TEXT●松田秀士(MATSUDA Hideshi)
その性能もさることながらエクステリアデザインが最高! 日野コンテッサはこのベースモデル(BMW1500)をモデルにしたんだな、と今になって思う。
なにがスゴイかって2002 tiiのデザインポリシーが現行モデル(3シリーズ)にも受け継がれていること。ボクはE30 M3でもグループAレースを戦っていた。E30 M3なんかは2002 tiiから受け継いだデザインが随所にあった。素晴らしいデザインとは、後継モデルにも受け継がれ続ける何かがあることだと思う。
ボクが1995年の全日本GT選手権GT1クラス(現在のスーパーGT・GT500クラス)で勝利した最初のマシンだったから、というのが2位にした大きな理由。しかも993GT2が世界で最初に勝利したレースでもあったのだ(1995年5月富士スピードウェイ)。
993でリヤサスがマルチリンク化されたこともあり、リヤフェンダーの膨らみがグラマラス。覗くとぶっといタイヤが格納されていて、後ろに回って眺めると平らで大きなリヤウィングと相まって地面に座り込んでしまいそうなフォルム。何かとてもアンバランス。リヤウイイングにインタークーラーが仕込まれているから、精いっぱい頑張った末のデザイン。
ポルシェ911のあの独特なデザインに馴染んでいるから許せるものの、それでも993GT2は独特のアンバランスで個性的だ。それが今では空冷エンジン最後の最強マシンとして超人気で価格が暴騰している。
117クーペはボクが大学生の頃(1974年入学)ブームのど真ん中だった。とにかく流麗で素敵なデザインだったね。
当時は外車といえばトランザムなど大きな米国車がほとんどで、ポルシェなど欧州車は少なかった。またそのような米国車のオーナーは灰色か黒色の業種の方々が多く、乗っているクルマを見れば知り合いになっても否かどうか分かりやすい時代でもあった。
そんなクルマ社会の中で、安心して見ていられる唯一の国産車が117クーペだったのだ。このクルマのオーナーならまず怪しい人ではない(知らんけど)。フェアレデZやスカイラインGT-Rと並んで憧れる存在のクルマだったのだ。
117クーペは絶対にハンドリングや乗り心地も良いクルマに違いない。デザインを見ただけで117クーペはその全てが分ってしまうようなオーラがあったのだ。
ある日、大学の友人が117クーペを購入した。彼がその前に乗っていたのはシャコタンしたフェアレディZ240Gだった。またなんで?というくらいに金髪ヤンキー耳ピアスの彼には似合わないクルマであった。
そんなことはさておいて、117クーペのステアリングを握れるチャンスがやってきたのだ。当時ボクは仲間から運転のうまさで尊敬されていたから、すんなりと117クーペに試乗することができた。その時の印象は今でも強烈に覚えている。
ハンドリングはボクの予想に反して最悪だった。ステアリングを切り込んでも思うように曲がってくれない。基本的にアンダーステアーだった。確かに117クーペをチューンしてレースに出場した、なんて話を聞いたことがない。ドアを閉じて2歩3歩と離れて改めて眺める117クーペ。彼に勧められてもそれから2度とステアリングを握ることはなかった。
117クーペは外から眺めるだけでいいクルマなのだ。それ以上でも以下でもなんでもない。しかし、とにかくこのデザインは最高だ。