TEXT●森口将之(MORIGUCHI Masayuki)
ベルランゴ、バカ売れらしい。もちろんシトロエンとしてはという注釈付きだけれど、納得である。このカテゴリーのベンチマークであるルノー・カングーに負けない魅力の持ち主になっているからだ。
1.5リッターのディーゼルターボエンジンに8速ATの組み合わせは、荷物をたくさん積んでも余裕の加速を披露。最高レベルの先進運転支援システムも装備しているので、どこまでも行けそうだ。フラットライドにこだわったカングーに対し、シトロエンらしいゆったりした車体の揺れを体感させてくれるところもうれしい。
デビューエディションは上級版だけだったのに対し、カタログモデルでは道具感を強調したベースグレードが追加されたところもいい。インチダウンのスティールホイールという姿、コアな仏車好きもコロッといきそうだ。
先日発表された2020-2021日本カー・オブ・ザ・イヤー(COTY)の最終選考で、僕はプジョー208に10点を投じた。でもそれは、10ベストに残った10台の中でのベスト。フランスでも日本でもライバル関係にあるルノー・ルーテシアと乗り比べたら、こっちのほうが上だと思うようになった。
デザインの方向性はルーテシアのほうが好みだし、エンジンははるかにパワフルで、4気筒ならではのスムーズさも味わえる。シャシーは伝統のフラットライドで、滑るように走る。ハンドリングもハイレベル。しかもこれまで遅れをとっていた先進運転支援システムが一気にトップレベルになった。
こうなるともはや選ばない理由がないとさえ言いたくなる。欧州では月によってはフォルクスワーゲン・ゴルフをも抜いて乗用車ナンバーワンの販売台数をマーク。その理由を思い知らされた。
残念ながらCOTYの10ペストカーには入らず、部門賞にも選ばれなかったホンダの小型EV、その名もホンダeこそ2020年の私的ナンバーワンカーだ。
なによりもデザインが素晴らしい。初代シビックを思わせるフォルムと親しみの湧く丸いランプ、リビング感覚の仕立てでリラックスして過ごせるインテリアなど、ホンダがセンスのいいブランドであることをひさしぶりに教えられた。
スマートフォンでドアロックが解除できたり、ドアミラーをデジタル式にして超小型センサーにまとめたり、インパネはウルトラワイドなディスプレイにしたり、先進テクノロジーをふんだんに取り入れているところもまたホンダっぽい。
しかも走りが楽しい。リアモーター・リアドライブのおかげで、発進で後輪がアスファルトを蹴る心地よさを味わえるし、ブレーキングでは前後に安定して荷重がかかることを体感。コーナーは軽快な身のこなしに魅了される。
発表当初は高いと思った約450万円という価格に、今は納得している。日本初のプレミアムコンパクトと呼びたくなる逸品だ。
『2020年の推しカー』は毎日更新です!
いよいよ2020年もラストスパート! ということで、今年(2019年12月〜2020年11月)に発表・発売されたクルマ(マイナーチェンジ・一部改良・追加モデルなどすべて含みます)のなかから、「他人はどうかわからないが、個人的に大好きだ!」という"推しカー”を3台、自動車評論家・業界関係者に選んでいただきます。明日の更新もお楽しみに!