右のBENLY e(2輪車)が発表されたのは約1年前。今回12月11日に発表されたのは、新規投入される3輪スクーターである。GYRO e(写真中)と同CANOPY e(写真左)が加わる事で、法人向けのビジネス用電動ビークル、「Honda e:ビジネスバイク」シリーズが充実する。市販は来春(CANOPY eは来夏)の予定、価格はいずれも未定である。




REPORT●近田 茂(CHIKATA Shigeru)


PHOTO●山田俊輔(YAMADA Shunsuke)


取材協力● 本田技研工業株式会社

ホンダ・GYRO e(ジャイロ イー)

ホンダ・GYRO CANOPY e(ジャイロ キャノピー イー)

 各車共、ネーミングの末尾に添えられた“e ”は、電動ビークルであることを示している。ガソリンで動くエンジン(内燃機関)は搭載していない。そのかわり、「Honda Mobile Power Pack」と呼ばれる脱着式の大型リチウムイオンバッテリーをシート下に2個搭載。


 直列配置で96Vの電力を活用し、交流同期電動モーターを駆動する仕組みである。つまりリヤの2輪は電動モーターで動くのである。


 そんな“e パワー”を備えたスクーターに3輪モデルが追加投入される。ケータリング等で既にお馴染みのジャイロと同キャノピーが加わり、来春と来夏に順次発売予定。詳細の多くは不明だが、電動化に合わせて新設計されたニューモデルである。




 デザインや機能部品は先に投入されているベンリーeに倣っており、そこに加えてホンダ伝統のスリーター(当初はそう呼ばれていた)技術がミックスされている。


 電動モーターによる動力はデファレンシャルギヤ(差動機)を介してリヤの左右2輪を駆動する。操作方法は従来のエンジン車と基本的に何ら変わる事はない。


 ユニークなのは、リバースアシストが装備されており、左手人指し指でリバーススイッチを操作しながら、右手親指で青いスタータースイッチを押すと電動で後退してくれる。ライダーが車両から降りて押す手間が不要となる点はとてもありがたい。


 また3輪車なので、パーキングロックレバーを掛ければ車体は即座に自立してくれる。宅配等の乗り降りでスタンドをかける手間が省けるメリットも見逃せないのである。


 スリーターを成立させた独自技術のナルトハイト機構は1981年からの歴史を持つ物で、前後車体の連結部で前方車体が左右に倒れることでバイクと同様な旋回を可能としている。


 同時に若干ながら、後部車体が逆相となる前後輪操舵効果を発生させているのも特長。例えば右コーナーを旋回する場面を俯瞰すると車体は“く”の字状に折れる仕組み。目に見える程の動きでは無いが、これにより、旋回性の向上とリヤ両輪接地の安定性向上に貢献しているのである。


 雨をしのげるキャノピーの装備を始めとして、3輪の強みは、大きく重い荷物の積載にも安心して対応できるタフな乗り味にある。


 さらにビジネスツールとして考えると、ほぼ決まったパターンで運行するケースが多く1日の仕事を終えた帰社後の充電で、翌日の走行を賄えさえすれば機能的には十分役立ってくれる。


 むしろ静かな走行音や排気ガスを排出しないクリーンな所とそれをいち早く導入し活用する事が会社のイメージアップに貢献する点が侮れないのである。


 


 今回の発表は、法人向けのビジネス用電動三輪スクーターとしての「発売が予定されている」と言う話だが、電動ビークルは各地で実用実証実験が始まっており、一般市販製品も増加傾向にある。バイクの世界にも電動化の波は着実に訪れているのである。

↑上の写真はGYRO e。→右はGYRO CANOPY e。キャノピーの有無と共に、もうひとつある大きな相違点がリヤキャリア。後部車体上の低い位置に固定される大型キャリアを装備。
GYRO CANOPY eは前部車体と一体構造で、コーナリング時は車体と共に荷台も傾く仕組みである。

ディテール解説

ホンダ・GYRO e(ジャイロ イー)

ヘッドライトはユニークなヘキサゴン形状を採用。トップ面を平にした造形が印象的。そのデザインは、フロントバスケットの搭載性が考慮されている。

イグニッションキーの右脇にあるのがパーキングロックレバー。ナルトハイト機構をロックでき、3輪ゆえにスタンドを立てることなく車体は自立する。

2本ショックを持つユニットスイング式後部車体とシートを含む前部車体はナルトハイト機構で連結されている。このおかげで2輪車の様に車体を傾けてコーナリングできる。

ハンドルまわりは、基本的にはBENLY eと共通のデザイン。パーキングロックレバーの存在は、ホンダ3輪スクーターの証。

ハンドル左側スイッチは、一番下がプッシュキャンセル式ウインカー、その上の大きなボタンがホーン、上はヘッドライトの光軸を上下するディマースイッチ。人差し指で扱うのはリバース(後退)スイッチ。
右側の青いボタンはスタータースイッチ。左手側のリバーススイッチを操作しながら、これを押すと後退アシストが働く。ブレーキレバーには左右共にロック機構が装備されている。
写真はBENLY e。丸いメーターには四角い液晶デジタルディスプレイには速度計とトリップメーター、バッテリー残量を表示。その他各種警告灯がある。

ホンダ・GYRO CANOPY e(ジャイロ キャノピー イー)

ボトムリンク式ではなく、テレスコピックタイプが採用されたフロントフォーク。ブレーキはリーディング・トレーリング式のφ130mmドラムタイプを採用。90/90-12インチサイズのチューブレスタイヤを履く。

レッグシールド前方及びヘッドランプをカバーする様に取り付けられたフロントカウルからスクリーン、そしてルーフへと連なるキャノピーが装備されている。

デザイン手法が新しくなったキャノピー。黒いレッグシールドの追加でワイド化され、プロテクション(風防)効果が高められている。

丸型メーターはハンドル中央ではなく、前方のインストルメントパネル中央に移設されている。ハンドル右側にワイパー&ウォッシャースイッチが追加設置された。

丸型メーターそのものは共通部品と思われる。インパネの中央にライダーに向け、手前に傾けて設置されている。

GYRO CANOPY eの荷台は少しコンパクト。シートバック面と直角を成す。キャノピー共々前部車体にマウントされており、旋回時は左右に傾く。

写真はユニットスイングのパワーユニット部。デフを介してリヤ2輪を駆動する。この車体後部はナルトハイト機構で前部と連結されている。

バッテリーと専用充電器を並べてみた。結構なボリュームがあり、充電器も置き場のスペースが必要となる。

バッテリーは3車共通

シート下のモバイルバッテリー。まだまだ大きく重いが、左右別々のカセット式で簡単に脱着(上方に引き出せる)できる。
モバイルバッテリーは50.4V/20.8Ahを2個使用する。直列接続し電源電圧は96Vに対応している。
右は専用の充電器。基本的に3モデル共通部品として作られている。ゼロの状態から約4時間で満充電になる。

情報提供元: MotorFan
記事名:「 ルーフ付きジャイロがついに電動化!で2021年に市販予定|ジャイロキャノピーe・ジャイロe