともなうガスケット/パッキン類
・エンジン/トランスミッションの油脂類
・吸排気系のガスケット/パッキン類
・サスペンションのブッシュ/ゲーター類
・燃料タンク
・タイヤ
・ブレーキ/水まわりのホース類
ストレスマウントであるパワートレインは一度モノコックから降ろし、エンジンはトランスミッションとも分離して完全分解し、各部を点検する。したがって、ガスケットやパッキンは交換不可避である。油脂類については、このような案件でなくとも交換される。また、ホースやタイヤといった樹脂類の交換も当然だろう。このほか、点検を進めていくにあたって不具合や劣化を認めれば、都度交換していく。
ユニークなのは燃料タンク。モノコック内部に器用に収められているソフトシェルタイプであるらしく、サービスホールから出し入れするのだという。まさにレーシングカーさながらである。フェラーリから耐用年数が定められている指定部品であり、四半世紀を過ぎているとなればもちろん交換対象。問題は新品部品が入手できるか……である。
工場へ足を運ぶと、すでにF50はアンダーパネル類を外した状態でリフトアップされていた。サスペンションまわりがよく確認できる状態だ。
サス形式は前がダブルウィッシュボーン、後がダブルウィッシュボーン+トーコントロールリンク。フロントサスペンションはCFRP製のキャビンモノコックの前方に備わる鋼製のトラスフレームに、リヤサスペンションはトランスミッションケースに直接、アームとダンパー/スプリングユニットが接続される構造である。
25年もの間、まったく動かずその角度のまま固定されていたジョイントには、ブーツ類はもちろんのこと、ブッシュにも癖がついてしまう。また、油分が抜けて収縮硬化してしまうこともあり、交換は必須である。ただし、目視した限りではおかしなちぎれや変形の類は見当たらない。リヤサスペンションのブッシュ類は、高熱を発するエキゾーストマニフォールドの近くにあるということもあり、熱影響も少なくないはずだが、本車についてはその心配は皆無である。
ブレーキについてはどうだろうか。ローターの端面に激しい錆が認められるが、これはおそらく実動状態のクルマでも同様だろう。フェース面については、ガレージから転がしてここまで運び込んだこともあり(つまりひどい固着はなかったということだろう)、ごくごくわずかではあるがブレーキパッドで磨かれた形跡があった。とはいうもののベルハウジングまわりも含めてコンディションは非常によく、長期間の保管状態がきわめて良好だったことがうかがえる。今後、ハブまわりの点検を含めてベアリングの交換を検討していく。