TEXT●吉川賢一(YOSHIKAWA Keni-chi)
2020年は、コロナ禍で発表スケジュールが大きくずれ込んだ新型車もありましたが、多くのメーカーが主力のクルマをフルモデルチェンジした「豊作の年」でした。その中で、印象的&感動的だったのが、3位ホンダ・フィット/プジョー208、2位スバル・レヴォーグ、1位トヨタGRヤリスです。
3位は、ホンダ・フィットとプジョー208です。
フィットは、ダブルAピラー化をして前方視界を良くした構造、パッケージングの上手さ、そしてNVHの良さが魅力です。特に、前方視界の広さには驚かされます。ADAS機能も最高レベルの技術が搭載されており、同時期に出たトヨタ・ヤリスと比べて、断然印象がよかったです。
208はドライビングフィールの良さが魅力です。ソフトにセッティングされた足回りとクイックなギア比で、フンワリキビキビした運転フィールはまさに「ネコ足」そのもの。コンパクトなクルマをグイグイ走らせるのは楽しいなあ、と感じました。
第2位はスバル・レヴォーグです。先代レヴォーグからの進化幅が非常に大きく、ハンドリング、乗り心地、NVH、新パワートレインすべてが、ブラッシュアップされ、欧州の高級ステーションワゴンの域にまで達しています。しかもコスパが高い。ステーションワゴンは、走りの質、パッケージングの良さ、使い勝手の良さ、などが見直され、近いうちに再度流行る、と確信しています。
そして第1位はトヨタGRヤリスです。市販車のパフォーマンスの高さは当然のことながら、苦労した開発ストーリーまで明かしてくれたプレゼンテーションが印象的でした。
富士スピードウェイの特設コースで行われた試乗会では、マスキングされたGRヤリスの横にあった、ヴィッツを改造したユニットテストカーにも乗せていただきました。いたるところが継ぎ接ぎだらけのボディで、車内にはガムテープやメモ書きがそこら中に貼ってあり、まさにこのテストカーでGRヤリスに繋げる研究をしていったのだ、というストーリーが読み取れ、感慨深く感じました。
極めつけは、開発主査の丁寧な口調ながらも、熱い心がこもったトーク。「我々が初期に作ったプロトタイプの4WD車は酷いもので、社長にも認められずに悔しかった」から始まり、スポーツ4WD開発から20年以上のブランクがあったこと、設計できるエンジニアが残っていなかったこと、紙の設計図を引っ張り出してイチから勉強しなおしたこと、トミ・マキネンをはじめとしたエキスパートを開発に巻き込んだことなど、楽しそうに話す姿は印象的でした。
これほどに開発の裏側まで表現してしまうのは、トヨタの上手さだなとも感じます。感情移入させられるには十分な内容でした。
『2020年の推しカー』は毎日更新です!
いよいよ2020年もラストスパート! ということで、今年(2019年12月〜2020年11月)に発表・発売されたクルマ(マイナーチェンジ・一部改良・追加モデルなどすべて含みます)のなかから、「他人はどうかわからないが、個人的に大好きだ!」という"推しカー”を3台、自動車評論家・業界関係者に選んでいただきます。明日の更新もお楽しみに!